関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

西原玲奈調教助手

現在の重賞戦線において、ショウナンマイティ(牡5、栗東・梅田智厩舎)ほど個性的な馬も少ないかもしれない。後方待機は当たり前、追い込み馬ファンの心を掴んで離さないレース振りが真骨頂だが、陣営がG1を獲るために選択したレースはなんと安田記念。浜中俊騎手と二人三脚で苦楽を共にしてきた西原玲奈調教助手に、同レースに懸ける意気込みをロングインタビューで語っていただいた。

マイル仕様のセッティング中

-:今回の安田記念は過去にないぐらい豪華メンバーが揃って、多種多様なところから集まってきましたね。そんな中でショウナンマイティという中距離路線から魅力的な1頭が出走する訳ですが、今週の1週間前追い切りの動きを教えてください。

西原玲奈調教助手:今までは1週前、2週前とCWで追い切りをして、直前の当週に坂路でサラッという感じの調教だったんですけれど、“1600仕様”ということで、「1週前にビシッと本追いを坂路でテンから飛ばして、目一杯の追い切りをしよう」と浜中ジョッキーと相談をしまして、それで乗ってもらってスゴい時計が出たみたいですけどね。

-:どれぐらいの時計だったのですか?

西:50秒ちょうどです。今、坂路がちょっと引っ掛かりが悪くて、時計が全体的にちょっと掛かっている状態で、中間のハロー後の時計で50秒0、終いは12秒7で、掛かったと言えば掛かったかもしれないけれど、それぐらいでまとめてきたので、やっぱり脚力はあるなと思いますね。元々、左にモタれるようなところがあったんですけれど、見ている限りは全くそういうところを見せなかったので、良い追い切りができたと思います。

-:元々、中距離をずっと使っていた時は折り合いというのが課題で、引っ掛かり過ぎて上手く走れなかったレースなんかもあったんですけれど、逆にマイルになったら引っ掛かるぐらいのセッティングの方が良いということですか?

西:マイルになるとスピードが要求されると思うので、折り合いを考え過ぎずに……。やっぱり2000mだったら、テンからソロッと出して、“行くなよ、行くなよ”という風に折り合いを第一に考えないといけなかったんですけれど、1600だったら、そこまで構え過ぎずに、馬の出たなりの感じでスッと流れに乗れるんじゃないかなという期待はしてるんですけどね。

-:ポイントはまさにソコで、1600に距離短縮をするからには、ある程度は出していってポジションが納まるぐらい、いつものように最後方で行かないで、という感じでポンと出す戦法なら、今の府中は前が止まらない馬場じゃないですか。そう考えたら、ある程度は位置を取りにいった上で、折り合いを付ける競馬ができたら理想ですね。

西:取りに行かなくても、そのままでも馬自体はスタートがメチャメチャ速い馬なんですよ。だから、引っ張らなければ、勝手に流れに乗れるんじゃないかなと思うんですね。多分、そこは浜中君が一番分かる、乗っている本人しか分からない、ちょっとした感覚だと思うんです。

-:位置取りとしてはポコンと出して、最後方から折り合いだけを専念するというのはないと?

西:ないと思いますね。出して好位というのはないと思うんですけれど、完全に馬なり、出たなりで競馬ができるんじゃないかなと思うんです。

-:ファンの中にはイメージとして中距離で戦っていた頃のマイティのレースみたいに、触れず触らず最後方からポコンと走るイメージを持っているかもしれない。それでも間に合うだけの直線の脚は持っているんだけれど、今の府中はなかなか止まりきらないですからね。

西:差しもある程度は決まってますけれど、時計も結構速いし、中距離でもそれで届かないというレースがあったので、それを補う意味もあって、もうちょっと短いところを使いたいなというのもあったので。あんまりポツンというイメージはないんですよね。



プラスに出る可能性が高い左回り

-:左にちょっとモタれるということだったんですけど、今回はあまり走っていない府中なので、マイティにとって府中が合うのか、合わないのか、というところがすごく気になるんですが、左にモタれる馬にとって、左回りというのはどうですか?

西:この馬が左にモタれるというのは、最後の直線だけなんですよ。コーナーとかでモタれるということはなかったんですけれど、右回りだとモタモタする。左回りで中間の日曜日も15-15だったり、普通キャンターを乗った感じは右回り以上にコーナーでスムーズに走るので、コーナー自体のモタモタ感は多分、いつもより良いと思うんですね。ただ、直線でいつも左手前でハジけるところが、右手前でハジけるかどうか、ということは正直、やってみないと分からないところはありますけれどね。それはプラスに出る可能性だってありますし……。

-:ずっと右手前で走らないといけないことはないから、右手前が疲れたらもう1回最後に左手前に替える可能性も?

