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騎手コラム

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セール史上2位の5億8000万円出た!セレクトセール2017・当歳馬市場回顧

当歳馬総括

7月11日、「セレクトセール2017」(主催:日本競走馬協会)の当歳馬市場が北海道・苫小牧市にあるノーザンホースパークにて開催された。


セリが始まる前には恒例となった上場馬の展示が行われた。まだ生まれてから数ヶ月しか経っていない当歳馬の嘶く声が至る所から響き渡るのどかな空間が広がっていたが、セリ開始時刻の10時となると、いきなりから会場の熱気は最高潮と言わんばかりに上がっていった。


この日1頭目の上場馬であったアナアメリカーナの2017がいきなり9400万円という1億円目前の高額で取引されたが、クィーンズベストインヴィクタが兄姉にいるラスティングソングの2017が1億円で落札されると、それを皮切りに1億円超えが連発される。


セレクトセール

▲セール史上2位の5億8000万円で落札されたイルーシヴウェーヴの2017


そして、この日会場が最も盛り上がったのは、イルーシヴウェーヴの2017のセリ。直前に上場されていたレジネッタの2017も1億円を超える白熱したセリとなっていたのだが、本馬のセリは億超えの馬の印象をかすませるほど強烈なインパクトを残す事となった。


1億円から始まったセリは、瞬く間に2億円台まで価格が上がって行く。そして、2億4000万円のビッドが挙がった直後、なんとここで3億円のビッドが挙がる。2億円台のセリをしている中とは思えない跳ね上がり方に、会場内にはどよめきが広がる。しかし、ここでその勢いが留まることはなく、最終的にハンマーが落ちたのは5億8000万円。セール史上2位となる超高額落札が飛び出したのだ。


セレクトセール

▲ドナブリーニの2017を3億7000万円で落札したのは(株)DMM.com


高額落札馬が多くなり、売り上げが年々増加していくセレクトセール。近年の特徴は新規参入の馬主が、当セールで競走馬を購入することから馬主生活をスタートさせることが増えているという事だ。例えば、今年注目を集めたのは、一口クラブとして新規参入を発表した(株)DMM.com。この当歳馬市場でもジェンティルドンナの全妹ドナブリーニの2017を3億7000万円、キタサンブラックの全弟シュガーハートの2017を1億4500万円で落札するなど、きょうだいに著名な活躍馬がいる良血馬を続けて高額で落札した。


最終的に、上場頭数220頭中、売却頭数は190頭。売却率86.4%は昨年を大きく上回った。売却総額は86億9250万円とこちらも昨年の数字を圧倒的に超えていった。1歳セクション、当歳セクションと二日間を合わせた売却総額は173億2700万円。もはや"当然"という言葉をつけたいぐらいだが、これは過去最高額となっている。


社台ファームの吉田照哉代表も語っていたのは「新しく参加した人も4~5000万円、中には1億以上で落札してくる人もいて、すべての相乗効果のおかげで今日の結果になった」という事。確かに『サトノ』の里見治氏や、『アドマイヤ』の近藤利一氏といった、以前から当セールで高額落札を連発している馬主の存在もあるが、それだけでは決してこのような凄まじい結果にはならないはずだ。


また、同氏の「計算、採算よりも『多少高くても良い馬がほしい』という人が多い印象を受けた」という言葉こそが、今のセレクトセールの状況を物語っているものであっただろう。ノーザンファームが中心となってこのセリのブランドを確立して『ここで馬を買えばより活躍の可能性が広がる』と、あらゆるホースマン達が考える場になっているのだ。南米など、海外諸国のトップホースが繁殖牝馬として集まっている今の日本競馬において、その子供達を購入できるチャンスであるセレクトセールは、もはや夢のセリになりつつあると言っても過言ではないのだ。


セレクトセール

▲活況に終わったセールを振り返った社台ファーム・吉田照哉代表


昨年、吉田照哉氏は「ようやく、日本が世界に通用する、競馬先進国にいれてもらったんじゃないですかね」という言葉でこのセリを締めくくった。あれから、たった1年経っただけの今年のセリで、そのような印象を受けた人はいないのではないだろうか。そう思えるほどに、海外諸国の関係者も羨む"いい馬"が並ぶセリに既に変身しているからだ。


そして、この1週間後に行われた日高のセレクションセールが、セレクトセール初年度の売り上げに匹敵する結果をはじき出した。競走馬市場の相乗効果は目覚しく、これまでも、これからも活性化し続ける市場となっている。


まだまだ日本の競馬は進化する。そう思える活況がそこには広がっていた。