関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

安田晋司調教助手

昨年は年度代表馬ジェンティルドンナと幾多の名勝負を繰り広げ、大魔神・佐々木オーナーの愛馬としても名前を売ったヴィルシーナ(牝4、栗東・友道厩舎)。現代の“シルバーコレクター”と言ったらコノ馬のためにあるような言葉だが、それを克服すべく陣営が選んだローテーションが大阪杯からヴィクトリアマイルというローテーション。二人三脚で悲願に挑む安田晋司調教助手に、年が明けての成長やコース適性などを改めて伺った。

ライバルとの激戦を振り返って

-:大阪杯からヴィクトリアマイルという異色のローテーションで挑むことになりましたが、まずは前回使うまでの臨戦過程がどういう状態だったかを教えてください。

安田晋司調教助手:あくまで春の目標はヴィクトリアマイルということなので、大阪杯はあんまり仕上げ過ぎないように、今回にお釣りというか、上積みがあるように仕上げもソフトでした。

-:敗因は相手関係を考えても納得できると。

安:そうですね。追い切り本数はこなしてましたけれど、一杯の調教はしてなかったんですよね。その割には大阪杯でもよく頑張ってくれたと思います。

-:それを使って、本番のヴィクトリアマイル。今日(5/2)はトレセンの気温も7度で5月とは思えないぐらい寒かったのですが、アドマイヤネアルコとCWコースで併せました。どんな動きだったのですか?

安:道中はユッタリとしたペースで運んで、アドマイヤネアルコを3~4馬身追い掛ける形で全体の時計は(6F)86秒ぐらいですけれど、終いはシッカリと仕掛けられてからグーンときて、反応も良くて早かったので。終いだけの調教になりましたけど、動きはスゴい良かったと思います。

-:86秒ということですけれど、見ていたら3~4コーナー辺りでかなり我慢をしているというか、アドマイヤネアルコのペースがもうちょっと速くても良いぞ、という感じで?

安:前走で1回使ってからスゴく前向きになって、普段から真面目に走る馬ではあるんですけれど、良い意味で気合が乗ってきたというか。

-:終い重点で最後は11秒3と、ものスゴい瞬発力ですね。



安:今日の重い馬場を考えても、終い重点とは言え、立派な時計かなと思います。

-:しかも前半が16(秒)-16(秒)ぐらいで入ってるんですけれど、それをちゃんと折り合えてるというか?

安:そうですね。乗った竹之下騎手に聞くと、道中ペースが遅かった分もあって、抑えるのはちょっとシンドかったみたいです。

-:逆に言ったら、それぐらいのペースで引っ掛かるぐらいで十分ですよね、レースに向けては?

安:距離も今回は1600に短縮されるし、それぐらいで良いのかなと。

-:ヴィルシーナの特性から言って、ベストは2000mぐらいだと思っているファンが多いと思うんですよ。その馬にとって、府中のマイル戦というのはどうかというのがポイントだと思うのですが、担当される安田さんからしたらどうですか?

安:乗った感じは2000m以上に拘らなくても、1600とかでも十分に競馬はできると思います。むしろ、もしかしたら1600の方が持ち味が活きないかなと期待しています。

-:実際に府中の1600というのはクイーンCで勝ってるコースですしね。

安:そうですね。

-:一番気になるのは古馬一線級と混じった時のマイル特性がどうかというのが。究極のところを求められると思うので、出てくる馬なんかも1400がベストの馬から2000をこなせる馬まで、幅広く出てくるじゃないですか。その中でどういうレースをしてくれるかというのが、一番のポイントだと思うのです。

安:府中のマイルはスタミナも要求されると思うので、良いスピードを持続できるスタミナをヴィルシーナは持っていると思います。そういう意味でもそんなに心配はないですね。

-:去年は何回もG1に挑戦したんですけれど、2着続き。逆に言うと色々な条件で2着になっているので。

安:どんな競馬場に行っても、どんな馬場になってもシッカリと結果を残してくれるんで、本当に頭が下がる思いですね。

-:それと同時にこの馬は2着と分かってやってないかと?

安:どうなのかなあ~。でも、抜け出してからソラを使うというのは多分ないと思うんですよ。まあ、勝ってないから何とも言えないですけどね。

-:もしかしたらツボがもう少し違うとこにあるのかもしれないという風に考えてしまうんですけどね。それが1600の距離短縮で、もっと良いパフォーマンスが出る可能性もあるのかなと。

安:それは、あると思います。




尻っぱねはディープ産駒の特徴

-:コンディションに関しては、あと1週ありますが、今の状態を教えて下さい。

安:帰厩後も順調に乗れてますし、それが何よりですね。今回はカイ食いも前回に比べれば、若干食べるようにはなっているので、このままカイ食いを維持していければ。

-:去年の春から比べれば体重というか体型が?

