8月12日(土)、イギリスのアスコット競馬場で行われたシャーガーカップで欧州初騎乗を果たした戸崎圭太騎手。結果は5戦未勝利と勝ち星を残すことができなかったが、このコラムを続ける上で最も気になったことは、競馬のメッカでの騎乗を通して、騎手として何を感じられたのか、ということ。多くを語りたがらないジョッキーではあるが、聞けば、その言葉の端々には収穫アリといった様子。残りの騎手人生にも成長の糧となりそうな、濃密な経験をちょっとばかり語ってもらった。

約1週間の滞在でロンドン&アイルランドを堪能


-:ちょっとお時間は経ちましたが、8月上旬に行われたシャーガーカップについてお伺いしたいと思います。戸崎騎手のヨーロッパ遠征といえば、これが初めて。欧州に行くこと自体も初めてでしたよね。

圭太:やっぱり日本とは違うなという感じでしたし、良かったですよ。家族や親戚も行ったのですが、競馬以外はほぼ周りが決めてくれて、それについていくだけ。何もかも勝手がわからない土地でしたが、安心して臨めました。

戸崎圭太
戸崎圭太

▲レースを前にリラックスした表情を見せる

-:「競馬場の行き帰りは主催者の送迎が付いている」と聞いていましたが、そこ以外はほぼ決められていたわけですね。

圭太:そうですね。だから、本当に満喫できましたよ。苦労したというか、気にしたのはやっぱり食べ物だけですね。

-:結局、(節制は)無理だったと。

圭太:無理ですよね。パンしかないので。食事をとらなきゃまずいですし。せめて肉は食べていましたよ。あと有名なフィッシュアンドチップス。スゴいですね。量はハーフを頼んだのですが、向こうの人たちは普通に平らげますからね。

-:あんまりデカいと少し飽きてしまうかもしれませんね。

圭太:ええ、感激がないというか。だから、食べるよりずっと飲んだくれでした(笑)。

-:たまに出るアルコールのお話で(笑)。ただ、ビールは飲めないですよね。

圭太:そうですね。向こうはバーもけっこう有名らしいですからね。飲むとしたら、ウイスキーかな。ただ、やっぱりビールも有名らしく、一口飲んだら独特な味でしたけどね。

-:観光はどの辺りに行かれたのですか?

圭太:イギリスは船に乗って、ロンドンブリッジやビッグベン、グリニッジ天文台。上が開放されている2階建てのバスで、日本語の説明を聞きながら回ったりしました。皇太子の方がよく映るベランダというか、出てくるようなところも生で観られましたし。地下鉄なんかは映画で出てくるような、雰囲気がちょっと違った感じですよね。

-:イギリスでの滞在は3日間ということでしたが、現地からのお話では天気も悪かったようですね。世界陸上でもけっこう雨が降っていたので、寒そうだなと思って観ていました。

圭太:着いた日は夕方になったので、食事をしただけですね。ただ、そこでドシャ降りだったんですよね。よく雨になるとは事前にも耳にしていたのですが、他の日はずっと晴れて恵まれました。そこはツイてましたね。

「(セレモニーの会場は) バーなんですよ。ビートルズで有名な横断歩道(アビー・ロード)の近くです。去年も、池添さんがそれで写真を撮っていた記憶がありました」


-:2日目がセレモニーということで、それこそバーのような雰囲気でしたね。

圭太:そうです。バーなんですよ。ビートルズで有名な横断歩道(アビー・ロード)の近くです。去年も、池添さんがそれで写真を撮っていた記憶がありました。でも、写真の通り、騎手も4~5人くらいしか来なかったので、正直、何のイベントなんだ?という感じでしたけど……(笑)。

戸崎圭太

-:向こうの新聞の一面になっていたようですが、あの人たちだけで写真を撮ったということですね。

圭太:そうです。ただ、インタビューをして、と。特に、おもてなしなんてこともなく。周りとも特に喋りはしなかったですから。

-:そして、3日目はいかがでしたか?

圭太:金曜日ですね。夕方に主催者のゴルフからバーベキューがあって、そこに「ぜひ来てくれ」と言われていました。ゴルフは行かなかったのですが、そのバーベキューに行くのも、そんなに遠くないだろうと思ったのですが、バスで1時間ちょっとくらい掛かって、えらい遠いところまで行ってしまったな……と。

-:ただ、向こうはけっこう日が長いはずですよね。

圭太:そうです、長いですね。気持ち良いから、気を付けないと飲み過ぎちゃいますよね。まだ明るいや、という感覚になっちゃうから。ちなみに、そのイベントも特にシャーガーカップの現地のチームがいるわけでもないという感じでしたね。

-:そして、4日目ですね。

圭太:その後は競馬です。車で30~40分くらい掛かるところでしたかね。アスコット競馬場はやっぱりスゴいですね。綺麗でしたし、お客さんがスーツで、女性もきちんとドレスを着て、みんながみんなそうですから、何か雰囲気自体が違いましたね。

戸崎圭太

-:現地に着いて、困られたことはありますか?

圭太:いや別に、特には。

-:行かれる前は、色々と馬具の話をされていましたが、そこら辺の違いはなかったですか?

圭太:道具は使えなかったですよね。プロテクターもダメでしたし、ステッキは持っていかなかったのですが、その2つはダメでしたね。結局、買おうかとも思っていたのですが、貸してくれるので、借りました。あと、鞍なんかは大丈夫です。それ以外でいえば、日本では滅多に乗らない60キロの斤量が重かったですね。とはいっても、現地のバレットの人に任せっぱなしでしたよね。

-:他に、特に苦労する点はなかったですか?

圭太:そうですね。日本よりも乗っている時間も少ないですし、本馬場に出るのは発走の何分か前ですからね。跨ってサッと出て、すぐに発走みたいな。楽というか、どこかスムーズな感じはありますよね。日本はパドックと返し馬が長いので。

戸崎圭太

▲欧州初騎乗となったアスコット競馬場

-:返し馬もやっぱり違いますか?

圭太:待つ時間がまずないですから。それが良いのか悪いのかはわからないですね。テンションが高い馬なんかは落ち着かせた方が良いかもしれないですけど、その馬によるんじゃないですかね。なんだかんだいっても、全馬同じ条件ですから。

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