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高田潤騎手

高田潤騎手


京都競馬場・障害重賞初勝利
【2001/11/10・京都ハイジャンプ(J・G2)優勝馬=アイディンサマー


阪神ジャンプステークスに続いて乗せていただきまして、阪神のときに530キロだった馬が京都ではプラス10キロで540キロでの出走になりました。
僕は中間にあまり乗っていなかったので、イメージが湧きませんでしたけど、装鞍所で藤原英先生に「調整失敗してもうた。10キロ太ってもうた」と言われて「ただでさえデカい馬がプラス10キロって、マジで!?」と思いました。まあ、心のどこかで「これなら勝てなくても自分のせいではないかな…」なんて甘い考えも(笑)。
でも、パドックで跨って返し馬に行ったら、ムチャクチャ仕上がっていたんですよ!そういえば、太ってもうたと言っていたけど先生は笑っていたし「ああ、そういう事か」とそこで気付きました(笑)。僕にプレッシャーがかからないように「調整失敗してもうた」って嘘ついていたんやな、と。
先生からのレースの指示も「他の馬に邪魔されないように外を回って来い」という内容で、そんな距離ロスするような乗り方は邪道なんですけど、僕もデビューして3年目なので「ハイ」としか言えませんからね。
スタートして一番後ろにいて、先生に言われたとおり、障害箇所は全部外を通って行きました。今見たら「何ていうレースをしているんだ…(汗)」と思うような内容ですけど、それでも勝つんですから、それだけアイディンサマーが強かったんですね。
やっぱり、藤原英先生も「無事に回ってくれば勝てる」というくらい自信があったんでしょうね。

【京都競馬場・障害コースについて】
京都も飛越力が重要なコースです。ここは障害が結構デカいんですよね。あと、馬場の内側が荒れたりするので、内ベタが有利は有利なんですけど、そう言い切れないところもあります。
重賞のときだけ出てくる「ビッグスワン」という愛称が付けられた特殊なバンケットも京都の特徴ですね。僕たちジョッキーの間では「3段飛び」って呼んでいます。
栗東トレセンには、競馬場より小さな3段飛びがあるのでそこで練習します。
でも京都の重賞に使う馬は、大概事前に競馬場で練習しますね。中には「もう経験しているから大丈夫」という馬もいますけど、大概は競馬場で事前に練習します。


中山競馬場・障害重賞初勝利
【2008/12/27・中山大障害(J・G1)優勝馬=キングジョイ

この前の年にも乗せてもらいました(2着)けど、そのときは最後のコーナーで待ち過ぎて大事に乗り過ぎたな、というレースになってしまいました。
この年はそれを頭に入れていたので「今度はこうしよう」と思って乗りましたけど、そのイメージ通りの競馬が出来ました。
前年に2着になったとき「力負けじゃない」と思っていましたし、展開ひとつ、仕掛けどころひとつで勝てると考えていました。
G1制覇のチャンスは大きいと思っていましたけど、僕の中ではプレッシャーはありませんでした。
同じ増本厩舎が2頭出しをしていて、もう片方に断然1番人気のマルカラスカルがいたので、変にプレッシャーを感じることもなく、馬を気持ち良く走らせることだけを考えてレースに向かえたのも良かったと思います。
最後は3、4コーナーから行きっ放しで、メッチャしんどかったです。レース後に腹帯を自分で外せないくらい疲れました。

【G1初勝利について】
障害レースに乗っている以上は、絶対に勝ちたいと思っていましたからゴールした後は「ついにやったな」と思いました。これを勝つためだけに障害に乗っているようなものですから。
この中山G1を目標に馬を作っていると言っても過言ではないくらい、夢の域のタイトルを実際に手に入れることが出来て本当に良かったです。

【キングジョイについて】
G1を勝っているからという訳ではないですけど、今まで乗った中で一番強い馬だと思います。スタミナもスピードもあるし、天性のバネがあって、抜群の飛越力があります。普通の馬の1.5倍くらいの飛距離があるので結構遠くからでも安心して飛べます。
500キロちょっとくらいの体ですけど、それ以上にデカい馬に乗っているように感じます。「良い馬は体をデカく見せる」というけど、まさにそれです。障害を小さく感じるくらい、メチャクチャデカく感じます。
もう北斗の拳のラオウが乗る「黒王」みたいなものですよ(笑)。それぐらいオーラもあるし貫禄もあります。
歩いている格好も姿勢が良くて、普段の調教のときでもすぐにキングジョイだと分かりますよ。
競馬もしやすいし、本当にケチのつけようが無いですね。JRA賞(08年、09年最優秀障害馬)に選ばれるのも当然だと思います。
競馬は馬が教えてくれる部分が多いので、経験の浅い若いジョッキーには、こういう素晴らしい馬の背中を一回経験してみて欲しいですね。
現実的には難しいけど、一回乗ってみてもらいたいですね。絶対「何じゃコリャ!?」ってなると思いますよ。



