ラストシーズンの名門から登場したスター候補生・シュウジ
2015/8/30(日)
今年の中京2歳Sはハイレベル
-:栗東は暑い日が続いています。夏バテの心配はありませんか?
千:全然、大丈夫じゃないですかね。短期放牧に2週間くらい出していたのでね。むしろ、すごく増えて帰って来たので、体調は良好です。具合が悪かったら、そんなにカイバを食べないでしょうしね。
一週前追い切りを行うシュウジ(右)
レースでは手綱を譲ることになった小牧太騎手が騎乗した
-:今朝(8/26)の追い切りなのですが、5時半ぐらいの時間帯で、一番の馬が走った後でちょっと荒れているのかなという馬場だったのですが、時計的にはどんなものでしたか?
千:53秒2で終いが12秒5。持ったままで馬ナリでしたね。
-:1週前の追い切りとしてはこんなものだと。
千:そうですね。指示も馬ナリだったので。
-:それは、意図的にはある程度出来ているから、1週前に目一杯やる必要がないという判断ですか?
千:はい。馬よりも人間が一番不安なんでね。
-:これだけ強いのだから、多分大丈夫でしょう。
千:そうですね。でも、この間のフェニックス賞の時も、同じ中京2歳Sで走って5着だったコウエイテンマも良い伸びで来ていましたね。4着だったママシェリガールもクローバー賞を勝っているので。同じ日の1レースで藤原英さんのところのシルバーステートがレコードで勝っていて、それでオープンの中京2歳Sが時計的に1.3秒遅かった訳じゃないですか。「メンツが弱かったんじゃないか?」という声もあるようですが、その後に後ろの馬が勝ち上がっているし、2着だった森厩舎さんのマテラアリオンも未勝利馬だったとは言え、ダリア賞でも3着でしたからね。
「2歳の未勝利で1分10秒前後ですものね。今年の馬場は“持ってこいかな”というイメージはありますね」
-:ただ、1200mを走るにあたっては、小倉の馬場も例年に比べると、ちょっとスタミナがいるというか、ちょっと軟らかくてクッションがありますよね?
千:そうですね。例年に比べたらそういう感じがありますね。
-:だから、京都の1200mがジャストという馬よりも、中京の1200とか1400を走れるようなスタミナが必要かと思うので、排気量的にシュウジなんかは、むしろオーバースペースですよ。
千:馬場が荒れたりとかしても関係ないと思うんでね。確かに、今回の小倉はちょっと時計が掛かっているイメージがありますものね。
-:去年だったら、未勝利から時計が速かったし、北九州記念でも速い時計が出ています。今年もベルカント自体の時計は速かったですが、それ以外のレースの時計はそんなに速くなかったので。
千:2歳の未勝利で1分10秒前後ですものね。今年の馬場は“持ってこいかな”というイメージはありますね。
当面の大目標は朝日杯FS制覇
-:まだ2戦しかしていないですが、シュウジのベスト距離はどれぐらいだと思いますか。明らかに兄のツルマルレオンとは特性が違うから、ちょっと比べられないじゃないですか?
千:やっぱり体型的に言っても、短いところの馬だとは思いますね。
-:でも、日本の短距離馬って、ツルマルレオンみたいな胴が長めの馬もいるじゃないですか。距離を走る馬でもコンパクトな馬はいますからね。一概にシュウジが、例えば1800、2000の距離が持たないとは言い切れないと思いますね。
千:でも、持ったとしても1600だと思いますけどね。
-:でも、あのスピードがあったら、多分2000を走ったら驚異的です。一番やっかいな先行馬になりますよ。ゆくゆくはNHKマイルCとかを狙うのでしょうか?
千:(厩舎が来年3月で解散なので)僕がやっているかどうか分からないです。だから、残り一戦、一戦大事に行かないと。
-:そうなると、阪神の朝日杯FSが大一番ですね。そのためにも、3勝目を重賞で飾るという?ということは、中京2歳Sが12月からこの時季に早くなったのは良かったですね。
千:この間、勝てたのは本当に大きかったですね。
-:小倉でもシュウジのスピードを活かして暴れて下さい。
千:岩田さんだし、下手なことはないと思いますけどね。馬は基本、素直なので。ちょっと立ち癖があって、僕はビビって乗っていますが(笑)。
-:パワーアップしたら、もう一段暴れ方も激しくなりそうです。
千:肩がすごいから、グァッと持っていかれますね。ただ、首が短いので、助かっていますが、あれが長かったりだとかしたら、もっと持っていかれるから。
-:何もかもがコンパクトだけど、バネもありますよね。
千:安定感がありますよ。まあ、幅があるから余計なのかもしれませんが、転びそうになる雰囲気はないんですよね。
-:これだけスピードがあっても、ただのワンペースな馬じゃないということを考えると、この先も楽しみですね。
千:阪神の1600mとか良さそうな感じがしますけどね。テンにゆったり入って、イメージ的には中京みたいな感じです。
-:そういうことを考えると、小倉2歳Sで他の馬とちょっと先行争いをして、揉まれる経験をするのも良いのかもしれませんね。
千:はい。1200を使ってダメだったら延ばせば良いだけの話ですしね。
-:これだけのスピード馬なので、楽しみにしています。
千:人間が一番不安なので、緊張し過ぎないように気をつけます。
-:ハハハ(笑)。自信を持ってください。ありがとうございます。
(取材・写真=高橋章夫 競馬ラボ特派員)
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プロフィール
【千野 智康】Tomoyasu Chino
神奈川県小田原市出身。競馬とは縁のない土地で生まれ育ち、高校時代は教師を志すが、2時間かけて通学する電車の中で見た新聞の競馬記事に興味を持ちこの世界へ。高校卒業後、社台ファームに入社、山元トレセンで勤務したあと25歳で競馬学校に合格。最初に配属されたのはイソノルーブルでオークスを勝った清水久雄厩舎で、その後、山元トレセンで知り合った、橋口弘次郎師の息子で現在は調教師に合格していた橋口慎介氏の誘いを受け、橋口弘次郎厩舎へ。厩舎生活12年目を迎え『生涯初めて重賞を意識できる馬』というシュウジで初重賞制覇を狙う。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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