関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

桑原調教厩務員×高橋摩衣
--:それでは、関屋記念に出走を予定しているマイネルスケルツィの桑原調教厩務員にお話をお聞きします。

高橋:桑原さん、よろしくお願いします。

桑原:よろしくお願いします。

高橋:今年は2月から使っていらっしゃいますが、結構惜しいレースが多いですね。

桑原:そうですね。ダービー卿もちょっと前が詰まって惜しい感じでしたし。ただ、最後の決め手が足りないというかひと押しが足りないというか。

高橋:前走は谷川岳ステークスで4着でしたが。

桑原:うーん、ちょっと消極的なレースだったので、もっと積極的に行った方が良かったかもしれませんね。溜めてもあんまり伸びるタイプではないですし。まあ、逃げ馬のマイネルレーニアがいたのであんまり行き過ぎて共倒れになっても良くないですし、難しいんですけど。

高橋:マイネルレーニアは今回も一緒ですね。

桑原:最近よく一緒になるんですよね。ちょっと脚質が似ているので、出来ればあまり一緒に走りたくはないかな(笑)。本当は行かせたいんですけど、向こうが出ムチを入れて逃げるので今回も2番手からになると思います。今回レースで乗る(石橋)脩君もそういうのを分かってくれていて「あんまり溜めないで自分のペースで行かせようと思っています」って言っていたので。でもヒカルオオゾラとか前に行く馬も多いし、展開的には楽ではないと思います。

高橋:なるほど。

桑原:でも、こういう時ってみんなが「速くなるだろう」と思って、意外と牽制し合う事もありますからね。直線が長いという事もあって、余計ジョッキーも構えて。阪神の外回りなんかも騎手が構えて前半スローになってそのまま前残りになったりする事も多いですからね。「今回もそういうのがあるといいな」って、さっき脩君と話していました。

高橋:そうですか。体調はいかがですか?

桑原:順調ですよ。放牧から戻って来てちょうど2週間くらいで、今日(8/5)の追い切りが4本目で。

高橋:今日の追い切りには石橋脩騎手が乗られて。

桑原:そうですね。動き自体は良かったですよ。脩君に「最後11秒台が出てたよ」って教えたら「そんなに速かったんですか」って。乗っていてスピード感があまりないけど、速いんですよね。「かかる」っていうイメージを持っていたみたいですけど「凄く乗りやすくてイメージと違った」って言ってくれましたしね。スケルツィはレースぶりから「かかる」っていうイメージを持たれているみたいですね。関西に持って行っても、みんな「返し馬大丈夫?走れる?」とか聞かれますからね。北海道に行った時も、すれ違う人たちから「大丈夫?桑原君、乗れるの?」って聞かれたり。

高橋:「失礼な!」ですよね(笑)。

桑原:本当、「失礼な!」ですよ(笑)。「毎日乗っとるわ!」です。

高橋:(笑)今、体重はどんな感じですか?

桑原:まだちょっと余裕があって、輸送してちょうど良い位の状態ですね。今あんまりキッチリ作ってしまうと、マイナスになってしまうので。

高橋:ここ最近、体重の変動が無いですね。

桑原:大体520キロ台をキープ出来るようになりました。前は輸送に弱いところがあって、20キロくらい減る事もあったんですけど、最近は大丈夫です。

高橋:輸送にも強くなって。

桑原:そうですね、でもね、レースの時は減っちゃうんですよ。関西に行った時は、着いた日に量っても減っていないし、レース当日の朝も大丈夫なんですけど、そこから競馬までの間で10何キロか減りましたから。

高橋:一日でそんなに。

桑原:一日どころか半日ですよね。もう何回もレースを使っているから流れが分かるんでしょうね。馬運車に乗る時や競馬場に着いた時も大人しいんです。馬は記憶力が良いですから「運ばれてすぐにレースは無いぞ」って分かっているんですよ。で、レースが近づいているのが分かって、精神的に追い詰められちゃって。

