大目標の一戦へ。今年3月に前厩舎から引き継ぐ形でケイティブレイブを管理することになった杉山晴紀調教師。前走のJBCクラシックを制し、厩舎としても初のBIGタイトルを手にしたが、約9ヶ月間での管理を通しての経験と手応えとは。さらにその先に見据える大きな夢もあるという。前走以上のメンバーが集まった今回に懸ける思いに迫った。

帝王賞、日テレ盃、JBCとみせた進化の形

-:チャンピオンズカップ(G1)を予定しているケイティブレイブ(牡5、栗東・杉山厩舎)ですが、まずは前走でJBCクラシックを優勝。おめでとうございました!

杉山晴紀調教師:ありがとうございます。

-:これが厩舎にとっては初めてのG1(Jpn1)タイトルとなります。レースを終えられての先生の心境はいかがでしたか?

杉:おかげ様でこういう機会というか、本当に良い馬を預けていただいて、ありがたいですし、嬉しいですし…ホッとしているというところもあります。本当に良かったと思います。馬は頑丈といいますか、タフな馬ですし、元気一杯です。

ケイティブレイブ

▲JBCを制し、ジョッキーとガッチリ握手の杉山師(左)

-:JBCクラシック後、競馬場で先生の様子は拝見しましたが、初めてのビッグタイトルと思えないほど冷静でしたね。

杉:もちろん嬉しいことは嬉しいですが、あの馬だけを管理しているわけではないですからね。どんな馬でも結果を出さなくてはいけないですし、他の馬のことも心にはありますから。

-:そういった心境だったのですね。先生には帝王賞の前にお話を伺っていたのですが、帝王賞(2着)を終えられての感触から振り返っていただきたいのですが。

杉:内容的にはすごく良い立ち回りをしてくれました。力を十二分に出し切れた内容だったので、着差が着差だっただけに悔しくないと言ったら嘘になりますけど、全力を尽くしての結果ですので、納得いくところはありました。

-:向正面では大半が内を空けて通る中で、勝ち馬(ゴールドドリーム)が上手いこと抜けてしまったかなと。

杉:多少、内側が深いという馬場状態でもあったので、そこを勝ち馬が内に入って、という形でしたね。

-:馬場差もあるので未知数ですが、距離ロスも考えれば、惜しい着差であったとは思うのですが、その後の進め方としては、一旦放牧に出されて、韓国遠征という話もありましたね。

杉:そうですね。もし招待されれば行きたいとはオーナーとも話をしていていました。馬の実績からも、選ばれる可能性が高いんじゃないかという見立てだったので、それに合わせてトレセンには帰厩させましたけどね。

「前の厩舎から引継ぎをさせていただいて、福永(祐一)さんも『先々の成長次第ではドバイに挑めるくらいの可能性を秘めている馬だと思う』という話もしていましたし、オーナーも『(今後)そういうチャンスのある馬に巡り合うことはなかなかないだろうから、ドバイに行けたら良いね』という話はしていまして、夢として考えていました」


-:万が一、韓国に行っていた場合、勝ち負けになったのかなという気はするのですが…。もし行っていた場合というのは、JBCクラシックはどうなっていたか。今ではそう思えますね。

杉:行って帰ってきてのコンディションがどうかというところはわかりかねるのですが、本来、韓国を使ってJBCクラシックというのが、もともとの予定でした。ただし、韓国というのが、メンバーや賞金の高さで使いに行くという目的ではなかったので。あくまで来年のドバイを見据えて、一通り、海外遠征の経験を積むという目的の中で、選択肢の一つでした。結果的には招待されなかったというところで白紙にして、昨年と同じローテーションで行きましょうか、ということになりましたね。

-:ドバイという大きなプランもあったわけですね。

杉:そうですね。前の(目野哲也)厩舎から引継ぎをさせていただいて、福永(祐一)さんも「先々の成長次第ではドバイに挑めるくらいの可能性を秘めている馬だと思う」という話もしていましたし、オーナーも「(今後)そういうチャンスのある馬に巡り合うことはなかなかないだろうから、ドバイに行けたら良いね」という話はしていまして、夢として考えていました。もちろん今回の結果などもありますし、あくまで構想ですが…。

