大一番への前哨戦と位置づけたセントウルSは時計差なしの④着。その内容は春緒戦だった高松宮記念とは雲泥で、使いつつ成績を上げる傾向も出てきただけに、集大成となるスプリンターズSでの走りは期待せずにはいられない。かねてからスポットを当ててきた名コンビもいよいよ最終章。ストレイトガールの女房役である田中博司調教助手に、国内最終戦に向けての意気込みを聞かせてもらった。

理想的な前哨戦だったセントウルS

-:セントウルS(G2)ストレイトガール(牝6、栗東・藤原英厩舎)は他の馬から斤量も1キロ重かったですね。その辺りも④着の敗因でしょうか?

田中博司調教助手:そうですね。55キロでウリウリは54、ハクサンムーンが56でしたね。それを考えたら、牡馬の57で走った換算になりますから。でも、酷量ではないから、斤量は敗因に挙げたくないですね。それが、57を背負っていたなら、また別でしょうが、55なので、普段背負っている斤量なのでね。

-:単純にレース展開のアヤだと。

田:あとは、仕上げ的にスプリンターズSが中2週で控えているというのもあったので、前哨戦として見れば良しじゃないかとは思いましたね。

-:使ってからの体つきを見ると……。

田:明らかに変わっていますからね。走る前は「トモの肉つきが……」と思っていたところが、使って水曜日辺りになったら、パンと張り出してきて、逆に早いかというくらいの感触を得ました。それでも、そのままでグッと来て現在に至っているので、スプリンターズSに向けて本当に思惑通りに来ています。今回はセントウルSを含めての2戦で、という考えで来ていたので、それを考えると精神的、肉体的に良い刺激を与えられて、すごく次に繋がったレースだったと思いますね。最高といえる雰囲気で来ていますので、あとは本番で結果が出てくれたら。

田中博司助手

愛馬の上昇ムードに手応えを感じる田中博司助手


-:3日間開催で調教パターンも変則になっている中、今週はどういう調整だったか教えていただけますか?

田:明日(9/25)が1週前追い切りの予定で、坂路でやります。レースが終わった週は馬体回復と歩様、体調のチェックに当てて、異常もなく良い雰囲気で先週まで来られて、今週は火曜日が全休の水曜からで、金曜日に追い切るということもあったので、水曜日はじっくりBコースと坂路併用で、木曜日は普段の追い切り前日のメニューでした。CWで半分乗ってから、坂路で55~56を乗って、という形で、1週前追い切りに備えましたね。2週前に使っていますので、坂路で54~55くらいの予定で考えているのですが、競馬の週はいつも通りCWコースの単走で考えています。

-:セントウルSのレースで、アンカツさんなどは「ちょっとマイラー色が強くなってきているんじゃないか」という懸念をされていましたが、博司さんから見たらどうですか?

田:1回使わせてもらって、キャンターに行っている時の前向きさ、坂路で下ろした時に前に行こうとする前進気勢が明らかに変わっているので。とはいえ、普段ピリピリしているかと言うと、坂路の頂上から逍遥馬道へ歩いていく時は暴れたりする馬なのですが、ある程度ドッシリ構えられているので。今までよりもマイラー色が出て来たというより、前回使って前向きさが出て来た雰囲気を見ていると、中2週で競馬に行くことによって、より前向きさ、やる気を出して走るのではないかという予測は立てていますね。パドックもいつもは2人で曳かないと曳けないくらいの馬なのですが、セントウルSでは1人で曳ける感覚があったので、そこは仕上がり的にも気持ち的にも……。

田中博司助手

-:逆に言ったら、もうちょっと追い詰められる余地を残していたと。

田:セントウルSでのパドックは落ち着き過ぎていたし、いつもの感じではなかったですね。体力的な息であったり、そういうところはできていたのでしょうが、精神面はいつもより少し足らなかったのかな、と思っています。

-:それは、高松宮記念からヴィクトリアマイルの仕上げで、かなり追い詰めたことが結果として出たようなので、今回も今週、来週でよりスイッチを入れていくということですね。

田:前回のセントウルSを使ったことによって、精神的にかなり準備ができていると思います。意識してそんなに追い詰めなくとも、自然体でいつもの感覚で良さそうな雰囲気なので、メニュー的にはいつもの競馬のつもりですよ。

中山の戸崎騎手も大きなポイント

-:追い切りには、戸崎騎手が来てくれるのですか?

田:いや、本人も2回乗っていて、ある程度馬の感覚も分かってくれているし、今週も来週もこちらでやる予定です。

-:何とか2つ目のG1タイトルを。

田:今までにないプロセスでレースを使うので、頑張ってもう1個獲れたら。

-:牡馬混合プラス香港からリッチタペストリーが来ますね。

田:未知な馬ですよね。今まで日本で走ったこともないし、ましてや香港から来るというのは、不気味は不気味ですが、こちらはこちらで相手云々より、自分のレースをさせてあげることが先決かなと。綺麗な良馬場で、この馬の仕上げがちゃんとできていれば、ある程度の結果は付いてくると思うし、その後は展開であったり、枠順であったり、不可抗力が含まれてくるので、運も必要ですが、恥ずかしいレースはしないはずなので。


「かなりプラスアルファだと思うし、自信を持って、勝つ馬のポジションで勝つ馬のレースをさせてくれたら、こちらは馬だけ仕上げていれば結果はついてくるのではないかと思っています」


-:心配なのは馬場で言うと、中山の最終週というのはどう見たら良いですか?

