元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
謹賀新年
2021/1/6(水)
皆様、明けましておめでとうございます!本年もよろしくお願いいたします。昨年、私達を苦しめた新型コロナですが、まだまだ収まるところを知らず、とうとう一都三県で緊急事態宣言が再発令されるかもしれないとなりました。もちろん、人間界も負けてばかりはおらずワクチンの接種も始まり、少しずつ反撃へと転じてはいます。このような環境の中でも、負けずに戦っていきたいと思います。
しかし、この影響により中山競馬場では少しずつ戻っていた観客を入れての競馬から無観客競馬に引き戻される結果となりました。目の前で走る疾走感や迫力を楽しみにしてくれていたファンの皆様には申し訳ありませんが、まずは健康を第一に考えてもらえたらと思います。
まずは昨年末に行われた有馬記念を振り返りましょう。コロナの年と呼ばれた2020年。最後を飾ったのはクロノジェネシスと北村友一君のコンビでした。宝塚記念に続きのグランプリ制覇で、名実共にアーモンドアイの女王の位置を引き継いだ結果となりました。公開抽選会も代表者が代わりに引く形になったりと変化がある中、5枠9番を引き当てました。第一印象として、他のメンバーとの力関係からも内すぎず外すぎず、非常に良い枠が当たったなという印象を受けました。更に例年より、そして前日より内の馬場が荒れたこともあり、まさに抜群のゲートになったなと感じていました。
レースはスタートから1枠を当てたバビットがハナを奪う形となりました。そこにオーソリティと3歳の2頭がレースを引っ張りフィエールマンも続く中、クロノジェネシスは道中動かず、どっしりと自信たっぷりのポジションを鞍上が選択しました。迎えた4コーナーでは、持ったまま流すかのようにポジションを上げると一度は先頭を奪った同じ勝負服のフィエールマンを交わし、着差以上の強さを見せつけてゴールしました。
2着には追い込んできたサラキアが入り、3着にはフィエールマンという枠で5と7となり、まさにコロナ(567)馬券になりました。有馬記念は1年を表すレースになることが多いですが驚きました。クロノジェネシスは荒れた馬場でも走れる強みがありますし、姉のノームコア同様、歳を取っても成長が止まらない良さがあります。これほどまでの強さを見せつけられると、海外での競馬も見てみたいなと、つい今の状況を忘れて思ってしまいました。
2着のサラキアも今年の松山君を象徴するような見事なレースぶりでした。プレッシャーの中、達成した牝馬3冠は彼を大きくし、勝負師へと変えました。勝負所でも一呼吸置くことを忘れず、展開の中から自分たちのベストレースを選択するようになりました。他に流されたりペースに惑わされたりすることが多いのが競馬ですが、実に素晴らしい成長を見せてくれたレースでした。
3着には2020年のMVJを受賞したルメールでしたが、こちらも展開や馬場を考えた上で、勝つためにしなくてはいけないレースをしたと思います。フィエールマンに中山は合っていない印象の中でこれだけの競馬をするのですから立派です。人がやりたいレースを馬にしてもらうのには、たくさんの技術と意思疎通が必要になりますから。1コーナーでレースが終わった馬もいた中、上位に来たコンビは最高のレースをしたと思います。ホープフルSや5日に行われた東西金杯の内容を書きたかったのですが、話がつきないので改めての機会にしましょう。
さて、5日に競馬が行われてすぐに9日から3日間開催が行われます。いつもの癖で京都だと思っていた私ですが、改装工事のため中京競馬場なのでお間違えなく。また中山と中京ということで「中」が被りますので、馬券購入にもご注意くださいね(笑)。そんな3日間の真ん中の10日には中京競馬場で名馬の登竜門シンザン記念が、最終日には中山競馬場でフェアリーSが行われます。
特に私の注目はシンザン記念に出てくるククナになります。前走は素晴らしい走りをするも阪神JFを制したソダシに負けてしまいましたが、こちらも本物だと思っています。完成はもう少し先という可能性を持った馬だけに、2歳G1を使わずにこちらまでゆっくりさせた効果に期待したいです。2021年こそ重賞を勝ちたい岩田望君とのコンビ、ロードマックスにも注目しています。京都金杯では父が代名詞のインベタからのレースで12番人気のケイデンスコールを重賞制覇に導きましたからね。息子としても腹をくくったレースで一発に期待したいです。
その他にも素質馬レゾンドゥスリールや絶好調松山君とのコンビになるカスティーリャもいます。アーモンドアイも勝ち上がった名馬への道はどの馬が勝つのか?大人になるとお年玉も出ていくばかりだと思いますので、是非ここでご自身のお年玉をゲットしてください。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。