-:担当の房野助手にも伺うと、日本テレビ盃が終わって引き上げてきた時に、ジョッキーも「これならドバイで…」といったことをチラッと言われていたそうですね。やっぱりジョッキーにとっても、それだけ視野に入れているというか、手応えを感じているということですね。

杉:日本テレビ盃は行く馬がいたので、無理せずその後ろからという形で行きましたけど、内容的には注文をつけることがないというか、完勝だったとは思いますね。この秋の2戦を終えて、少し現実的なところに来ているのかな、という感触ではありますけどね。もちろん目の前のレースがありますからね。そこを考えています。

ケイティブレイブ

▲昨年のリベンジを果たすことになった日テレ盃

-:去年の日本テレビ盃(3着)では敗れているレースでしたし、当時の内容とも比べると、変化というのは如実にあったのかと思います。

杉:そうですね。もともと力のある馬ですし、その時々の相手関係もあったでしょうし、そこは一概には言い切れないですけど…。一つ言えるのは、去年より今年の方が馬の成長といいますか、さらに力を付けてきているんじゃないかとは思いますけどね。

-:JBCクラシックにしても、ああいう競馬もある程度、想定できるところはありましたが、それにしても中団から差すという。今までにない競馬でしたからね。

杉:ずっと乗っていますから、どんな競馬でも対応できるという、ジョッキー自身にそういう馬に対しての信頼がすごく感じられた競馬だったと思いますけどね。

-:まだ1年も経っていないですけど、改めて成長したポイントというか、変化したポイントはどんなところでしょうか?

杉:調教では、そこまで大きな変化が短期間であったかどうかとはなかなか分かり辛いのですけど、やっぱり競馬がすごく安定してきています。そういった意味で、競馬を使った後の疲労度も段々少なくなってきているのかなと思いますね。

-:房野さんに伺うと、端的にいえば「トモのトレーニングの強化に重点を置いている」ということですね。

杉:調教で目的意識を持ってやっていることが少しずつ実になっているということです。繰り返しになりますが、目に見えたハッキリしたものはないですけど、今回のJBCクラシック前の立ち写真を見ると、今まではちょっとボテッと映っていた馬がすごく引き締まったというか、シャープに映りましたね。そういった意味では、今回はだいぶ馬が変わったと見てとれましたね。

ケイティブレイブ

-:前の厩舎にいた時も、僕はお話を伺わせてもらっていたんですけど、その当時と比べてると、精神的にも落ち着いてきたのか、昔はけっこうキツい性格をしていたのかなと。

杉:いやあ…それも、今でもそうなんですよね。別に大人しくはなっていないですね。今日(11月20日)の調教でもけっこう激しいところを見せていましたし。

-:それは火曜日の全休明けで。

杉:気温も低くなって、フレッシュな感じもあると思いますし、火曜だからというのもあると思いますが、そんなに気を抜けるような馬では今でもないですね。

-:福永さんも前回のレース後に「個性的なところを持っている馬だ」と言っていましたが、なかなかそう感じているファンは少ないと思うんですよね。

杉:そうですね。けっこう自分を持っているというか、我が強いタイプではあるでしょうね。

-:我の強さというのが、もちろん精神面もそうでしょうけど、肉体面もシッカリ調教でコントロールしてきて、今の形になりつつあるということですね。

杉:そうですね。普段の変化というよりは、競馬の中身にすごく成長が見てとれるのではないか、という感触がありますけどね。

南部杯組との初対戦・再戦へ向けて

-:そして、チャンピオンズC(G1)ですが、次回は南部杯組も加わってきて、なかなか強い相手が揃うと思います。

杉:そうですね。南部杯の2頭(ルヴァンスレーヴとゴールドドリーム)というのが世間的にも評価は1番、2番だと思います。JBCクラシックでああいう勝ち方をして挑戦することで、「3強」と言われることもなくはないのですが、大井の得意の馬場でゴールドドリームにやられていますから。やっぱりあの2頭に対して、中央のレースでどう立ち向かうか、個人的にはそう思っています。もちろん出るからには、あの2頭やその他のライバルを倒して勝つという気持ちを持ってはいますけど、厩舎としてはそう出来るようなコンディションに持っていくというところだけを考えて、これから先もシッカリやっていきたいと思いますけどね。