【中山競馬場・大障害コースについて】
JRAでは札幌・函館を除く8場に障害コースがありますけど、この中山の大障害コースだけは“別格”というくらいタフなコースです。とにかくバンケットが深いし、デンと置かれている障害がメチャクチャデカいし。
それを63キロを背負って走るわけですから、馬にとっては本当にシンドい、スタミナ・飛越力が問われる「これぞG1」といえるコースです。
大竹柵と大いけ垣は両方とも、高さが1メートル60センチで幅が2メートルを越えていますからね。もう2段ベッドを飛び越えるようなものですよ。
乗っている僕たちでも障害の向こう側が見えないですから、それより視線の低い馬はなおさら向こう側が見えないですよね。
飛ぶ先が見えないだけに、より人と馬の信頼感が必要になりますよ。
中山コースに関しては、僕も去年のブログ「中山大障害」でもコースの印象を書いているのでそちらも読んでみてください。


新潟競馬場・障害重賞初勝利
【2010/8/21・新潟ジャンプステークス(J・G3)優勝馬=コウエイトライ

この馬はいつもは強敵ですけど、今回小坂騎手のケガでチャンスが回って来ました。調教で乗せてもらったときには、暴走気味でちょっと難しい面があったので、レースでも乗り難しいかなというイメージを持っていました。
しかもテン乗りでしたし不安もありましたけど、小坂にも話を聞いてレースに向かいました。でも、ゲートが開いてからは思っていたのとは裏腹に、リラックスしてキャリアのある馬らしい走りをしてくれて、良い意味で予想を裏切られました。
飛越も上手いし「小坂、良い馬に乗ってるな」と思いながら乗っていました。
実は僕にとって、1番人気で重賞を勝つのはこれが初めてなんですよ。勝って嬉しいというか、ホッとしました。コウエイトライの記録を知っていたので、何とか勝たせてあげたい、と思っていましたから。
自分の記録も知っていましたけど、全然気にしませんでしたね。何か表彰されるわけでもないし、JRA側からすれば「だから何?」「それがどうした?」みたいな感じなんじゃないですか(笑)。



【コウエイトライについて】
何回も一緒のレースに出ていて「一緒に走るのは嫌だな」と思っていました。やっぱり、強いんで(笑)。スピードがある馬なので、相手に回すと手の施しようがなくて、バテてくれるのを待つしかないんですよね。何度も勝たれていますし、本当にタフな馬です。
一緒のレースでガンガン行っているのを見ていたので、イメージでは低くてアグレッシブな飛びをするかと思っていましたけど、意外と障害を見て、冷静に飛んでいました。
飛びは低いですけど綺麗に飛ぶので、結構安心して乗れました。これでコウエイトライは障害重賞7勝目。歴代最多記録に並んだので、この後もどんどん記録を伸ばして欲しいですね。
この歴代最多タイ記録はグランドマーチス、バローネターフに並ぶものだと聞きましたけど、どちらも1970年代に活躍した馬ですから、それだけ長い間並ばれることが無かった凄い記録なんですよね。
そういう凄い記録の達成に携われたのは誇れることやと思います。

【新潟競馬場・障害コースについて】
新潟コースの特徴は障害が全部「置き障害」だということですね。平地で使う芝コースに障害を置くので、全部が竹柵障害なんです。
この新潟こそ「イン絶対!」です。
障害の間隔が広いので結構スピードに乗りますし、竹柵も小さいので、ペースが速い中で飛越を出来るタイプが合いますね。
飛越力だけでカバーできるコースではないので、スタミナだけではなく、スピードが必要とされるコースです。
あと、追い込みがききにくいので、前に行ける先行力がある馬が有利です。

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【高田 潤】Jun Takada

1980年大阪府出身。

JRA初騎乗:
1999年3月 6日 1回 中京7日 1R ヤマカツロバリー(7着/14頭)
JRA初勝利:
1999年6月12日 3回 中京7日 1R エアウィンスレット
JRA通算成績は平地で44勝・障害で43勝(10/9/22現在)


【最近の主な重賞勝利】
・10年 新潟ジャンプS(コウエイトライ号)
・08年 京都ハイジャンプ、中山大障害(共にキングジョイ号)

デビュー2年目から障害戦にも騎乗するようになり、重賞騎乗50回目にして障害重賞全場制覇を成し遂げる。
09年11月に所属していた松田博厩舎の元を離れ、フリーに転向。今年は現時点で7勝と、順調に勝利を挙げている。
競馬ラボ・現役関係者コラム「FEEL潤!!」にて毎週コラムを掲載中