最終調整も手控えるつもりはなし

－：今回、未知な部分としては外国馬がいますね。

音：どの馬が来ても同じなんですよ。しかも、外国馬は行ってくれるので、こちらとしてはペースが速くなって、目安にしやすいという点はありますね。逆に言うと、ミッキーアイルはこれまでずっと、他の馬の目標にされてきた訳でしょう？ハナに行っているミッキーアイルをそれを目標にして競馬をしている訳ですから。そういう意味では逆の立場になって、追い掛けられる、目標があるので、それを目指して差してきてほしいと頭で描いていますね。

－：先生の青写真、イメージでは勝つチャンス、上位に来るイメージがもちろんあるわけですね。

音：とにかく僕は、この馬は1200～1600で評価してもらいたいのです。差すレースが板に付いたら、安田記念でも結構やってくれると思います。もう追い掛けるのではなくて、直線で差すよ、というイメージを描いていますね。


「これから先、この馬を大事に使いたい、という観点から言っても、ハナに行かさないで差すレースをした方が、たとえ届かず敗れてもね……。ねっきりはっきりのレースをさせたら、トライアルなどを使えなくなってしまうので」

－：前走の阪急杯でも僅差の2着でしたが、58キロを背負っている馬の中では最先着していますし、今日の動きも良かったですね。

音：時計的にはちょっとやり過ぎたんですよ。52～3秒で十分なのに、50.9なのでね。

－：ファンは走っている時間帯が分からないと思うので、朝一番での時間帯での50.9というのとはまた違いますよね。

音：違うね。(朝一ならば)実質は50を切っているかも分かりません。「来週はどうするの？」と気にされると思いますが、前回の阪急杯は馬場(コース)でソフトタッチですよね。今度も馬場でやります。ただし、あまりソフトにはするつもりはないのですよ。渾身の仕上げをしたいなと思っていますが、今日が思ったより時計が速かったから、格下を前に置いて、普通に82～3で良いかなと思っています。今日は毎日杯を使うダノンリバティと一緒に入れているから、前半がちょっと速くなったという。

－：楽しみにしています。

音： 1200の芝は今年の秋にスプリンターズSがあるじゃないですか。今年は安田記念、スプリンターズSからマイルCSというローテーションも考えているのでね。香港スプリントなどは一切考えていないですね。とにかく日本で、マイルとスプリントでG1を勝つことが、今の僕の夢です。マイルも一つ勝ちましたが、やっぱりマイルCSも安田記念も値打ちがある。古馬とのレースになりますから。

ミッキーアイル

－：去年の秋から体とか見させてもらっています。成績は上下差が激しいですが、この馬の良さというのは馬体自体がいつも良いですね。

音：今日もちょっとやり過ぎで、ちょっと心配をしています。しかし、レースを使っても最初は食いが落ちたりだとか、追い切った後も食いが細くなったり、ということが昨年の秋口ぐらいまではあったのです。それが阪急杯の少し前くらいから、ヘコまなくなりましたね。NHKマイルCとか阪神Cを見ていたら、ハナに行ってタレるのだから、精も根も尽き果てますよね。それは後々に(ダメージが)残りますよ。これから先、この馬を大事に使いたい、という観点から言っても、ハナに行かさないで差すレースをした方が、たとえ届かず敗れてもね……。ねっきりはっきりのレースをさせたら、トライアルなどを使えなくなってしまうので。

－：立て直すだけの時間が読めなくなったりしますね。

音：できれば余力残しで状態をつくった方が僕は良いと思います。そのためにも、やっぱり行かさないことですよ。

－：それを積み上げてきたからこそ、今の良い体の状態があると。

音： 2～3歳に掛けて、イジめたからこそ今があるのかもしれませんね。ハナに行ってイケイケで勝ってきたからね。それでNHKマイルCまで勝ったから。

調教師として高松宮記念の位置付け

－：デビュー戦から、ハイパフォーマンスを出してきたこの馬ですから、何とか古馬相手にもタイトルを獲ってもらいたいですね。

音：2歳のマイルのレコードはおそらく破られないと思うし、並の馬ではないのは間違いないのですよ。それが差すレースで活きたら、これは鬼に金棒になりますよ。これほどの素材をハナに行くだけで潰すのはもったいないと思います。これは、僕ら厩舎サイドが一番考えないといけないことでしょう。そういう面では1200でも1400、1600、今は試している状態ではありますが、それがG1だとしても、今後に活きれば良いです。高松宮記念がダメでも、また挫けずにやっていきますよ。

－：高松宮記念は初距離ですが、コース改修前には1200未経験でも十分に来ている馬もいますね。

音：オレハマッテルゼも1200を初めて使って勝ちましたからね。初めてだからというレッテルは貼りたくないです。血統的にはお母さんは1000mのダートだけで2勝していますが、テンションを上げる馬だったんですよね。だから、やっぱり距離が保たなかった。この馬はディープに似ているところが出ていますのでね。

ミッキーアイル

－：先生は知っているかどうか分からないですけど、スターアイルというのは競馬場にあるレストランの名前なんですよね。

音：ああ～、そうですか。たまたまスターアイルという名前は、お母さんのアイルドフランスという名前を採ったと思うんですよね。それから、スターはスターになって欲しい、という意味だと思うので、それがたまたま一緒になったのかなと思いますけどね。

－：スターアイルがスターになったのではなく、スターがスターを生んだと。

音：まあ、そうですね。アイルはそのままお母さんからもらいましたからね。そのお母さんのスターアイルのアイルも、そのまたお母さんのアイルドフランスのアイルだから、繋がっていますね。今度(2歳)は野田みづきさんの馬ではなく、野田会長のダノックスさんの馬なので、どうなるんですかね。あんまり難しく考えるのが嫌だったら、「ダノンアイル」で(笑)。もう今は順調に来ていまして、秋には入ってきますけどね。

－：その話は、POGの特集の時にまたぜひお願いします。今回の高松宮記念は楽しみにしておきます。

音：高松宮記念は僕にとっては一つの通過点なので。逃げないミッキーアイルをまた見て欲しいなと思います。

－：またよろしくお願いします。ありがとうございました。

(取材・写真＝高橋章夫)

ミッキーアイル・音無秀孝調教師インタビュー(前半)はコチラ⇒

1 | 2


●マイルCS前・ミッキーアイルのインタビューはコチラ⇒