ゴールドドリーム、亡き父に捧げるG1の勝利!【平林雅芳の目】

ゴールドドリーム

17年2/19(日)1回東京8日目11R 第34回フェブラリーS(G1)(ダ1600m)

  • ゴールドドリーム
  • (牡4、栗東・平田厩舎)
  • 父:ゴールドアリュール
  • 母:モンヴェール
  • 母父:フレンチデピュティ

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ゴールドアリュールの訃報が届いたのが土曜。3歳のオープン特別のヒヤシンスでも、その産駒が4連勝と父へ届けた。今年最初のG1フェブラリーでは、ゴールドドリームとコパノリッキーの2頭がその産駒。直線で一旦先頭のコパノリッキーは、そこから伸びず馬群に吸収された。替わって外から脚を伸ばしたのが、2番人気ゴールドドリーム。いいタイミングで抜け出して、真っ白な富士山が待つゴールへと駆けこんで行った。
昨年の覇者モーニンは、まったく伸びず。同厩舎、同オーナーのベストウォーリアが迫ったがクビ差まで。1番人気カフジテイクは外から鋭く伸びるも3着。ノンコノユメも不発と、新旧入れ替えのダート界。そんな気がする一戦かと思える。

新幹線の車窓から、富士山がくっきり綺麗に見える。凛とした空気の冷たい朝であった。東京競馬場へ着いて真っ先に見えたのも同じ富士山だが、こちらは真っ白。5Rの白毛馬のカスターディーヴァの様な白さであった。
ダートはパサパサで、時計がかかる感じで進む。後半戦は外国人・JRAジョッキーが気を吐く。どのレースも頭はルメールJかデムーロJ。日本人ジョッキーはなかなか彼らの前に出られない、もどかしさばかりの後半であった。流れはそんなに行く馬がいなくて一見ユルリと流れそうだが、こんな時は香車の様に行く馬が出てくるもの。

スタートしてすぐに先頭に出たニシケンモノノフを観て横山典Jらしいなと思ったが、すぐにその外から一気にインカンテーションが行く。検量室でノリJに話を訊くと《もしかして、行くとしたら藤岡康太ならそう乗るかも知ない》と思ってもいたらしい。ジョッキーって本当にいろいろな事を考えてあるんだな~と、改めて思えた。
インカンテーションの逃げが1000mで59.0。スムーズに流れてはいたが、やはり速いペース。それもパサパサなダートでのラップだけに、少し速いものだろう。もしニシケンモノノフが自分でペースを握っていたら、あの粘りだけにもっとやれていたかも知れない。

武豊Jもやっぱり速くなるなと踏んでいたみたいで、3番手は予定していた位置だったか。それぞれが思い思いのポジションでレースをした道中だと思う。個人的にはエイシンバッケンが距離さえ保てば前走の内容からズドンと来るのではないかと思っていて、常に視野に入れて観てはいた。
4角を廻ってコパノリッキーがいざ追い出してきたタイミングも良かった。それでいて、内のニシケンモノノフが追い出した時に付いていけけない。そうこうしているうちに馬群に吸い込まる。
直線の半ばで、横並びの馬群からまさしくグットタイミングで出て来たのがゴールドドリーム。そのまますっと1馬身と差を広げて行った瞬間もあったと思う。その時に勝者はゴールドドリームだと思っていたし、あとは注目のエイシンバッケンが脚を伸ばして来たのを観て前に届くのかと期待したが、最後は止まり気味であった。

ベストウォーリアとカフジテイクが来ていたが、ゴールドドリームの楽勝と思い込んでエレベータで降りて地下道で馬を待つ。 平田師が一斉に皆と降りてきた中で思わず握手を求める。馬を待つ間、師と話をする。『来た馬がモーニンと思っていたら、違う方だったんやな~』とモロ関西弁で喋る調教師だ。こちらはまだ《完璧な勝利だったね~》と口に出していた。それが後で映像を見て知ったのが、クビ差。それもかなり接近されていたクビ差。どうやら先頭に立ってソラを使った様子だ。だが鞍上のMデムーロJは確信していたはず。それほどにスムーズに出てきた直線途中の脚色は、完勝の勢いだった。

ひと段落ついた検量室内では、戸崎JがルメールJの傍に寄って行って《どうだった?》と声をかけていたりする。ここらが戦いを終えるといい仲に戻る超一流ジョッキーなのである。そんな傍で、その雰囲気を味わっているのが楽しい。

若い4歳馬のゴールドドリームが勝った。ケイティブレイブも6着と頑張っていた。7歳馬のベストウォーリアが肉薄したが、どうやら新しい力が先輩達に追いつき追い越して行く時期となってきた様でもある。ドバイ遠征組もまだ混じって戦ってはいないが、それらと当たる後半のダート路線となって本当の新旧入れ替えがあるのかであろうが、着実にその日が近づいてきたものを感じる。

そんな事をいろいろと考えていた、帰りの東京駅へ向かう電車。沿線に梅の花が匂う様に咲いているのが見える。白にピンク、蝋梅だろうか黄色もある。 春がすぐそこまで来ているのを感じながら虚しく帰る路かな。我々には、まだまだ春は遠そうなのである…。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。