競馬ラボでは小牧太騎手とのコンビですっかりお馴染みのナムラビクター。チャンピオンズCではあわや戴冠という激走を8番人気で見せてくれたが、地味ながら下馬評以上に走ってくるのが通例で、実績ある中京コースで今度はどのような走りを見せてくれるのか興味がつきない。かねてから同馬の気性面については小牧騎手が語っており、さらに斎藤孝厩務員の声を聞けば、より特徴をつかんでいただけるだろう。

担当厩務員も認める生粋の気分屋

-:東海S(G2)に出走するナムラビクター(牡6、栗東・福島信厩舎)ですが、JCダートから名前の変わったチャンピオンズCで2着と頑張りました。もともとパワータイプで、パサパサのダートでないと力を出せないところがあったのですが、(以前所属していた)野村厩舎時代に最初に見た時の感想はどうでしたか?

斎藤孝厩務員:私はお姉ちゃんのナムラエバーグリンも担当していたのですが、凄く気性が勝った馬でした。初めて見た時に、この馬はバカっ走りするか、走らないか、どちらかだろうなと思いながらやっていました。調教も動かないし、とりあえず一回使ってみようとなって、芝を使ったんですよね。しかし、全く動かないし、ダートを使ってみたらどうなるんだろう、と考えると、「砂を被ると嫌がる。新馬を使った時、物が飛んでくると頭を振って逃げる」と太宰騎手が言っていましたね。彼を乗せるのは可哀想だなと思って、2戦目は渡辺薫彦騎手に乗ってもらいました。「(道中は)外々でいいから乗ってきて」と言ったら、意外に走ってきて、ちぎって勝ちました。これはダートに行ったら違うのかなと思ってやっていました。

それでも、相変わらず調教は動かないし、これはどうなるのかなと。2走目も砂を被ったら嫌がると言うので、耳なしのメンコをつけました。すると、ちょっとくらい砂を被っても我慢できたので、“これは本物かな”と思ってやっていました。調教は相変わらず動いたり動かなかったりで、この馬は気分屋ですね。最近はちょっと動くようになりましたが。


-:活躍したダート馬の中にも、坂路やウッドコースで時計の出ないタイプの馬はいますよね。

斎:反抗するんです。追い切りでも、怒るとムキになって向かってくるところがあります。攻め専の人でも、ステッキを使って行くと、逆に伸びないと言うんです。気分良く走らせた方が時計が出るんです。

-:難しいタイプですね。あんまり気分良くやらせると、馬がナメ出します。オーバーワークになるくらい走ることもあるのですか?

斎:先週が55くらいで、12.9-12.9くらいで動いたんです。今まであまり記憶にない数字です。

ナムラビクター

初勝利時の口取り 当時は今は解散した野村厩舎に所属していた


-:先週は馬場状態の関係で、全体的に速かったですね。ダートに替わって、これだけ変わる馬も珍しいですよね。

斎:珍しいですね。

-:野村厩舎も色々な条件を、色々な馬でトライしていましたが、ここまでガラッと変わるのは記憶にないです。

斎:途中にオーナーの意向で芝を一回使いましたが、全然ダメでしたね。オーナーもそれで諦めました。ナムラコクオーの妹の子にあたるので、“芝でも大丈夫”と言われたのですがね。

-:ダートの中でも、中央のダートは時計が速かったりします。それよりも、僕が見た感じでは地方の時計が掛かるダートの方が合うんじゃないかと思いました。

斎:思いますね。ただ、物見が酷いんです。影とかを見て、調教中に飛んだりするんです。地方はナイターが多いので、そういう心配はあります。

-:物見をしたりするのは、走っていて余裕があるからできることで、一杯一杯の馬にそんな動きはできませんよね。

斎:ハロン棒の影を見て、ポーンっと跨いで行くくらいなので、その度にピッチが上がっていくんです。だから、地方のナイターがどうなるかという心配はありますね。

ナムラビクター

太く映るくらいで力を出せる馬

-:去年のチャンピオンズCは中京の左回りでしたが、人気はそんなになかったです。当日の馬場状態が重かったので、これはナムラビクターに合うなと思っていましたが、僕の予想以上に勝ち馬に肉薄しました。

斎:ホッコータルマエに0.1秒くらいですが、あの馬はやっぱり強いですよね。

-:ホッコータルマエにあそこまでいったら、万々歳じゃないですか?

斎:3歳の時(レパードS)も同じパターンでした。クビ差で負けたんですよね。並びかけて行くと、もうひと伸びするんです。どこかで一回逆転してほしいと思うんですけどね。

-:そのためには賞金を加算して、上のステージでも使いたいところを使えるような馬にならないといけません。チャンピオンCを使った後の状態はいかがですか?

斎:変わりなく順調にきています。

-:この馬の体型は、一般の人から見るとちょっと太って見えますよね。

斎:馬が太いと言われるのですが、そう言われるたびに凄い競馬をしています。息遣いも悪くないと言いますし、ジョッキーも具合が良いと言います。だから心配はしてないです。


「我が強くて、歩かない時があるんです。調教でも馬場で調教できないようになったりします。無理にやろうとすると蹴りまくります」


-:パドックで見る人には、お腹回りに余裕があるように見えるかもしれませんが、この馬はこういう体型と思って見た方がいいですか?

斎:そうだと思います。体重はあまり気にしていないです。

-:普段のトレセンを歩いている姿を見せていただいても、そんなに気配良く見せる感じではないです。ちょっとダラダラ歩いている感じです。

斎:ちょっと馬っ気があるんです。他の馬に近づかないように歩いています。気性的に馬っ気を出すとかなりキツいです。

-:そういうところを斎藤さんが気にしながらやっているのですね。他の馬には近づいてほしくないですか?

斎:後ろから馬が来ると、馬を待つ癖があるんです。牝馬が来ると、ピタッと止まって待っていますし、こっちの方がかえって気を使います。

-:時々、斎藤さんが引っ張って促しているシーンを見ます。

斎:我が強くて、歩かない時があるんです。調教でも馬場で調教できないようになったりします。無理にやろうとすると蹴りまくります。

-:そういう癖馬的な一面を持ちながらも、ここまで走ってくれれば、斎藤さんとしては万々歳じゃないですか?

斎:そうですね。有り難いことです。

ナムラビクター・斎藤孝厩務員(後半)
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