-:チャンピオンズカップ、JRAのG1を勝つことは早くから目標にされてきたと思います。

杉:そうですね。とりあえず秋はチャンピオンズCが大一番ですので、その後については、またその時にオーナーと話をして、具体的に決めようと思っていますけどね。

-:この馬にとっての中京1800mという条件はどう感じられますか。前年は4着でした。

杉:1800mがどうか、というところもあるのですが、JBCクラシックのようなレースが出来れば、その時々の展開で、好位からポジションを取ることも出来ると思います。心配はないといいますか、問題はないと思いますね。

-:どちらかと言えば、地方の砂が良いのでしょうか。今回もそんな声が挙がりそうな気はしています。僕は昨年の平安Sでけっこうなペースを粘っているあたり、問題ないと思っていました。

杉:地方がいいのかとは思っていたんですけど、京都のああいう乾いたダートもこなせたので、今回も心配もしていないですけどね。ただ、馬場の質というよりも、何が違うと言うと、地方の交流重賞だと、どうしても「限られた争い」になるわけで。やっぱり中央のレースになると、そういった展開ではないことが多くて、その違いが、もしかしたら大きいのかもしれないですね。

ケイティブレイブ

-:福永さんも「あまり馬群の中に入ると、ちょっと走る気というか、嫌気が差すことがある」と言っていたのが、やっぱり中央での課題になるのかという感じがしました。前回はちょっと下げているのか、スペースのあるところに出していましたからね。それに、そうしたコントロールもつくようになってきましたね。

杉:そういうところも含めて、ジョッキーが分かっていますので、心配もしていないですけどね。

-:ただ、最内じゃない方が良いですか。

杉:JBCクラシックのレース前、追い切りの時に福永さんが「出来たら、真ん中より外くらいの方が良い」ということで、それで「ちょうど8番枠で良いところやな」と言っていたことを覚えているんですけどね。それと同じような感じで、外目くらいが引ければ。でも、今の馬の雰囲気だったら、内を引いても出たなりで、大きなマイナスにはならないんじゃないかなと思うんですけどね。

-:もちろん来年もありますけど、徐々にやってきたことが今、実になっているという段階ではありますよね。

杉:そうですね。自分たちで言うのもちょっとおこがましいと思うのですが、やはり引き継いだ段階ではすでにG1を勝っている馬ですから、転厩してさらに馬が強くなったという評価をいただくには、中央で大きいレースを勝つことが一番だと思っていました。JBCクラシックが今年に限って京都、中央開催だったということですが、ああいう京都の舞台で勝てたということは、転厩してやってきたことが一つの結果として出せたという思いはあります。今回はさらに強い相手になるので、また引き続き頑張りたいと思いますね。

「それもスリーロールスの時の経験というのもあるかもしれません。あの時も厩舎の仕事も重役を任せられている立場でしたし。ましてや、今は全頭の管理者なので、調教師の立場なら、なおさらだと思いますね」


-:楽しみなレースですが、勝てば海外もみえてきそうで、楽しみが膨らみますね。

杉:そうですね。でも、僕自身の考えとして、走る馬だけずっと自分が見たり、ああせい、こうせいと言っているとスタッフや関係者の方々に対してあまり良い影響がないと思っています。あくまで厩舎全体の管理者ですから。もちろんこうして取り上げていただけることは光栄ですし、取材される機会も増えますが、仕事としては、むしろ逆に他の馬の方をしっかり見るくらいの意識でいます。ケイティブレイブに関しては担当者自身もいろいろ考えてくれていますからね。

-:3年目でこうして大きなタイトルを獲られても、謙虚な姿勢は変わらないといいますか、素晴らしいことなのかなと感じます。

杉:それもスリーロールス(2009年の菊花賞馬で当時、調教助手だった)の時の経験というのもあるかもしれません。あの時も厩舎の仕事も重役を任せられている立場でしたし。ましてや、今は全頭の管理者なので、調教師の立場なら、なおさらだと思いますね。活躍馬だけの管理者にならないようにね。

-:ありがとうございます。最後に、先生のファンも最近増えているようですね…。

杉:そうですかね。恥ずかしいですけど(笑)、そうやって応援していただくということはありがたいことですから。さらに応援してもらえるように頑張っていきたいと思います。

-:今回も健闘をお祈りします。ありがとうございました!