-アーリントンC-平林雅芳の目

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土曜阪神11R
アーリントンC(GⅢ)
芝外1600m
勝ちタイム1.36.3

ジャスタウェイ (牡3、父ハーツクライ・栗東、須貝厩舎)

※※まとめて差し切る!ジャスタ・ウェイだ~!!

直線半ばで、内めの馬の間からこじ開ける様に出てきたタイミングといい脚色といい、オリービンの勝利と思えたもの。よもや外から、それも一番最後のジャスタウェイが差しきるとは思えなかった。ゴール板が近づくにつれ、グイグイと伸びていくジャスタウェイの脚。やっぱりこの馬はマイル戦がピッタリなのだろうか?1頭だけ次元が違う脚勢で、前2戦の鬱憤を晴らすかのような勝利でもあった・・・。

思い出した、須貝厩舎でこのジャスタウェイがケイコでも一番走っていた馬だった。今年の2戦が1800を選択して、いずれも4着。特に前走は最高の形で直線に入ってきていながら、まったく伸びなかったものだった。翌週の火曜に須貝師がずいぶんと悩んでいたのも思いだした。『距離なのかな~・・・』と言っていたのを。

1000メートル通過が1.01.1と、ゆったりした流れで進んでいた。4コーナーを廻る時には、ひと塊とは言え、最後方の外め(枠順どおりだが)のジャスタウェイにはかなり不利な流れだったはずだ。開幕週で、まして阪神の芝コース。内有利が今までの定説であろう。
実際、直線半ばで先行馬を含めて3,4頭の間をオリービンが坂を上がるあたりで抜け出した時には、後続のもがき方からも完全に勝ったと思えたものだ。外めから伸びてきているアルキメデスや以外にも伸びあぐねるダローネガローレルブレットの脚色を見ていると、勝ちモードと思えたほど。
最後の1ハロン過ぎぐらいから、ジャスタウェイのエンジンが点火。福永Jのステッキに呼応する様に、ゴールがどこかを知っている様にトップギアに入ったジャスタウェイの脚は、本当に素晴らしかった。

日曜、中山競馬場の検量室わきのインタビュー・コーナーに福永Jがいた。思わず前日のアーリントンカップの話をする。『最後はみんな止まったからね。あのスローな形だと、行くか後ろから脚を貯めての乗り方しかない。少し出しては行ってみたが行けないし、控える競馬になった・・』と話は続く。『マイルも合っているし、阪神コースもあったんだろうね。何せ、みんな止まった感じだった』と冷静に分析もしてくれた。

レースは、チャンピオンヤマトの逃げで始まった。外の馬の出方を見ながらの先行。ヴィンテージイヤーが2番手。内でオリービンが3番手だ。
2ハロン過ぎてもまだ突っ立って行きたがる馬を抑えている姿を多い。3ハロンを36.5とかなり遅い。その後も一向にペースは速くならず、縦長の馬群もいつのまにかかなり凝縮してきた。
4コーナーを廻る時に手が動いていたのは、ネオヴァンクル浜中Jぐらいだった。

直線に入って外コースからノーマルへと入ってきたが、まだチャンピオンヤマト先頭。ヴィンテージイヤーとの狭い間を割ろうとしているオリービン。なかなかスッと馬の間が開かない。外からローレルブレッド、ブライトラインの姿も見えだした。
残り1ハロンで、前が開いたオリービンがスッと前へと出て行く。1馬身は完全に出たと思える。中からアルキメデスが馬群を割って出てきたが、脚色的には負けていない。オリービン、勝利と思えた瞬間に、大外をジャスタウェイが来ていた。馬群を横目に見て、オリービンまでも差し切ってみせた。馬群に取りつくまでは福永Jの右ステッキが数発入っていたが、伸び出した時には、もう手綱で少ししごくだけの所作でゴールを過ぎていた。

もちろん、火曜の朝の坂路小屋では須貝師が祝福を受けていた。どうやら先日の初重賞のお祝いで《クエ鍋》を囲んだ様で、その成果がまた出たのではと先輩調教師から冷やかされてもいた。
でも勝っても負けてもお互いを評価するのが、この業界のいい処でもある。何せ、ジャスタウェイの勝利は見る者を唸らせる勝ち方であったのだから。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。