関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

田重田静男厩務員

弥生賞でよもや皐月賞の出走権を取りこぼしたキズナ(牡3、栗東・佐々晶厩舎)だが、そこは名門と名手のコンビ。日本ダービーに向けたローテーションを組み直し、我々の想像以上のインパクトを前哨戦で残して大一番に向かってくる。同厩舎の看板馬の担当を決まって勤める腕利き田重田静男厩務員が、当人のみぞ知る管理法などを詳しく教えてくれた。

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京都新聞杯後は思ったほど負担なし

-:重賞2連勝で日本ダービーに挑むキズナについてお伺いします。よろしくお願いします。

田重田静男厩務員:こちらこそよろしくお願いします。

-:今日(5/15)は1週前追い切りが終わりました。ちょっと荒れた時間帯に走ったので時計は(56.4―41.6―26.8―12.8秒)、それほどでもなかったです。田重田さんの目から見て、今日の追い切りはどうだったか教えてください。

田:良かったんじゃないですか。そんなに(速い調教を)やるつもりもなかったし、キズナは時計の出るタイプじゃないですから。京都新聞杯を使ってそんなに日にちも経ってないから、あれくらいで十分なんです。

-:まだ1週間ありますからね。

田:そうそう。レースを使って体もできているし、今日の走りは良かったんじゃないのかな。調教で乗ってくれた山田さんは「55ぐらいを目安に上がってくるわ」って言っていたけれど、馬場が思ったより悪かったんだよね。3ハロン目がちょっと遅かった。でも、終いの動きは良かったし順調ですよ。

-:疲れも残ってないというふうに思っていいですね。

田:はい。あの動きを見る限り、疲れも残ってないね。

-:やはりダービーに向けて中2週のローテーションというのが、どうなのかと僕は思っていたんです。担当されている田重田さんにとって、難しさはないですか?

田:あるよ(笑)。やっぱり、本当だったら当初のローテーションは弥生賞を使って、それで皐月賞からダービーというローテーションで組んでいたから。弥生賞5着のあと、毎日杯を中2週で使って、そのあとちょっと間を空けて。次がまた京都新聞杯から中2週……。輸送が入ってない分、馬には楽かとは思ったけれどね。

-:ダービーに向かうにはキツそうな印象がありますね。

田:そうかもしれないけれど、うまく疲れは取れた。京都新聞杯のあと、ユタカさんも「300mしか競馬はしていないから、負担は少ないと思うよ」なんて言っていて。言われた通り、前回と比べて負担はなかったね、だから疲れも楽に取れた。



アーネストリーとはまた違ったタイプ

-:キズナはデビュー時から相当な期待を背負って生まれてきた馬です。デビュー前から陣営はダービーを意識した馬で、現実にダービー出られるという。それはすごいことですよね。やっぱり、最初にご覧になった時から、素質っていうのは感じられましたか?

田:しっかり出られるのも、すごいことだよね。やっぱり、走るフォームはゴム鞠(まり)が弾むような感じの跳ねというか、バネの良さは感じられたね。

-:そのあたりは以前、担当されていたアーネストリーとは全然違うタイプですね。

田:全然違うね。どちらかというと、アーネストリーは地を這うような、重戦車みたいな感じの馬だったから。

-:パワータイプで先行力のある馬でしたね。

田:そうそう。キズナはさっき言ったようにディープ産駒だしね。

-:なるほど。でも、キズナの良さはキレ過ぎないところだと思うんです。

田:そう。馬場もそんなに気にしないし、どこからでも競馬はできると思いますよ。好位というより、前に馬がいたら追いかけていく。それがこの馬の良さ。前に馬がいたら常に動けるタイプだと思うから。

-:そういう意味では京都新聞杯で、どんなレースをするんだろう?と思って楽しみにしていたんですけれど、思ったよりポジションを下げたなっていうのが、正直な印象だったんです。

田:ユタカさんはたぶんもうちょっと行きたかったんやと思うわ。ただ、ああいうゲートの出方と、出た時に前をカットされた動き。それに対してユタカさんが馬を信じているっていうかな。だから、そんなに慌てず、本人もレース後にコメントしていたように「キズナのレースをするだけ」というね。その冷静さで、キズナとの絆が繋がったところじゃないかな。

-:馬と騎手の「絆」ですかね。

田:そうそうそう(笑)。



-:でも、最後の伸びというのは、かなりの力強さがありましたよ。アレを見たファンはダービーでかなり支持してくると思うんです。それに、関係者の評価も高いですからね。田重田さん的にダービーは、どんなレースになると思いますか?

田:ここ2戦のレースよりは相手も強くなるからね。皐月賞を勝ったロゴタイプは前で競馬して伸びるタイプでしょ?だから、そうそう後ろから行っていたんじゃ、やっぱり届かないというか……、そうとは思っているけれどね。だから、できたら届く位置で競馬して、まあ“ユタカさんが届く”という位置で競馬して欲しい。

-:ロゴタイプが見える位置で、射程圏に入れて走って欲しいですね。

田:そやね。そうでなかったら、やっぱり、いい競馬ができないっていうかね。楽な競馬にはならないよ。

-:今年の牡馬戦線は「4強」と言われていまして、皐月賞の上位馬ロゴタイプ、エピファネイア、コディーノ、それに別路線からキズナという、この4強というのがファンの見方なんですけれども、そのプレッシャーというのはありますか?

田:(キッパリと)ない。

-:これだけの馬を担当していると、結構プレッシャーもあると思うんですけれど?

田:いつも通り。ジョッキーと違って、僕らは馬をそのレースにいかにいい状態で出すかっていう、それだけやから。それに対してベストを尽くすだけ。プレッシャーよりも、常に日々のケアを意識しているだけのことであって。

-:むしろ、プレッシャーというより、テレビカメラとか、我々取材陣がウロウロするほうが気になるくらいですか?

田:そうそう!今日も、もうテレビが参りました。馬装から寝かすまで付きっきりで(笑)。密着やね。

-:田重田さんのプライベートもなく(笑)?

田:全然なかったね。タバコやめて正解だったなと思うもん(笑)。

-:でも、これだけ注目される馬を担当できるというのは、かなり光栄なことですよね?

田:光栄というか、オーナーとウチの先生(佐々木晶三調教師)にやっぱり感謝やね。先生のお陰で、こうやっていい馬をやらせてもらって、ダービーにも出せることになって、インタビューもこうやってさせてもらって。

-:聞くところでは「アーネストリーのご褒美として、キズナを管理できることになった」そうですね。アーネストリーを担当していた田重田さんにとっても、厩務員としての手腕が認められたってことですからね。

田:そうやね。ありがたいことでね。本当に感謝しています。

キズナの田重田静男厩務員インタビュー(後半)
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【田重田 静男】Shizuo Tajyuta

1955年1月10日生まれ。
久保厩舎から、ホースマンとしての第一歩を歩み始めると、昭和47年の京都牝馬特別など10勝したセブンアロー等、そして、宝塚記念を制したアーネストリー、現オープン馬のダノンスパシーバなどを担当してきた。 息子は池江泰寿厩舎で有力馬を担当する田重田調教助手。