高橋:えー。「緊張して来たー」ってピリピリして。10キロ近く減るって、それだけ汗をかいたり。

桑原:お腹を下してしまったり。それでお腹が巻き上がっちゃったりしますね。そういう馬って結構多いですよ、レース当日になってソワソワソワソワして。例えばスケルツィと同じグラスワンダー産駒のサクラメガワンダーもそうですよね。関西圏では走るけど、関東に連れてきた時は同じ感じらしいですよ。

高橋:競馬好きのお父さんも「サクラメガワンダーは関西のレースで馬券を買え」って言っていました(笑)。

桑原:環境の変化に弱いんでしょうね、人間でもそういうのに過敏なタイプもいるでしょう?「お、お腹が…」みたいな。それと同じですね。

高橋:そういう人いますよね。で、スケルツィですけど、休み明けはそんなに苦にしないイメージがありますけど。

桑原:牧場でもビッシリ乗られてきたので特に問題ないと思います。ツメに弱いところがあるんで、休み明けだと少しゴトゴトする事もありますけど、今回は牧場で鉄を打ってくれたので。マイネルってツメを鍛える目的もあって基本的に裸足で調教するんですけど、今年からスケルツィは鉄を履かせてもらえて保護された分、今までの休み明けより走れる状態だと思います。

高橋:関屋記念が行われる新潟のマイルコースですが。

桑原:スケルツィは瞬発力のあるタイプではないので直線の長いコースはベストとは言えませんが、いろいろな距離を使ってきた中で、マイル戦は一番安心して見ていられます。

高橋:それでは最後にレースに向けて抱負をお願いします。

桑原:この後は問題が無ければ京成杯オータムハンデに行く予定もありますし、そこに向けて良い内容のレースをしてくれれば、と思います。

高橋:ありがとうございました。(馬房を覗いて)あ、今スケルツィが飼葉を食べていますね。見ていてもいいですか?

桑原:良いですよ、気にしない馬なので。

高橋:ちなみに暑い季節っていうのはどうなんですか?

桑原:うーん、得意ではないですね。成績も冬場の方が良いですし、涼しい方が合いますね。

高橋:スケルツィ独特の夏場対策っていうのはありますか?

桑原:飼葉に電解質のものを混ぜてあげたりしています。

高橋:電解質?

桑原:人間でいうポカリスエットみたいなものです。馬って汗を物凄くかくじゃないですか。それで塩分が外に出て行くんですけど、ただの塩をあげるよりも、電解質の飼葉にはカリウムやマグネシウムやミネラルなどいろいろと入っているので良いかな、と。

高橋:何か…、凄いハイテクな飼葉ですね。

桑原:ハイテクですよ、凄いですよ。「コエンザイムQ10」とか、そんな時代ですから(笑)。

高橋:私のお母さん並みの栄養の取りっぷりですよ(笑)。暑くて食欲が落ちるっていう事は無いですか?

桑原:ちょっと先週までは食いが悪かったんですけど、放牧先から帰って来てすぐは食べないタイプなんで。まあ食べるのに時間がかかるタイプで、調教で乗った後は食べないけど、午後になったら食べ始める感じで。でも翌朝までには全部食べるし、食べ残しは無いですよ。回数を分けて飼葉をあげていますし。

高橋:チョビ食い派なんですね(笑)。

桑原:その方がいいんですよ。馬の胃ってそんなに大きくないから、一度の量が多いと胃に負担がかかるんですよね。

高橋:スケルツィには何回に分けてあげているんですか?

桑原:朝と昼と夜の3回です。最近は3回に分けるのが結構主流になっていますよね。あ、スケルツィの飼葉には油も入れているんですよ。

高橋:油?油って普通のサラダ油みたいなものですか?