西:直線も長いですし、替える可能性もあると思いますしね。

-:どんなに能力があっても、その時のコンディションが整ってなかったら、G1では勝負にならないと思うんですけれど、ココのところのマイティは勝ち切れない反面、安定はしている、という状態。前回の大阪杯から上積みはどれぐらい感じていますか?

西:前回も休み明けの京都記念の時よりは良く感じました。乗っていて急激に良くなったというのはそんなにないんですけれど、落ち着きはありますし、キャンターですごく折り合いも付くようになりました。結構シッカリと乗り込んでいるんですけれど、体が全然減らないんですよ。現時点で見た目は多少、太いかなと思えるんですが、攻めた上でそういう体つきであるということは具合が良いのかなと思いますね。

-:充実期ですね?

西:そうですね。前はちょっと神経が細かくて、乗っていても大汗をかいて。普通の攻め馬でも汗だくで上がってきてたんですけれど、今は威嚇をしたりだとか、自己主張で暴れたりとかも、多少ある中で、周りを気にしてイレ込んだり、というのが、だいぶなくなったんでね。

-:3~4年いて、ようやくトレセンの環境になれたんですか?

西:どうなんでしょうね(笑)。でも、怖さはありますけどね、やった時の。先週の日曜日に浜中君が競馬の日にもかかわらず、「(日曜はトレセンのコース調教が左回りになる)逆回りをできれば1回乗せて欲しい」という話をして、乗ってもらっただけで、やっぱり頭の良い馬で感じ取って。そこからスッとスイッチが入るし、私が乗っている時よりも常歩の見た目が気をつけをしているというか、何かいつも乗っている人と違うなというのを感じ取っているし、その後に乗ったら折り合いはスゴく付くんだけれど、いつでもピュッといけるよという、馬がサインを待っている状態というモードには入ってるので。

-:「まだ、レースじゃないから、そんなモードに入らなくて良いよ」と教えてあげたいですね。

西:でも、そこを感じ取って、我慢が出来ているというのはスゴく良いことだと。あまりボケさせてもね。そこら辺の気持ちのコントロールは馬と話し合いながら、残り10日ぐらいで上手くできれば良いなと思っています。



-:コレだけキレる、ハジける馬というのは仕上げ過ぎると乗りにくさも出てくると思うんですが?

西:「仕上げ過ぎると」というか、京都記念の前とかはちょっと気持ちのコントロールが上手くいかなくて、調教でも引っ掛かったし、競馬でも引っ掛かっちゃったんで、一歩間違えたら、ちょっと悪い方向に行っちゃうけど……。

-:折り合いという面では?

西:現時点では大丈夫ですね。

-:それが大丈夫だったら、マイルであの脚が使えれば、ということですね。マイル路線で戦っている馬たちにとっても脅威的な存在になると思うんです。

西:本当は去年から出したかったレースなんでね。去年はちょっと賞金的に足りなくて落とされたんでね。

-:まだ、5歳だったら、そんなに歳を取ったりだとか、年齢的な衰えがある訳ではないし。

西:そうですね。一番強い時期だと思うんですけどね、5歳ぐらいが。

-:しかもマイティは精神的に細かい部分があったじゃないですか。だから、普通の馬よりも、もしかしたら長持ちするかもしれないですね。

西:やっぱり脚元の心配があったりだとか……。肉体的には(アドマイヤ)ラクティとかと比べても、乗った感じ体力面では2歳の時から完成されてたんですよね。まあ、成長自体は早かったんですけれど、落ち着きが出て、歳と共にレースが上手になれば成長力と同じような感じでカバーできると思いますけどね。

ショウナンマイティの西原玲奈調教助手インタビュー(後半)
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【西原 玲奈】 Rena Nishihara

競馬学校騎手課程16期生として入学。同期には小林慎一郎、嘉藤貴行らがいる。2010年3月1日より所属する梅田智之厩舎の調教助手となった。スタッフとのコミニュケーションに気を配り、少しでも馬の可能性を伸ばすために厩務員さんと密に話し合うようにしている。
モットーである「馬を大事にしたい」という思いを心がけて、調教に取り組み、ただ甘やかすだけではなく、昨日できなかったことが出来たら褒めてあげることも大事にしている。騎手時代から変わらぬ優しさを持って馬と接している。