安:体型も変わりましたね。体重も増えましたけどね。

-:背が伸びたというか、より脚長になっていると?

安:大人の女になってきましたね。

-:今からシッカリとしていく時期でしょうからね?

安:そうですね。

-:ココから去年とは違う体の締まりというか、シッカリした体で戦っていけるというのが楽しみですね。

安:脚元も今は特に問題ないんでね。

-:あとは精神的な面が成長すれば、角馬場での尻っぱねとかもなくなると?

安:最近、角馬場でダクを踏んでから400に入れて、ダクを1周踏んでからキャンターに行くとほとんどしないんですよね。する時というのは手前を替えたい時にちょっとトモがモコモコして、ポンと尻っぱねをしたりはするんですけどね。

-:尻っぱねもするし、尻尾を振り回して?

安:そうなんですよね。

-:それがヴィルシーナなんですけれど、やると分かってて見てても、“それ以上テンションを上げるなよ”という風に見てしまうんですけれどね。

安:でも、角馬場で乗っている感じは前回の方がちょっとカリカリしてました。今回は休み明けを1回叩いてなんですけれど、角馬場でもユッタリと良いフォームで走れているし、山(坂路)に行っても前走ほど力むところもないんでね。

-:この馬は走る馬にしては、良い意味で癖がないというか、走る馬の中には何か怖さがある馬もいるじゃないですか?

安:それが強みでもありますね。ただ、物音には敏感で、うるさいトラックとかが道路を走ってくると、ものスゴく尻っぱねをしたりします。本当に前は落ちそうになりました。思いっきり尻っぱねをした時は「ヤベー」と思いましたね。

-:前につんノメりそうになるぐらい?

安:はい。ただ、ヴィルシーナの場合は怖がっても前にしか行かないんでね。横に逃げたりだとかはないから、競馬とかに行って怖がったとしても、前にしか行かないと思うので。

-:あの尻っぱねというのは、何かちょっと半分遊んでいるというか?

安:遊んでいるというか、多分僕が思うには体をほぐしていく過程で、ほぐしきれてないところを尻っぱねでほぐすんやと思うんですけどね。

-:それは動物の本能的にそうしていると。

安:多分、そうじゃないですかね。やっぱり尻っぱねをした後の方が動きは良いんですよね(笑)。

-:ヴィルシーナとしては股関節のストレッチみたいな意味合いで、尻っぱねをしている感じですね?

安:僕はそんな感じで捉えています。



-:友道先生とその話をした時に「ディープインパクトもそうだった」と。

安:らしいですね。

-:「血統的に遺伝したんじゃないか」と。そんなこと遺伝するんですかと言ったのですが。

安:でも、ウチにいるディープインパクト産駒は大概、尻っぱねをしますね(笑)。

-:ディープ産駒の特徴として覚えておきます。

安:そうですね。フレールジャックもしますし、パッションダンスも尻っぱねをします。他のディープ産駒も結構、尻っぱねをするヤツが多いですね。

-:何か感情表現の一つかなと思ったんですけれど、そうじゃなくてストレッチのひとつなんですね?

安:なのかなと思ってますけれどね。あとはトモのバネがあるから。尻っぱねをしやすいような良いバネが遺伝しているから、しやすいのかなと思いますね。

-:ヴィルシーナの場合は尻っぱねをして、これ以上テンションが上がらなければ良いなと思っても、それ以上はしないですからね。

安:尻っぱねをしても、テンションが上がることはないですね。それからガッツリとハミを噛む訳でもないし、ただ尻っぱねをしているだけで。


安田晋司調教助手インタビュー(後半)
「オーナーのためにもG1タイトルを!」はコチラ→

1 | 2


【安田 晋司】 Shinji Yasuda

高校卒業後、信楽牧場に約8年勤務。厩務員過程を経て、友道厩舎へ。
信楽時代はエプソムカップを制したアドマイヤカイザーを担当。友道厩舎では、持ち乗りと、攻め専を経験。去年の6月からはヴィルシーナの一頭持ちとなった。
攻め専時代、自分の調教技術を向上させてくれた思い出の馬は「全頭です(笑)。でも、ウチの厩舎はけっこういい馬が多いんで、そういういい馬の背中を教えてもらうっていう面でも、すごく勉強になっているかと思います」。その中でも印象に残った馬はサクラローズマリー。