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飯田祐史騎手

飯田祐史騎手


昨年は秋華賞で低評価を覆して2着に食い込んだキョウワジャンヌ。勝ち馬にこそ水は開けられたものの、2000mは守備範囲よりもやや長めの条件。それでいての結果だけに如何に能力があるかを披露した一戦だっただろう。使い詰めで挑んだマイルCS、ゲートで失敗した阪神牝馬Sは奮わなかったが、今回は予てからジョッキーも好条件と言っていた左回りのマイル戦。実績面で見劣りはするが、一発を期したい。

-:前回の阪神牝馬Sは、休み明けで出遅れて、最後は伸びたものの、結果的には12着と惨敗してしまいました。

飯:いや、最後もそんなに伸びなかったです(笑)。もう完全にゲートで潜ってしまって、一番悪いときに開いちゃって……。元々ゲートではああいうところがある馬なんですよ。秋華賞でもビデオ見てもらったら分かるんですけど、結構、暴れているんですよ。あのときはたまたま落ち着いたときにパッと開いて、まともに出たんですけどね。その後も「気をつけなきゃいけないな」って言っていたら、マイルCSは外枠だったから最後に入ってすぐ開いたんですよ。たまたまラッキーという感じで。で、こないだの休み明けのときは「秋が悪かったからゲート練習しとこうか」って練習行ったらすごくうるさくて……。「ああ、うるさいな~」って状況のまま競馬に行ったら本番はゲートで潜っちゃたんです。

-:あと、前回で気になったところは、休み明けだったのに体重が減っていた点です。

飯:牧場から帰ってきたときに減っていたので、しょうがないかなと。使っていって増えてくればいいかという感じですね。

-:一回使った後の状態なんですけど、今日見た雰囲気だと、そんなに細すぎるという感じはしませんでした。どれくらいまで戻っていそうでしょうか?

飯:どうだろう……。今回は東京ですからねえ。輸送もあるし当日の体重がどうなるか、正確には分からないんです。でも、体の張りも戻ってきていますよ。去年も使いながら、夏前に連勝するときから秋までに20キロくらい増えているでしょ?だから、同じように使いつつ戻っていけると思っています。

-:前回(秋華賞時)、取材させて頂いたときに、この馬の“左回り適性”を強調されていたと思うんですけど、府中のマイル適性について触れて頂けますか?

飯:上手ですね。右も上手だけど(笑)、左はイイですね。よほど道悪とかにならなければ走れる条件にあると思います。ただ、困ったことにみんな走る馬だしねえ(笑)。G1で、みんな走る馬が集まってのレースなので。

-:キョウワジャンヌだけが得意なわけじゃなく……。そのへんが競馬の難しさですね。最後も枠であったり……。

飯:流れであったり、色々ありますからね。けれど、左回りの1600mというのはプラスだと思います。

-:新潟で勝ったエクセル浜松開設記念のレースは最後の伸び方が強烈でした。

飯:そうですね。もっとパワーがついてくれたらイイなと思うんですけど……。まあ、現状、そこはしょうがないですね。



-:馬体重にばかりこだわってもしょうがないとは思うんですけど、秋華賞のときで大体470キロ弱でした。理想的にはそれくらいあっていい馬なんでしょうか?

飯:う~ん、どうなんでしょうねえ……。体重はあんまり気にして乗ってないので。どう言えばいいのかな……、“ベスト体重”ってみんなよく言いますけど、「ベスト体重っていつの体重だよ?」っていつも思うんです。例えば、陸上で日本選手権とかに出てくるような人で、中学のときに日本でトップやった子がそのときの体重に合わせてたらおかしいでしょ?「中学のときは何キロで日本一になったから」って言うのと一緒で。成長しているし、そのとき動ければその体重がいいんじゃないかとボクは思うので。

-:先週までの動きで言うと、阪神牝馬Sから比べて良くなっている感じはありますか?

飯:イイですよ。ホントに。使ってからずっと「良くなっている」って感じで。

-:じゃあもう、明日と来週の追い切りでかなりイイ具合に仕上がりますね。

飯:う~ん。……ですね。最高潮とはいかないと思いますけど、こないだよりはイイ状態だと思います。ゲート練習も毎週、週に3日くらいは行っていますし。最初は相当うるさかったですけど、先週、今日とやってちょっとマシになってきました。また今週もどこかでゲート練習に行きます。

-:今日も馬場に入る前に一瞬ちょっと立ち止まったりしていましたね。

飯:そうですね。ああいう子です。

-:いつもの仕草と。この馬、新潟でも勝っていますから、輸送に関してはそんなに心配することはないんですか?