桑原:他所でも油を使っているところは多いですよ。僕が使っているのはもうちょっと高級な、米油から作って加工した馬用の油ですけど。

高橋:油を飼葉に入れるとどういう効能があるんですか?例えば毛ヅヤが良くなったり?

桑原:そう、毛ヅヤが良くなります。穀物の量を減らす事によって血糖値の上昇が抑えられて、腸への負担が軽くなるんですよ。あとは脂溶性のビタミンってあるじゃないですか、それらの吸収が良くなりますよね。

高橋:何か凄く計算されて、本当「アスリートの食事」っていう感じですね。

桑原:そうですね、油にもオメガスリー脂肪酸が入っていたりしますし。いろいろやっていますよ。ニンジンの粉末とか。

高橋:粉末もあるんですか。

桑原:ちょっとクサいんですけど(笑)。

高橋:嗅がせてください。……ふりかけみたいなニオイがします。

桑原:こんなふりかけだったら食欲落ちますよ(笑)。

高橋:(笑)何か、ダシみたいなニオイで。この粉末を飼葉に混ぜるんですか?

桑原:そうです。しっかり食べて夏を乗り切ってもらわないと。

高橋:自慢のパートナーですもんね。

桑原:乗り役の指示通りに動くし、乗った人はみんな「乗りやすい」って絶賛してくれますからね。松岡騎手も、ウチの厩舎のマイネルチャールズ、マイネルアワグラス、ドリームパスポートっていうオープン馬と比べても一番良いって。

高橋:凄いですね。

桑原:本当に癖が無くて、我慢するところは我慢するし、追い出したら体がグッと沈むし。攻め馬ではそういう走りが出来るんですけど、レースで力を発揮できない事が多くて…。

高橋:うーん。でも、癖が無いっていうのは、桑原さんや放牧先の牧場の方の教育の成果が出たんでしょうね。

桑原:最初は結構カーッとしていましたからね。まあ、未だにヘンなところはあるんですけどね。牝馬を気に入ると止まらなくなりますからね(笑)。

高橋:あら(笑)。

桑原:僕と似ていなくて、エロいんですよ(笑)。ポカラーン、ポカラーンってのんびり歩いていても、牝馬がスーッて追い抜いて行くと「ブルヒヒーン!」って鳴きながらファーッと追いかけて行って。

高橋:「カワイイー!」って(笑)。

桑原:その牝馬が止まるまで止まらないんですよ。

高橋:猛烈アタック型ですね。「ヨメになってくれー!」って(笑)。

桑原:突然スイッチが入るんですよね。何しても止まらないですから。

高橋:女好きという事で(笑)。意外な面が分かって親近感が湧きました。関屋記念、応援しています。ありがとうございました!

桑原:ありがとうございました。





桑原 裕之

1973年生まれ。
美浦・稲葉隆一厩舎所属
牧場勤務を経て美浦トレセンへ。
06年ニュージーランドトロフィー(G2)、07年京都金杯(G3)を制するなど、重賞戦線で活躍を続けるマイネルスケルツィを担当している。





高橋 摩衣

生年月日・1982年5月28日
星座・ふたご座 出身地・東京 血液型・O型
趣味・ダンス ぬいぐるみ集め 貯金
特技・ダンス 料理 書道(二段)
好きな馬券の種類・応援馬券(単勝+複勝)

出演番組
「Hometown 板橋」「四季食彩」(ジェイコム東京・テレビ) レギュラー
「オフ娘!」(ジェイコム千葉)レギュラー
「金曜かわら版」(千葉テレビ)レギュラー
「BOOMER Do!」(J SPORTS)レギュラー
「さんまのスーパーからくりTV」レギュラーアシスタント


2006年から2008年までの2年間、JRA「ターフトピックス」美浦担当リポーターを務める。 明るい笑顔と元気なキャラクターでトレセン関係者の人気も高い。 2009年より、競馬ラボでインタビュアーとして活動をスタート。 いじられやすいキャラを生かして、関係者の本音を引き出す。