姉ブエナをも超える逸材ジョワドヴィーヴル
2012/4/1(日)
山口慶次厩務員(栗東・松田博資厩舎)
走って当然という宿命の元にデビューしたジョワドヴィーヴル。それでもキャリア1戦が嫌われた阪神ジュベナイルFは4番人気に甘んじたが、軽く跳ね返してしまうあたりが血統と能力の成せる業。本年緒戦、圧倒的な1番人気だったチューリップ賞こそ3着と敗れたものの、一族の全てを知る山口厩務員に焦りの色は微塵もない。これまで当人の担当馬は桜花賞パーフェクト連対という逸話もあり、この超良血馬についてはどのような手応えを感じているのか？兄弟馬と比較しつつ、先々までの可能性を語っていただいた。
－：桜花賞も1番人気は間違いないであろう、ジョワドヴィーヴルについてお話を聞かせてください。山口さんと言えば、ビワハイジの仔はもう4頭目です。
山：アドマイヤジャパン、アドマイヤオーラ、ブエナビスタ、ジョワドヴィーヴル。そうですね、4頭目です。
－：競走馬としても凄い馬でしたが、それ以上にここまで走る仔を出すお母さんというのも珍しいと思います。何かそれぞれに共通点というのはあるのでしょうか。
山：とにかく心肺機能が優れています。そして、女の子のほうがしっかりしているというか、男の子のほうが精神的に脆い部分があります。
－：厩舎は違え、トーセンレーヴもそういうところありますね。
山：オーラもジャパンも自分を制御できないところがありました。自ら痛めつけてしまったりね…。ジャパンはサンデー系の良さが出て、馬っぷりは一番良かったですけどね。オーラとブエナは歩様がコトコトコトコトして、どことなく似ていました。ジョワドは、他と比べても大分違いますよ。ディープインパクトの色が出ているのかね。お姉ちゃんは前の馬を抜くまで一生懸命走るけど、あんまりそういうところがないものね。
－：どこか冷めているというか…。
山：まだまだ、別に～っていう感じですよ。ジュベナイルでも能力が高かったから、そのまま走ってきただけですよ。新馬当時に比べて歩様は段違いに良くなっていましたが。
－：新馬前からバネがいいという話は伺っていましたが、デビューまではどのような感じの調整だったのですか。
山：ウチ特有で長めにはやっていましたが、そんなにビッシリとは仕上げませんでした。それでも能力は感じていましたし、牧場から入ってきた時に『ブエナを超えるかも知れない』なんて聞いていましたから。そんなのありえへんやろと思いましたが(笑)。確かに、当時から走りっぷりはディープを彷彿とさせました。跳びの滞空時間が長いというか。祐一も『馬に乗っている感じではない』とびっくりしていましたから。
－：5月13日の遅産まれですよね。それでデビューも遅かったと思うのですが、2戦目でG1を勝つのですからやっぱり能力はピカイチですよね。
山：この一族に共通して言えるのは、攻めを手控えたらいけませんね。ある程度ビッシリやらないことには競馬でもなかなか動けません。心配機能ができているのに、体がついてこないというか。それがチューリップ賞だったのでしょうね。
－：単勝は1.3倍、かなりの期待が懸かっていました。
山：期待に応えたかったですけどね。先には桜花賞もオークスもあるわけですから正直余裕残しでしたし、馬場が悪すぎて思い通りの調教ができないというのもありました。
－：そう考えると時計がかかるタフな馬場よりも、レコードが出るような馬場のほうがいいタイプと。
山：力がいる馬場でも走りが軽いからこなせるのですが、勝つためには外を回さないといけませんからね。馬場の悪い内々を通った結果がチューリップ賞ですから。
－：逆に言うと、3ヶ月の休み明けで馬場が悪い内を走らされて、調教もビッシリではなかったということを考えれば…。
山：トライアルと思えば十分走っていると思いますよ。収穫もあったくらいです。叩いてピリッとしてきましたし。
－：まだまだ成長する余地はあると思いますが、馬体の成長というのはいかがでしょうか。
山：オークスが終わって夏を越さないと大きくは変わってこないでしょう。ブエナもしっかり飼い葉を食べてシャキッとしたのは戻ってきてからでしたから。ジョワドは遅生まれなので特にそうなのではないでしょうか。
－：最終追い切りはどのようなメニューを予定していますか。
山：この中間はビッシリやれています。もうサッとやるくらいでいいのではないでしょうか。週中の状態を見ますが、土曜にも少しやることになると思うので。
－：馬体重はどう思っておけばよろしいでしょうか。
山：一緒くらい(420キロ)でしょうね。減るようなところはありませんし、大きく増えるようなこともないと思います。
－：ちゃんと食べてはいるのですか？
山：ダラダラと1時間くらいかけて食べてます(笑)。でも、先週末くらいからやっぱりピリッとしてきましたよ。洗い場なんかでもブエナよりも敏感なところがあります。自分の気にいらないことには偏屈な馬ですよ。
－：ジョワドの一番の課題はお嬢様というところですね(笑)。
山：そうですね。育ちがいいので、わがままな部分を闘争心に変えさせないといけませんから。
－：意外とマイラー傾向が強いと言われるディープインパクト産駒ですが、先々を見据えて距離適性はどう見ていますか。
山：1600ｍよりも延びたほうがいいと思うくらいです。普段でも2週回ってきた後もケロッとしていて息が乱れませんし、攻め馬で引っ掛かるところもありませんから。何にせよ、この先も1戦1戦が勉強ですよ。結果は出ていますが、そういう馬です。
－：応援してくれるファンの皆さんにも、少し長い目で見てやってほしいと。
山：能力はピカイチですけど、まだまだお嬢様なので。普段は人懐っこいし、とても可愛い馬です。
－：いずれにせよ、上積みが見込まれる今回も人気になるのは間違いないところだと思います。慎重な姿勢の山口さんですが、桜花賞はベガとブエナビスタで勝ってアドマイヤキッスで2着と好相性です。本番に向けての抱負をよろしくお願いします。
山：一番気になるのは阪神の馬場の悪さですね。いっそのこと、大外でも当たらないかと思うくらいです。桜花賞、4戦3勝となるように仕上げますので、応援よろしくお願いします。
(取材・写真)高橋章夫
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