10年ぶりに中央で勝ち星を挙げた若き名手
2011/9/22(木)
吉原寛人騎手
-:8月27日の新潟競馬場でJRA通算2勝目を挙げましたね。おめでとうございます。
吉:ありがとうございます。
-:JRA勝利はなんと10年ぶりですね。
吉:そうですね。10年は本当に長かったです。JRAを主体で見るとこの成績は全然話にはならないですけれど、この10年間に培ってきた騎乗技術や金沢のリーディングに立っていること、地方競馬でこれまでやってきたことは間違ってはいなかったと今は思います。
-:吉原騎手のJRA初勝利といえばあのトゥインチアズ。金沢から京都に遠征してもみじSを3馬身差で逃げ切ったのは、今でも強く印象に残っています。当時はいきなりJRAで勝てて天狗になったりしましたか?
吉:全然ないですよ。4月に金沢でデビューして、その年の10月にJRAで勝利ですからね。吉原という名前ばかり先行してしまい、何で勝てたのかもずっと疑問に思っていました。当時は自分でも恥ずかしい乗り方だと思っていましたし、いつまでたっても自信がつきませんでした。
-:今回はJRAでの騎乗も久しぶりでしたね。
吉:2年ぶりになります。一時期は自分もJRAでたくさん乗りたいと思っていて、地元の馬主さんに協力していただいてJRAに乗りに行っては栗東の森先生などに多くのチャンスをいただいていました。ところが、時代の流れで金沢の馬主さんにも余裕が無くなってしまい、なかなかJRAに使いに行く馬がいなくなってしまいました。厩舎の事情も良くなくて、最近は厩務員さんが5~7頭持ちというのが普通になっており、ひとりJRA遠征のために欠けてしまうと厩舎作業が回らなくなってしまうので、それも積極的に遠征にいけない要因になっています。だから、今できる範囲で精一杯やっていこうと目標を切り替えて頑張ってきました。
-:JRA2勝目は3歳未勝利戦のノアノアでしたが10年ぶりの勝利の気分はいかがでしたか?
吉:馬主が外人さんで面識はなかったのですが、ウィナーズサークルでとても喜んでいただいたので嬉しかったですね。2006年に森先生の紹介でオーストラリアの繁美調教師の元で修業したのですが、ノアノアの馬主さんが繁美さんと親しいらしくて、後日、繁美さんからもお祝いの連絡をいただき、またオーストラリアでも乗ってほしいと言われました。ノアノアの調教師である牧浦先生は森厩舎の助手時代にオーストラリアで一緒に修業した間柄ですので、人の繋がりで挙げた勝利になりました。
-:レース内容もとても素晴らしい騎乗でしたね。
吉:それは、今年の冬に南関東で短期騎乗した経験がとても大きかったと思います。南関東で多頭数の競馬を経験したことにより、JRAでも臆することなく騎乗できるようになりました。それから、ペース配分がわかるようになったのが大きいです。金沢でしか乗ってないと、JRAのレースはどれも速くて戸惑いがありました。でも、南関東の流れを経験したことにより、速い流れはもとより、クラスによってペースの幅がどれくらいあるかとか、金沢では知り得ないことをたくさん習得できました。ノアノアのレースはいかにも南関東みたいな乗り方で勝つことができ、短期所属の成果ですね。
-:デビュー当初は自信が無かったそうですが、今は自信が窺えますね。
吉:2005年に金沢のリーディングになってそれで満足するのではなく、さらに上を目指す騎乗をずっと心がけてきました。リーディングになったからこそ出来たというのもあるのですが、良い馬に乗ってただ勝つだけではなく、馬の持ち味を考えてどういうレースができるかとか、また違ったレースはできないかとか、振り幅を研究しながら乗ってきました。目の前のレースを勝つことだけではなく、こういうレースをすれば次はもっと強くなるとか、いろいろ試しているうちに自分の技術も身に付いてきたなという実感があります。騎手として、今が一番脂の乗っている時ですね。だから、今こそ大きなチャンスがどんどん欲しいという気持ちです。
-:チャンスといえば、最近は南関東の重賞にたびたび呼ばれて乗りに行かれていますし、短期所属は大きな足掛かりとなりましたね。実際に南関東に所属してどうでしたか?
吉:行く前は、南関東って乗り役のみんなとか怖いイメージがあって、よそ者には厳しいんじゃないかと不安も多かったのですが、慣れちゃうと何ともなく、みんなにとても良くしてもらっています。最初はレース自体が難しくて、金沢みたいに思い通りにならないのが驚きでした。頭数が多いし、騎手も上手い人ばかりで、レースに多様性があるから勝つにも要因がいろいろあって、それを研究するのにのめり込みましたね。多頭数の捌きかたや、自分から他の騎手に乗り替わった馬をどう走らせているかとか、上手い騎手の乗り方が勉強になりました。クラスごとのペースも体で覚えることができ、どの位置でどう脚を使わせて、どう仕掛ければ勝てるとかもわかるようになりました。短期の間に数も乗せてもらえ、いろんなことをやらせてもらえて感謝しています。おかげで、もう恐いものはないので、これからの騎手人生はおもいっきりやるだけです。
-:来年も大井競馬場での短期所属が決まっていますね。
吉:2年目とはいえ簡単にはいかないと思いますが活躍したいですね。数字にはこだわりませんが、今年学んだことを生かしていきたいです。
-:南関東の重賞も勝ちたいんじゃないですか?
吉:ぜひ重賞で結果を出したいですね。重賞はただ上手いだけではなく、ワンチャンスをものにできる強運を持っていなければ勝てません。だから、そういうチャンスにしっかり結果を残せる騎手になりたいです。今はいつそのチャンスが訪れても発揮できるよう準備は怠らずやっています。
-:金沢の大一番、白山大賞典(10月4日)も近づいてきていますね。
吉:昨年2着に入ったジャングルスマイルに今年も騎乗します。今は金沢を背負っている身なので、この馬でぜひ盛り上げられたらなと思います。
-:ジャングルスマイルの状態はどうですか?
吉:昨年の白山大賞典で2着に入った時は、それまで手応えでグッとくるものが無くて、正直グレードでは足りないと思っていたので、2着でも悔しさはありませんでした。今年もジャングルスマイルは白山大賞典を目標にこれまでやってきていて、去年に比べたらだいぶ力を付けてきていて、これならグレードも目標にできるなと感じています。
-:前走のオータムスプリントカップでまさかの敗退を喫しましたが・・・
吉:レース間隔がなかったのですが、先生の判断で白山大賞典の叩き台として使いました。あまり仕上げずレースで気合い入れれば勝てる相手だろうと高をくくっていましたが、甘い考えでした。あくまで叩きですので、負けたことよりも本番でどう出るかですね。今回使った答えは白山大賞典の結果次第でしょう。
-:登録馬も発表になり、相手関係も見えてきましたね。
吉:JRAからの出走馬が昨年くらいのレベルならジャングルスマイルでもと思っていたのですが、今年はかなりの強敵が揃いましたね。勝つのは難しいかもしれませんが、金沢競馬に多くの人が注目していただければ嬉しく思います。
-:JRAの強敵相手に名勝負を期待しています。
吉:頑張ります。
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■主な表彰 |
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デビューイヤーに95勝、JRAでも勝ち星を挙げるなど、輝かしい騎手デビューを果たすと、翌年には金沢競馬史上最速で地方通算100勝を達成。06年にはオーストラリア遠征を敢行、08年には史上最年少でNARグランプリベストフェアプレイ賞を受賞した。 |