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北峯幸司厩務員

北峯幸司厩務員(栗東・佐々木晶三厩舎)


並み居るマイルの強豪馬が集結したマイラーズCでも、注目を集めたショウリュウムーン。結果こそ、勝ち馬のペースに惑わされる形で大敗してしまったが、前々走で京都牝馬Sを快勝。
昨年もチューリップ賞でアパパネを破るなど、能力の高さは疑いようはない。ひと叩きされて、春の大目標・ヴィクトリアマイルに挑む同馬の近況を担当の北峯幸司厩務員に伺った。


-:期待された前走のマイラーズカップは、14着と負けてしまいましたね。

北:どうもシルポートが逃げると結果が出ませんね(笑)。スタートでちょっと後手を踏んでしまい、前に押しあげられず馬がリズムを崩してしまいました。牡馬混合戦に入って、あの内容ではシルポートの思うままですよね。
浜中騎手も『最後は苦しがって内にモタれていた』と言っていましたし、良い状態に仕上がったように見えていても、中身は仕上がり途上だったのかもしれませんからね。


-:レース後の疲れはどうでしたか。

北:やっぱり少し疲れは出ましたね。レースが終わって上がり運動をしている時に、少し歩様が乱れたんです。正直、あの瞬間は『大丈夫か?』と心配しましたが、獣医さんに診てもらったら肩の筋肉痛でした。
肩の筋肉をほぐすために電気を当てたら、すぐに痛みもなくなって、普通に歩けるようになりました。あの一瞬は冷っとしましたが、1日で良くなったのでホッとしています。雨で重い馬場でしたから、馬には負担の大きいレースだったんでしょう。 このあたりが休み明けの影響でしょうね。いくら調教して走れる状態になっていても、実戦では比べ物にならないくらい馬は走ってしまう。使った後のケアもしっかりしていますから、状態に関しては何も心配していません。


-:前回と比べて毛艶が格段に良くなっていますね。

北:そうでしょう!これでレース当日にはきっちり仕上がりますよ。一週前の動きも坂路で51.5秒、終いも12.2秒で満足しています。馬場のきれいな時間に走ったので時計は出ましたが、息遣いが良くなっています。体重も予定通りきていますので、牝馬同士なら結構やれると思いますよ。



-:現在の馬体重はどのくらいでしょうか?(5/4日時点)

北:今で470キロくらいです。輸送して8キロくらい減る計算をしています。オークスで府中に行った時は、予想以上に減ってしまいましたが、当時よりも馬が精神的に強くなっていますから、10キロ以上減る事はないと思いますよ。

-:休み明けの前回と今回で、変わってきた所はありますか。

北:飼い葉をしっかり食べるようになりました。マイラーズCの前に休養から帰ってきて、しばらく飼い食いが良くなかったんです。毛艶も一息だったでしょう?それでもレース1週前くらいから、ようやく食べるようになったんです。使った後は、すぐにバリバリ食べていますから、体調が良くなった証拠でしょうね。

-:北峯さんは飼い葉にどんな工夫をしていますか。

北:難しい質問ですね。ショウリュウムーンの体はスレンダー系なので、体重だけでなく、自分で体型を見て調節しています。あまり高カロリーの濃いエサにせず、ショウリュウムーンが食べたくなるような飼い葉を与えています。例えば、追い切った後は少し軽いエサにする、とか感覚で調整していますから、パターンやマニュアルはありません。先輩の厩務員さんに相談したり、自分で考えたりして今の飼い葉になりました。
見た目はキングカメハメハ産駒っぽくない馬だけれど、中身はしっかりしている。見た目が良いのと、競馬で走るのとは必ずしも同じではないですから、馬が一番走りやすい体になれば良いと思っています。毎日、体を見て細くなり過ぎないように気を遣っています。


-:ヴィクトリアマイルにはショウリュウムーン以外にも、キンカメ産駒が出てきますよね。

北:アパパネにレディアルバローザ、エーシンリターンズ(カウアイレーンやエオリアンハープなど)もキンカメ産駒ですね。それぞれ違う個性があって面白いですよ。特にアパパネは一回使って良くなってくるでしょうから、手強い相手になりますね。



-:強敵相手に、どんな競馬になると思いますか。

北:ショウリュウムーンはまだ成長の余地を残していると思っています。まだ完全に体が出来ていない所があるんです。だからレースでもコーナーで追い出すと、最後まで伸び切れず、内にモタれたり、苦しがったりしてしまう。その点、府中なら直線が長いのでコーナーでは追い出さないでしょう。
それと差し、追い込み系ですが、大外をブン回すようなパワーも現時点ではありません。ギリギリまで追い出しを我慢して、なるべく内々をロスなく差す形が理想です…。だから、内枠が欲しいですね。この馬が勝つ時って、追い出してから横にピッタリ馬がいるんです。馬群の中から弾ける馬なので、あえて狭い所を突く競馬をして欲しいと思っています。その辺は、乗っている浜中騎手も良くわかっていますから、こちらも安心しています。


-:北峯さんといえば、真っ赤なスーツを着る厩務員として有名ですが、今回も真っ赤なスーツでパドックに登場するんですか。

北:もちろん赤ですよ!ちゃんとお祓いをして、大レースに備えます。神頼みではないですけど、僕は勝負に行く時は気合いを入れて行くんです。タップダンスシチーを担当していた中原さん(現在はアルマリンピアを担当)は気合いを表に出さず、フラッと競馬場に行ってジャパンカップを勝って帰ってくるような凄い人です。僕はまだ、あそこまで冷静にはなれません。

-:北峯さんはご家族にも「勝つ!」と断言して競馬に行くそうですね。

北:中学生になる息子に言われましたよ『お父さんはいっつも勝つって出て行くけど、その自信はどこからくるの?』って。だから『じゃあ、お前は陸上やってるけど、走る前から勝てないって思って走るんか?』そう聞いたら、息子は『勝つと思って走る』って言うんです。勝負の世界で生きる男は『勝つ!』って思う気持ちが大事なんや。息子にはそう話しています。

-:人馬ともに気合いの入ったショウリュウムーンに期待しますね。

北:周りには『お前、気合い入り過ぎやぞ!』って言われています(笑)。ショウリュウムーンはカメラが大好きで、撮られるのが好きな馬です。パドックでも写真を沢山撮られたら、上機嫌で走れるかもしれません。まだまだ成長していく馬なので、これからもショウリュウムーンの応援をよろしくお願いします。


【北峯 幸司】 Kouji Kitamine

現在は栗東の佐々木晶三厩舎でショウリュウムーンの育成を担当。パドックで上下真っ赤なセットアップのスーツを着用していることでも注目を浴びている。