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梅田智之調教師

天皇賞(春)以降は13戦続けた馬券圏内から3戦外れたが、アルゼンチン共和国杯で2着に連対すると、続くジャパンカップはメンバー2位の上がりを駆使して4着と復調気配。父ハーツクライがディープインパクトを下す大金星を挙げた舞台を前に、不気味なムードを漂わせている。穴党の注目を受けるダークホースが激走する可能性について、梅田智之調教師に直撃してきた。

秋4戦目での上積みは!?

-:暮れの大一番有馬記念に出走するアドマイヤラクティ(牡5、栗東・梅田智厩舎)ですが、今週の動きから教えて下さい。

梅田智之調教師:動き自体はそんなに変わらないし、前回のジャパンカップ(以下、JC)くらいのデキにあるかというのと、人間の指示に従うか、その辺の再確認というか。乗り役もJCで乗ってもらっているので。動き自体はいつもと変わらず良かったですね。

-:JCの府中から、中山の2500に変わる点についてはどうですか?

梅:東京の長い直線は、後ろから行く馬には普通に考えて合うだろう、というのが大方の予想だったんだろうけど、あまりにもペースが遅くて、「本当にJCか?」というような時計やったんでね。後ろから行ったウチの馬からしたらレースの流れが向かなかったかなと。その割には、今までにない上がりで突っ込んできてるので。これが中山に替わると、東京とは逆に直線が短いから前に行った馬が、となるんだけど、中山は3コーナーくらいからみんなスパートしてくるから、案外差し届く時があるので。暮れの中山は馬場も大体パンパンな良馬場ではないし、展開が向いてくれたら、と思ってます。

-:この馬の中山適性というのはどう見ますか?

梅:中山は3回走って2回勝っててAJCCでも3着には来てるから、競馬場自体はそんなに苦にしないと思うし、要は後ろから行く馬。自分でレースを作れないので、流れさえ向けば、とは期待しています。


「東京より中山のほうがいいだろう、と言ってるんでね。有馬記念はお父さんのハーツクライも勝っているレースですから」


-:若干エンジンがかかるのに時間を要するところがラクティにはありますね。

梅:右回りの方が特にエンジンのかかりが遅いんでね。だからその辺を、乗り役が追い切りを入れて4回目に跨るから、特徴というか馬の癖を掴んでくれてると思います。前走より強調できるところは、乗り役が連チャンで乗ってくれるってことやね。

-:今週もウィリアムズジョッキーに乗っていただいて、先生もけっこう話をされていたんですけれど、感触はいかがでしたか?

梅:少し右にモタれるところがあるので、その辺の確認と、あとは乗り役が今度は2回目だから、前回乗ったことを踏まえてのレースをしてくれると思います。



-:ウィリアムズジョッキーといえば、どちらかというと先行のイメージが強いですね。

梅:だから東京より中山のほうがいいだろう、と言ってるんでね。有馬記念はお父さんのハーツクライも勝っているレースですから。JCの時よりも状態自体に大きく上積みがあるとは秋4戦目だから言えないですけども、前走よりも強調できるところもいくらかあるので、その辺を生かせたらと思います。

-:そのひとつが3コーナーからレースが動いていって、上がりがちょっとでもかかってくれれば、ということですか?

梅:それがいいなあ。今回も見渡しても特に行きたいって馬もいないしね。前回みたいにスローのヨーイドンになってほしくないな、と思うんだけど。そうしたら、今度はジョッキーが考えて乗るかなとも思うけどね。

-:ラクティの違う面を見れるかもしれない?

梅:そうですね。

来年さらに強くなるイメージ

-:金鯱賞を勝っているカレンミロティックなども先行力がある馬ですし、あの辺が引っ張るとすれば、JCほどのスローは考えられないと思います。

梅:そんな感じですね。メンバー的には、JCと有馬記念とで言ったらジェンティルドンナがオルフェーヴルに変わったくらいで、そう変わってないんでね。そう考えると、1頭強いのがいるけど、チャンスが無いことは無いなと。

-:有力馬の中にも秋4戦目の馬はいますし、JCとの違いは、名前とか格だけじゃなくて、当日のコンディションのいい馬というのが上位に来られる気がします。

梅:そうでしょうね。あとは(オルフェーヴル以外には)抜けた馬はいないと思うし、乗り方ひとつ、状態ひとつやと思うので。今のところ状態に関しては上昇期に来ているので。

-:来週はそんなに速い時計を出すというよりも?

梅:終いサーっと流すくらいで。大体いつも1週前に作って、当週は微調整で。この馬は結構テンション上がるんですよ。案外キレやすいタイプやから、その辺は注意しながら。


「まだ緩さが残ってるから、上手くいったら、もうひとつギアを残してるかな、という部分があるので」


-:前回の上がり時計というのは、今までのラクティのイメージにはちょっとなかったところなんですが、これは肉体的に、古馬になって成長してきて出せるようになってきたと考えていいんですか?

梅:そうでしょうね。まだ緩さが残ってるから、上手くいったら、もうひとつギアを残してるかな、という部分があるので。ローテーションもそう無理な使い方はしてないし、だから未だに少しづつ成長しているかなと。来年もうちょっと強くなってほしいとは思います。

-:また春の天皇賞あたりに出てきたら楽しみですけどね。

梅:今年も春の天皇賞4着に来たけれども、内容的には完敗な感じだったんでね。もう少し接戦の中で、内容のある十分勝負になるような、そういう馬になってもらえたらなと。



-:大一番での3、4着が多いイメージがあります。

梅:どうしてもジリッジリッとしか伸びないから勝ち味に遅いっていうところがあるんでね。ただ、あれだけ上がりが切れたイメージが、今まではなかったから、前走でひとつ作戦が増えたというか。

-:もし当日後ろから行ったとしたら、中山の直線には坂がありますからね。あの短い坂で結構ガラッと変わる有馬記念もありますから、その辺に期待したいですね。

梅:バテる馬じゃないし、追ったら追っただけ伸びてくる馬だから、その辺に期待ですね。

-:ウィリアムズジョッキーがバテるくらいまで。

梅:乗り役が精根尽き果てるぐらいまで馬に注入してもらいたいですね。

-:来週1週間まだありますけども、当日の活躍を楽しみにしています。

梅:はい、どうもありがとうございました。


【梅田智之】 Tomoyuki ueda

1969年滋賀県出身。
2006年に調教師免許を取得。
2007年に厩舎開業。
JRA通算成績は102勝(13/12/14現在)
初出走
07年3月10日1回中京3日目11R エミネンツァベルタ(14着)
初勝利
07年4月7日2回阪神5日目5R メイショウハナミチ
重賞初勝利
12年4月1日 2回阪神4日目11R 大阪杯 ショウナンマイティ


競馬学校厩務員課程を経て、96年から西橋豊治厩舎に調教厩務員、調教助手として所属。06年から厩舎を開業。12年の大阪杯をショウナンマイティで制して重賞初制覇。今年のダイヤモンドSをアドマイヤラクティで制し重賞2勝目を挙げた。看板馬のアドマイヤラクティでG1初制覇に挑む。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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