ロジャーバローズ

19年5/26(日)2回東京12日目11R 第86回 日本ダービー(G1)(芝2400m)

  • ロジャーバローズ
  • (牡3、栗東・角居厩舎)
  • 父:ディープインパクト
  • 母:リトルブック
  • 母父:Librettist

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リオンリオンが外から果敢な逃げ。2番手も前から10馬身ぐらい後ろで脚を貯めたロジャーバローズ。そして、直線ラスト400でゴーサインで先頭に躍り出たロジャーバローズが、ただ1頭猛追して来たダノンキングリーをクビ差退けて7000頭余りの頂点に立った。 圧倒的1番人気のサートゥルナーリアは、あろうことか発馬で後手を踏む。潜ろうとしたところのゲートで位置が後ろとなり外々を通って一旦は3番手も、最後はヴェロックスに内から差し返されて4着と、思いがけない敗退となった。

火曜の朝。恒例の坂路監視小屋詣の朝である。朝一番からスタンバイして馬を観るのが楽しみである。そこへ角居師が入ってきた。入り口近くのカメラマンの《おめでとうございます》を皮切りに中にいる者がそれぞれ祝福の言葉をかける。それに対して小さく感謝の言葉を言いながら奥へと入ってきた。日刊紙の記事でも、角居師が何か勝者なのに申し訳ないような言葉と態度が書かれていた。元々そう大きなアクションをする方ではないが、今朝も何となく静かに丁寧に姿勢が低い。

当然にダービーの話題になる室内。記者の《先生、あのゲートはダメでしょう。1番人気馬に合わせて開けてくれないと・・》の言葉にもただ静かだ。私も記事で見知ったことを尋ねる。《ロジャーバローズの中山の時のゲートはそんなにひどかったのですか》と。それに対しても静かに『エエ、ひどかったので今回も心配していたのですが、案外にも心配なく上手く行きました』であった。《ノーザンファーム以外のディープインパクト産駒のワンツーだったんですね》と加えると、『それが育成はノーザンファームだったんです、2頭とも。だから勝巳社長の頭から角が出ていたんではないですか?』と、やっと面白いことを教えてくれた。こんな裏話が聞けるのが火曜朝のいい処だ。

そうそう、朝一番には厩舎を廻ってから監視小屋へ来るのだが、松永幹厩舎に真っ先に寄る。愛馬を送り出して部屋にいた師に《幹夫ちゃん、ファーストダービーはどうでしたか?》と尋ねると、『ええ、自分の競馬はしましたからね。ノリが上がって来た息子に、控えるつもりはなかったのか?と聞いてました。最初から行く気だったんでしょう』と言う。こちらとしては、行くなら離して行けのアドバイスが出ていたのかと思っていたが、どうやら鞍上の気持ちであの逃げとなった様だ。向こう正面でロジャーバローズの位置が絶好の位置にいるなと思った人はかなりいるはずだ。願ってもない展開となったのが、浜中騎手の描いていたパターンAだったかも。

ふと、かなり昔のことを思い出した。 この業界に入って間がない頃の1968年、第35回ダービーを逃げ切ったのがタニノハローモアで、七夕ダービーと言われ7月7日に行われた。下馬評は三強と云われたマーチス、タケシバオー、アサカオーの三つ巴と思われた。そこをあっと言う逃げの手に出たタニノハローモアが、18頭を引き連れてそのままゴールへと入ったシーンを。
三強がお互いが牽制した訳でもなかろうが、結果は前が楽だったこと。何か今年の皐月賞上位馬にばかり眼が行き、他では難しいかのムードが流れてしまった。ある意味、先に結果がイメージされてしまっていたのかも知れぬ。願望がそのまま映像となって頭の中に残されてしまっていたのかも知れない。

リオンリオンが逃げて一番楽だったのはロジャーバローズだろう。その後ろの位置していたダノンキングリーも最高のレースをしていたと思える。ただ直線で早めに仕掛けて行ったロジャーバローズを、ついついまだ早いと思ったのかどうか。ロジャーバローズが最後にもうひと伸びしていたのだから、勝った方が強かったと簡単に思った方がいいのだろう。何せサートゥルナーリアはパドック、返し馬と大人しかったのに輪乗りしていた間にドンドンとテンションがあがって行くのが、TV越しでも判るほどだった。それがあのゲートとなったのだろう。あんな競馬をしたことがなくともカバーできる馬もいる。だがかなりの脚を使って、最後にヴェロックスに差されたのは精も根も尽き果てた感じであった。

シーザリオの子供のダービーでの不運が重なる。エピファネイアしかり、サートゥルナーリアしかりだ。でもこれからまだまだ競馬は続く。ひとつの負けを糧にして大きくなって行くだろう。
何よりも今回は浜中騎手の悲願のファーストダービー制覇を祝ってあげたい。そんな火曜の朝の気持ちでした・・・。