平成最後の有馬記念で奇跡を起こすか。ジャパンカップでは超抜のレコードを演出、最後は2着に屈してしまったものの、負けて強しの競馬をみせたキセキ。常識的に考えると、毎日王冠から始動して秋4戦目。前走の反動と状態面が気になるところだが、その名の通り、ここで勝てば異例の勝利となるだろう。この秋、ロングインタビューに答え続けている担当の清山助手が今年最後の一戦に懸ける思い、勝利の可能性を明かしてくれた。

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リズムを大事に挑んだジャパンカップ

-:有馬記念(G1)に挑むキセキ(牡4、栗東・中竹厩舎)ですが、よろしくお願いします。ジャパンCは2着に敗れてしまったのですが、ワールドレコードでしたね。清山さんの思い描いていたレースにはなったものの、結果は1着じゃなかったという感じではなかったのでしょうか。

清山宏明調教助手:ジャパンCに出走するにあたってのコンディションというのは、本当にこちらが思っていたよりも手応えを感じられる状況でした。結果は確かに2着でしたけど、レース内容は勝ちに等しいという風に今は捉えているんですけどね。

-:パドックで川田(将雅)ジョッキーが乗られて、地下馬道を潜って、返し馬に行くまでの2人の会話というのは何かありましたか。

清:あれだけのジョッキーで経験も豊富ですし、天皇賞(秋)で乗ってもらった後、ジャパンCまでまた新鮮な感覚の状態で跨ってもらえましたね。「天皇賞よりも伝わってくる雰囲気が良い」ということを歩きながら会話して、後は「こういう状態まで来てくれたことが嬉しい」という話もしました。こちらもジョッキーに楽しんで乗ってもらいたいというか、自信を持ってレースに向かって欲しいというのは、僕の中のテーマとしてずっとあったので、そう将雅に喜んでもらえるというのは嬉しかったですね。

それはキセキがそういう状態になってくれたから、そういうことが感じられるんですけど、レースの組み立てもイメージもしっかり出来て「リズムを大事にしながら行った方が良いよね」という話をしながら、良い形で自信を持ってバトンを渡せました。

清山宏明調教助手

▲天皇賞、JC前に続いてインタビューに答えてくれた
キセキを担当する清山調教助手

-:そういう意味では、スタートしてからのアーモンドアイの位置取りが思ったよりも近いなという感じでしたか。

清:逆の立場で言えば、やっぱり目標にしたい相手は目の前にいた方がイメージしやすかったと思います。アーモンドアイに乗っているジョッキー(クリストフ・ルメール)からすると、やはり自分がそう思っている形になったというところは、余計にレースは進めやすかったのかなと思いますけど、キセキに乗っていた将雅のジョッキー心理で言えば、スタートをする前、「自信を持って乗ってきます」とゲート裏でも言っていたくらいなので、そこは自分の中でもキセキの後ろでマークしてくるだろうというのは、多分イメージの中でもあったと思うので、「やっぱりな」という感じでしたね。あとはキセキと自分の中での戦いという形でレースを進めたと思うんですけどね。

-:そういう意味で言えば、ファンの支持で言うとキセキは4番人気だった訳ですけど、シュヴァルグランとかスワーヴリチャードという牡馬の強豪がいた中で、ルメールジョッキーがキセキをマークできたということは、ルメールさんからしてもキセキを単騎で行かせるとまずい、という思いがあったからこそでしょうね。

清:特にその前の天皇賞(秋)で、騎乗馬は違うとは言え、やはりキセキの走りというのを直に見ていますし、直線の長い東京であっても、そういうところを直に肌で感じていたので、余計にそういうイメージというのはあったのではないですかね。

-:キセキの出脚なら、枠はあまり関係なく主導権を取りにいくというレースになりそうなんですけど、今回もそういうイメージですか。

清:川田ジョッキーが積極的なレースをやってくれているところで、僕らが言うよりも、キセキと川田ジョッキーが生み出すリズムがそういう風に自然となっているんでしょうし、勝ててはいないにしても、そういう形がファンを魅了する結果になっているので、トリッキーなコースですけどね。

-:あまり最初の4コーナーで観客が湧かない方が…。

清:そうですね。

キセキ

▲ジャパンカップのゴール前
レコードを演出するも最後は2着に屈した

獣医も驚き JC激走のダメージはなし

-:今回の舞台は中山に替わって、ルメールジョッキーの乗り馬はまた違うというか、戻るというか、キセキの怖さを知っている人がライバルになるということですが、G1・3戦目による疲れというのはいかがですか。

清:そういう意見はやっぱり色々なところでも耳にしますし、実際にレースの走破時計であったり、レース内容であったり…常識的に考えると、相当なダメージがあるだろうということは推察出来ますからね。レース後、休養が明けた次の日に、普段診てもらっている獣医の先生にどういうダメージがあるか、色々なところをこまめにチェックしてもらったんですけど、天皇賞(秋)のレースの後よりも、今回(ジャパンC)のレース後の方が「本当にレースをしてきたのか信じられないくらいだ」という言葉を何回も言われたくらいでしたね。

ただ、やっぱり気持ちの上では、レースが終わってすぐだったので、張りつめている緊張感と言いますか、その気持ちがまだオフになっていない状況だったと思うので、やはりそこから体と気持ちがオフになる状況と言いますか、数日間しっかりと様子を診ないと、一概に安心しきってしまうというのは早計な部分がありますから。

キセキ

-:そのキセキのジャパンCでの張りつめた気持ちが治まったのは、大体どれくらいでしたか。

清:やっぱり1週間ですかね。週末にちょっと軽く角馬場を使って運動をして乗り始めて、それで歩様のチェックであったり、体の硬さであったりというところを乗って確かめました。その状況の中でも普段のメンタル面の緊張感の緩和であったり、逆にそういう気持ちが治まらないという状況であったりするのが、次に進む上で、もしマイナスになるようであれば、そこは早い段階でストップしなきゃいけませんからね。そこはシビアに診させてもらったのですが、こちらが思うよりも普段と変わらない、落ち着いた状況の雰囲気であったり、また歩様にも全く心配するところは感じられなかったです。どちらかと言うと、早く走りたくてウズウズしているような雰囲気も見せたりしていたので。

-:逆に、心配していた担当の清山さんからしたら…。

清:本当に嬉しい誤算ですよね。もしかしたら、本当に自信を持ってゴーサインを出せるんじゃないか、と感じていたんですけど、週明けに坂路に入れるところからの態勢も冷静に診ないといけないというところもあったので、そういう判断が、その時は良くても、まだちょっと鵜呑みには出来ない状況を持ちながら診ていたんですけどね。厩舎のスタッフにも色々なところでコメントしてもらっているように、厳重に、と言いますか、何度も慎重にクロスチェックを入れてもらったりしていたんですけどね。

雌伏の時を乗り越え… ファンの声援に応えるだけの状態に
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