飯:う~ん……。実際に勝っているんですけど、厩務員さんは結構気にしていますね。やっぱりカイバを食べないので。厩務員さんは「大丈夫なのかな~」って言ってましたね。

-:じゃあ、着いてから当日のイレ込みも心配ですね。

飯:イレ込むと思いますよ。G1で雰囲気も違いますからね。イレ込むでしょう、普通の馬は(笑)。そこでドッシリというタイプじゃなく、どっちかと言ったら“気にしい”な性格ですから。

-:パドックではちょっとチャカチャカ見せるかもしれない?

飯:まあ、やっていると思いますけど、想定内です。ただ、着いてから全然食わないというのは良くないから、それが心配ですよね。ある程度は食べてほしいです。

-:この馬の返し馬を見るときのポイント、癖などはありますか?

飯:癖は、物見しますねえ。良いことじゃないですけど(笑)。どうなんだろう、やっぱり、この馬に限った話じゃないですけど、芝を走る馬は弾むようなキャンターの出がけ?走り出す瞬間にポンッと弾けるのがいいんじゃないですか。そういう馬が芝を走ることが多い気がします。

-:まだまだこれからも楽しみな馬だと思うんですけど、左回りで牝馬限定のビッグレースというのは少ないと思うんですよ。

飯:そうですよね。ココしかないですよね。秋華賞に行く前から、このレースは目標だったので、走ってほしいですね。まあ今年だけじゃなく来年も走れたらいいですよね。



-:まだまだ良くなる可能性を秘めていると。見た目としては、結構スッキリしていますよね。

飯:あんまり逞しくは見えないですよねえ。良く言えば上品、悪く言えば薄っぺらいというか(笑)。見た目だけでいえば、もっとイイ馬は一杯います。

-:でも、レースで乗ったときの切れというのは、体からは想像もつかないんじゃないですか。

飯:乗ったらスゴイですねえ。やっぱり、切れる馬特有のいい背中ですよ。でも、何度も言いますが、そういう馬ばっかり集まってのレースですから(笑)。

-:G1ですからね(笑)。でも、応援しているファンは、去年のエクセル浜松開設記念の切れを期待していますよ。

飯:いやいや、新潟ですからねえ。そんなに、みんな見てないんじゃないですかね(笑)。

-:いや、これは結構インパクトがありましたから。

飯:見ているかな。そういうインパクトがあるレースをできる馬って最近少ないですよね。やっぱり個性的な馬ってイイことだなと思うし。そういうパフォーマンスができる能力があっても、そういう競馬ってなかなかできないんですよね。だから、そういう面で注目してもらえればいいかな、とは思います。

-:これだけレースを使ってきているんですけど、半分以上、複勝圏内に入っているというのは能力の高さですよね。

飯:確かに使い詰めだったマイルCSはともかく、崩れたのは前回くらいですしね。

-:それもゲートの出が致命的だったのもあると思いますし……。

飯:そうですね。別に速く出てくれなくてもいいので、普通に出てくれれば。

-:締め括りに、応援してくれているファンにひと言お願いします。

飯:とりあえず、ゲート練習にしろ、普通の調教にしろ、毎日乗って、前回よりイイ状態に持っていくことで今は精一杯というか……。ボクだけじゃなくて、担当スタッフも頑張っています。ということで他の馬もいることなので、あまり大きなことは言えませんが、上手く行けば楽しみですね。応援してください。




【飯田 祐史】Yuuji Iida

1974年 滋賀県出身。
JRA初騎乗
93年3月6日 1回阪神3日2R メイショウアルマダ(14着/15頭)
JRA初勝利
93年3月6日 1回阪神3日6R マイネルアルファ
JRA通算成績は374勝 (12/5/6現在)


■重賞勝利
・2002年 きさらぎ賞(メジロマイヤー号)
・2002年 小倉記念(アラタマインディ号)
・2001年 鳴尾記念 /・2000年 産経大阪杯(共にメイショウオウドウ号)


父は飯田明弘調教師。デビューイヤーに19勝を挙げると、関西新人騎手賞を受賞。これまでに種牡馬としても渋い活躍をみせているメイショウオウドウとのコンビで大阪杯、鳴尾記念などJRA重賞は4勝をマーク。 また、キョウワジャンヌの兄や姉の主戦を務めていた経験も持っている理論派ジョッキー。