田:レースが上手な馬なので、みんながある程度外差しの感覚になるのであれば、そういうレースになるのだろうし、今年の結果を見ても中山で一番勝っているジョッキーだし、庭にしているところですから。個人的な感想では京都、阪神の乗り方はちょっと遠慮しているのかなというところがあるのでね。

-:そこも上積みのポイントですか?

田:かなりプラスアルファだと思うし、自信を持って、勝つ馬のポジションで勝つ馬のレースをさせてくれたら、こちらは馬だけ仕上げていれば結果はついてくるのではないかと思っています。

-:田中さんが乗っている手応えで言うと、セントウルSよりはアップしていると。

田:楽しみの方がすごく大きいですね。去年はすごく不安な面を持ちながらG1に参加していましたが、香港である程度、結果を残して帰ってきて、今年の高松宮記念、ヴィクトリアマイルに関しては、何ら不安な要素がなく、天気だけくらいの状態で2戦戦ってきて、今回は今年のG1で3戦目。G1に参加させるにあたって、仕上げる側からしたら余裕ではありませんが、不安要素なく参加できているかと。しかし、去年は人間が勝手に不安な要素を挙げて、馬は走らせてみたら、全然平気だった訳なのでね。

田中博司助手

国内では集大成になる大一番

-:同じ厩舎から、ウリウリという瞬発力のすごい馬が相手になります。

田:正直、セントウルSの仕上げでもウリウリには負けないのではないかと思っていたのに負けたので、あの馬もかなり力を付けてきているなと。1200という距離にかなり適性があるし、ましてや乗っているのが岩田騎手だし、敵にした時、一番怖いジョッキーですからね。まあ、敵と言っても同厩だし、ウリウリに負けたのなら悔しくても喜べる部分もあるしね。だから、セントウルSの時よりも、今回はウリウリも頑張ってほしい、という意識は強いですね。

-:2頭共に良い競馬を期待しています。

田:ウリウリに関しては、まだ輸送競馬や大きい舞台での経験値が、ストレイトと比べたら少ない部分がありますが、かなり力を付けてきている勢いからすれば侮れない馬ですね。今年いっぱいまでは先輩面させてもらって、来年は看板を背負ってもらって、というのがベストですね(笑)。

-:藤原厩舎と言うと、中、長距離馬の活躍が多くて、短くてもマイルぐらいだったのが、スプリンターズSに2頭も出るというのは、これも異例のことですよね。

田:初めてだし、ましてストレイトが出てくるまでは、ほとんど参加しないに等しいくらいのカテゴリーです。ウリウリも若い時は1600から2000くらいまで使われてきましたが、レース経験を積むことによって適性が短い方に出てきました。その辺は3歳の頃はどうしてもクラシックの方面を目指すのが当たり前になっているのでね。まして血統からしたらディープインパクトだし、ハナから1200、1400を目指すなんてことは、オーナーもやっぱり期待していないだろうし。取りあえず無事に、ウリウリも5歳まで来られているということは良かったことだし、今まで経験していなかった部分を見出すことのできた事実は、無事であったからこそだから、その辺は厩舎の力も評価されて良いところだと思いますよね。


「この後はおそらく香港なので、国内は最後だろうし、最近はファンもすごい多くなってきていますしね。日本では今年最後のレースなので、応援してくれる人もいるでしょうしね」


-:これまでほとんど1頭持ちで、田中さんはストレイトに付きっきりだった訳ですが、牡馬混合のG1でも?

田:今年の春はヴィクトリアマイルを勝たせてもらったし、ずっと1200で今の位置まで来させてもらっていたし、その1200というところでも獲れたら、達成感というか、信じてきて良かったというのが余計に出てくるだろうしね。今回は違うローテーションで来ているので、どういう結果が出るか、すごく楽しみです。

-:それが、良い方に出てくれたら良いですね。

田:良い方に出てくれると信じています。この後はおそらく香港なので、国内は最後だろうし、最近はファンもすごい多くなってきていますしね。日本では今年最後のレースなので、応援してくれる人もいるでしょうしね。

-:来年はお母さんになりますね。

田:無事に牧場へ帰してあげないといけないということも、自分らに課せられている使命でもあります。この後も無事に海外へ行って、帰ってきて、まだまだこの馬と付き合えるので。すごく勉強させてもらっている馬だし、あと2戦を一緒に戦って、無事に帰してあげたいなと。ヴィクトリアマイルの時も泣けましたが、今回も泣くのかどうか味わってみないと分からないのですが、泣くのかな……。そういう嬉し泣きというのは何回あっても良いかと思います。

-:今回もレース後に勝って泣いて下さい。

田:はい。勝って泣きたいです、フフフ(笑)。頑張りますので、応援よろしくお願いします。

-:ありがとうございました。


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