-阪神カップ-平林雅芳の目

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土曜阪神11R
阪神カップ(GⅡ)
芝1400m
勝ちタイム1.20.5

サンカルロ(牡5、父シンボリクリスエス・美浦、大久保洋厩舎)

※※サンカルロが昨年2着の鬱憤を晴らしての勝利!!


パドックでサンカルロの臀部に軟膏でも塗った様な後が4,5個見られた。《アレっ?前にこんなのあったっけ?》と思ったが、すぐにそんな事は忘れてしまっていた・・。
いろんな事があったレースとなってしまった今年の阪神カップ。前半ではクレバートウショウが故障して、そのアオリを喰ったリディル。そして直線ではまったく行き場がなくなって待つ時間が長かったリアルインパクト。この2頭がものすごい不利の連続だが、小さい不利も直線で二度、三度と見た。そんな他馬の喧騒をよそに、馬群の中から抜け出てきたのがグランプリボスとサンカルロで、最後は外のサンカルロが交わして、阪急杯に続いての阪神1400芝での勝利。前が開けばキッチリと伸びて来るサンカルロなのである。

スタートでフラガラッハが少し遅れた。1馬身は馬群から取り残されている。外めの馬がやや速いぐらいのスタート。内から押して池添Jフォーエバーマークが押して出て行く。ガルボタマモナイスプレイ、クレバートウショウと前に位置する。リアルインパクトも内から早めに4,5番手へ出てきた。シルポートエーシンフォワード西園勢も前だ。外をミキノバンジョー、そしてリディルもいる。
2ハロンを通過するあたりで、リアルインパクトがなお順位を上げて行っているのが見えた、と思ったのもつかの間、その外目で異変があった様子。1頭が下がり気味となったかと思ったら、その後ろの馬の鞍上が消えた様に見えた。そしてまた鞍上が浮かび上がってきた。1頭が故障した様子だ。クレバートウショウだ。その1頭だけが逆噴した様な動きだが、他は何もなかったかの様にそのまま進めて行く。先頭のフォーエバーマークにタマモナイスプレイが接近して、さらにリディルが近づいて行く。3ハロンを34.0で通過だ。

馬群は縦長からかなり凝縮されて、前の馬との間隔がなくなるほど密になって、ひと塊となって4コーナーへと入って行く。最後方のフラガラッハも8馬身ぐらいの差か。前は3頭が横並び、フォーエバーマークにタマモナイスプレイ、リディルであり、その後ろが内からリアルインパクトがラチ沿い、ガルボ、そして外にシルポート。その後ろの列がエーシンフォワードが最内、外にグランプリボスがいる。どの馬も手応えがいい。

直線に入ってきた。後ろでアーバニティーがやや外へ膨れ気味に廻ってきたが、後の17頭はタイトに廻ってきている。そして馬群は変わらず密集している。外へ出したグランプリボス、その後ろにマルセリーナが出てきているのが見える。外めの馬が追い出せているのに内や中の馬がスペースがなくてまだ追わない、追えないままにひと塊りのままでさらに進む。
残り100のオレンジ棒が過ぎたあたりで、グランプリボスが一番前へ出て、その隣りへサンカルロが並んで勝利はこの2頭のものとなる。その後ろでマルセリーナが脚を伸ばしてきているが、フラガラッハが勢いよく迫ってきている。前の決着は、サンカルロがハナ差先んじてゴールへ入っていた。

引き上げてきた馬が枠に入ったのを見届けてから、パトロール・ビデオを見に急ぐ。クレバートウショウの故障にリディルの脚がかかったのか、バランスを崩した小牧Jが危なく落馬寸前となる。奇跡的に体が跳ね返ってきて、またレースに戻る。そのままの位置で何事もなかったかの様に流れる。しかしどの馬も手応えが良く直線に入る。内で絶好の手応えのリアルインパクト。その前で先行馬達がバテない。先ほどのリディルがそこで頑張っているから、なお開かない。

そばでモニターを一緒に見ていた本田師が『外の馬が(リディル)が普通ならばバテる処だが、脚がある馬だから頑張ってしまう、だから福永の前が開かないままになっている』と解説してくれる。なるほど・・。気の毒になるほどに空かない空間。もうレースはほとんどがフィニッシュになってきて、やっとスペースが出来た時にはレースは終わっていたリアルインパクト。そしてリディルのあの不運な故障馬のアオリ。その他でもガルボがスペースがなかったり、スマイルジャックが外のアーバニティとの隙間がなさ過ぎて少しも追えないままゴールとか不利だらけ。そんな今年の阪神カップとなってしまった。

不利に泣いた馬もいる反面で、勝ち馬サンカルロとグランプリボスは持てる力を十分に発揮しての結果であった。外枠も良く、出せる位置にいたのもいい。最後は2頭の叩き合い。サンカルロが末脚優って、春の阪急杯以来の今年2勝目の重賞制覇となった。このサンカルロ、阪神の芝1400がピッタリな馬でもある。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。