内から外への切り替えが見事、ペルシアンナイトが届いた!【平林雅芳の目】

ペルシアンナイト

17年11/19(日)5回京都6日目11R 第34回マイルチャンピオンシップ(G1)(芝外1600m)

  • ペルシアンナイト
  • (牡3、栗東・池江寿厩舎)
  • 父:ハービンジャー
  • 母:オリエントチャーム
  • 母父:サンデーサイレンス

マイルチャンピオンシップの結果・払戻金はコチラ⇒

重賞ウイナーが15頭。今年も豪華な顔ぶれとなったマイルチャンピオンシップ。2年連続のスプリンターズS覇者レッドファルクスは弟のCデムーロ騎手に託したMデムーロ騎手が選んだのは、3歳馬のペルシアンナイト。3歳馬は昇り馬のサングレーザーに、桜花賞馬レーヌミノルもいる。そしてRムーア騎手と直前に鞍上を替えてきたエアスピネル。昨年悔しい思いをしたイスラボニータと目移りするばかり。単勝オッズも割れに割れた。
エアスピネルが直線で抜け出した時には完勝かと思えたものだが、今、乗りに乗っているMデムーロ騎手。進路を外へと選んだ後の伸びは半端なく、最後にグイっとハナ差だけ前に出ていた。サングレーザーも差のないところまで来てと、やはり能力のあるところを見せていた…。

やはり今の京都の芝はだいぶ時計もかかり、内めは良くなさそうである。ひとつ前のレースでも、エイシンティンクルがそう速いペースでもない逃げなのに、直線ではもう脚がなかった。外差しが決まる馬場コンディションであった。
マルターズアポジーの単騎の逃げが見込まれる展開。寒い風とまぶしい太陽がまともに来る向こう正面からのスタート。ダッシュのあまり速くないマルターズアポジー。レーヌミノルがポンと前に出る。外ではムーンクレストと本田勢の出がいい。そこへ押して押してマルターズアポジーが先頭に立っていくが、1ハロンの半分も使っていた。内からヤングマンパワー、ダノンメジャーと前へ出てきて落ちつく。2ハロン通過でマルターズアポジーは1馬身のリード。エアスピネルは先行集団の直後で、前から9頭目ぐらい。そのすぐ前に武豊騎手のジョーストリクトリがいた。

サングレーザー、イスラボニータがそしてレッドファルクスらがその直後にいた。前半3Fを34.6と、やはりそんなに速い流れでなく通過して行く。けっこう縦長の流れである。
坂をくだっていく次の800m通過も12.1と、淡々とした流れ。最後方がブラックムーンで、その前がサトノアラジン。その次の1ハロンまでの間にグッと馬群が凝縮されていった。当然にエアスピネルに注目して見ていた。馬群の内めの絶好の位置で最後のカーブに入ってきたのを確認する。
視界が広がって全馬が見えた直線入口。エアスピネルが内から外へと出してきて、あっと言う間に前との差を詰めていく。ラスト300のオレンジ棒を通過する時にはもうRムーア騎手の右ステッキが唸って追い出しに入った。その内をレーヌミノルだが伸びが違う。最内のマルターズアポジーはもう脚がない。外からエアスピネルが伸びて行く。

200mを通過。レーヌミノルを振り切り、エアスピネルが先頭となってゴールを目指す。後ろにはレッドファルクスだが、伸びはそうもない。むしろ外のサングレーザーが前を追いかける脚色。さらにその内にペルシアンナイトが入ってきた。

レッドファルクスの後ろにいたペルシアンナイト。レッドファルクスが内へ進路を取ったのを見て、瞬時に外へと進む先を切り替えたMデムーロ騎手の神がかりなひらめき。サングレーザーの傍まで寄っていったのが、ラスト150ぐらいの処か。ゲートの轍があるあたりだった。
そこからMデムーロ騎手の右ステッキが5発ぐらい入っただろうか。外のサングレーザーもトップスピードに入っているから、なかなか抜けない。今度は手綱で押して押して促すMデムーロ騎手。そしてさらに右ステッキで前進を促す。エアスピネルがゴールへ真っ先に入ろうとする瞬間に、芸術的にもハナ差だけペルシアンナイトがの鼻づらをエアスピネルの前に出させていた。

ビデオを見るとエアスピネル、サングレーザー、ペルシアンナイトが馬群の内めを縦に連なっている4コーナー手前の映像であった。早い段階で大外の18番から内へと潜り混んだペルシアンナイト。枠順の不利を消す作業を早めに終えている。そして最後のカーブも内めから直線へと入ってきている。
エアスピネルが外へと出して行った後を、サングレーザーが続く。その空いた空間をうまく利用したのがMデムーロ騎手。サングレーザーが外へと出て来た瞬間にウインガニオン、そしてその後ろにいたイスラボニータに影響が出る。特にイスラボニータは少しだけ待つ瞬間があった様だし、その後も前の2頭の後ろにとなってしまい、またまた待つ時間を造ってしまっていた。勝負のアヤとは言え、何事もなく脚を使えていた上位3頭とは違って、最大限に能力を発揮出来ていたとは言えなかった様だ。

レースを終えて、ペルシアンナイトにMデムーロ騎手が騎乗する意味合いが判った。まだこの馬で完全なる仕事が出来ていないと思っていたのだろうと。だからレッドファルクスでなく、ペルシアンナイトでのコンビでここへ臨んできたのだと。

戦い終えて、表彰式に向かおうとしている池江師に声をかけた。《池江先生、おめでとうございます》と。するとこちらへ寄ってきて握手してくれた。そして後ろから来ていたMデムーロ騎手も、ニコニコ顔で握手をしてくれた。何かスッキリとした感じであったのは否めない。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。