'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
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【対談:安藤勝己×戸崎圭太】
頂点を目指すなら更なる進化をPart.3
2013/10/17(木)
リーディングへの道をみんなで一緒に駆け上がろう!
競馬ラボ独占コンテンツ「週刊!戸崎圭太」では、JRAのトップジョッキーとして活躍する戸崎圭太騎手の生の声を毎週発信!レース・騎乗馬の話題はもちろん、“ポスト・アンカツ”としての活躍が期待される中、その安藤勝己さんから直々に叱咤激励のコーナーも!?
他にも、定期的に展開するQ&Aコーナーでは、ファンからの質問にもお答えいただきます!ファンと本人の架け橋となるコーナーとして、どこよりも「ケイタ情報」を発信いたします!
地方No.1ジョッキーの名前を欲しいままにし、JRAへ電撃移籍。新たなステージで頂点を目指す戸崎圭太騎手を競馬ラボでは徹底!応援宣言します。目指せリーディング!そして、もっともっと戸崎圭太を応援しましょう!
戸崎圭太騎手の中央入り決定直後、競馬ラボにて実現した安藤勝己氏との対談。その中で安藤勝己氏は「手綱をもっと短くもった方がいい」と一つの技術的な金言を授けた。その後も、助言を常に意識していたという戸崎騎手だが、騎乗スタイルに変化はもたらすことができたのか?3月の対談の続編としての意味合いも強い今回。名手同士だからこそ語れる共通言語で騎手技術論をしっかりと交わしてくれた。
【対談:安藤勝己×戸崎圭太】バックナンバー
Part.1 移籍後、重賞初制覇の祝勝会当日に重賞V
Part.2 戸崎圭太の良さは拳の柔らかさ。もっと攻める騎乗を!
-:前に対談をした時に安藤さんからのアドバイスで手綱の話をされたと思うんですけれど、試しても、なかなか難しかったそうで……。
安藤勝己氏:俺が思ってるのは、やっぱりさっき言ったように拳が柔らかいから、そうそう短くしても柔らかく当たれると思う。日本の騎手って、平均して長手綱でしょう。
戸崎圭太騎手:日本ではそれ(長手綱)が基本ですね。でも、なかなか短くしようとしても、できなくて……。
勝己:だから、急に変えれねえのはわかるんだよな。自分の意志があるか、だから。
圭太:そうなんです。本当にスゴく意識して、変え出して、やり出して、何がなんだかわからなくなっちゃって、重心もわからなくなりました……。
勝己:変えようと思うと、ピタッとこねえ部分は絶対にあると思う。本来は最初からみんなそうだけど、海外のマネをして、慣れていったら、道中からちょっと短くしてね。それでも、急になかなか出来ないんだけど。
圭太:今はその意識を持っているだけで違うのかなと思って。
勝己:それが出来るのが柔さだと思うんだけどな。長手綱じゃ、絶対に不利。持ち替えて変なとこを動かしたら、敏感な馬はカーンと行っちゃうし。そういう点、外国人はそのままで操作が出来るから。やっぱり凱旋門なんかを見ていても、違うんだよ。流れがもっと遅い中で、ああいう競馬ができるから。
圭太:それは感じますね。
勝己:流れがもっと遅いんだから、あんな長手綱で折り合いが付くような遅さじゃないんだわ。
圭太:そうだよなあ、やっぱりそこですよね。
勝己:アイツら(外国人騎手)はあそこの中で抑えちゃうから。馬を御しちゃう。それで引っ掛からず、その中で上手く折り合いを付けてるんだから。日本のように急にペースが速くならない。段々、速くなってくるから。
圭太:そうですね。あの中であれだけ折り合ってますからね。
-:手綱の長さはどれくらい、何センチの差なんですか?
勝己:本当に一握りの違いで全然、違うから。重心も変わってくるし。
圭太:変わってきますね。
勝己:だから、それが微妙にピタッとこねえんだわな、乗ってると。なかなか直せねえんだわ、自分の形があるから。
戸崎騎手マネージャー:祐一さん(福永祐一騎手)なんかを見ていても……。
圭太:変わりましたね、アメリカに行ってから。ピタッとしてやってますもんね。
勝己:変えようとしてるな。日本の馬場がそういう風になったというのもあるわ。軽くてスピード競馬だから、長手綱で合うんだろうけど、やっぱりヨーロッパではちょっと難しい。俺なんか最初から無理やと思ってたから良いけど、海外に行くレベルじゃない、とわかってたけど、そういう部分は絶対にわかんないよ、自分のレベルが。
圭太:俺はまだ、(現役)20年あるから。2年で変えて行きますよ!
勝己:変えなきゃ。これで良いんじゃ、やっぱり先がな……。上を目指すんなら、そこ(乗る競馬場)にあった乗り方が出来なきゃ。
マネ:攻め馬とかでもレースを意識していった方がいいものですか?
圭太:攻め馬だと余計にダメだなあ……。
マネ:一番の練習といったら調教でしょ?追い切りでも。
圭太:でも、時計がスゴく重要だったり、ダメでしょう。それでバァーと終わっちゃうから、何かしっくりとこないな、短くしてても。ただ、短くするだけになっちゃって。
勝己:調教なんかでも向こう(海外)だと違うよ。日本は調教自体がある程度、出て乗ってだから。だから馬の走り方も違ってくる。体を伸ばし過ぎちゃってるから、こうやって上手く抑えられるような形に向こうはしているよな。
圭太:それがやっぱり大きいんでしょうね。
勝己:そういうのはやっぱり歴史の違いもあるんだろうね。
-:さっきの話の中で「重心」という言葉が出てきました。馬に乗ったことのない、競馬に乗ったことのないファンからすれば、重心の重要さがあまりわからないと思うのですが、かなり重要なモノですか?
勝己:と思うね。重心がなくても、合う馬もいるんだろうけど、本当はその馬、それぞれに重心を合わせるのが理想。基本的なモノだけど、なかなか難しいことだね、それが……。その点、外国人は良いな。でも、昔と随分と変わったよ。日本の地方競馬、同じ大井なんかでの乗り方も、圭太の頃と、的場(文男)さんの頃とでは。俺らはあれぐらいの頃なんだから、重心が全然違う。スゲエ後ろに乗ってんだな、どっちかと言うと。やっぱり前に乗んなきゃ(いけない)、と思うよな。
-:重心は前に掛ける方が良いということですか?
勝己:要は前で乗るということは、姿勢から考えると、その分、手綱も短くしなきゃいけない。昔の人は後ろに乗ってるから長手綱で乗ってるけど、本来はもっと前でね。外国人なんかはそうだよ。前で乗って、短い手綱で重心が前に前に行っている。そういう乗り方をして欲しいよな、これから先のレベルのことを考えると。みんながマネをするんだから、やっぱり成績が良いと。成績を出してると、みんながその乗り方のマネをする訳だから、今はみんな、「岩田追い」になってきてるやろ、フフフ(笑)。彼はあれで、成績を出してるから、スゴいような気がするんだわな。周りはそう思ってしまう。でも、あれは岩田が自分で身に付けたモノだから、あれをマネしようと思ったって、なかなか難しい。もっと言えば、マネをする方が難しいですよ。ああいう追い方もあるんだな、と頭に入れて、自分の中で微妙に変えていくなら良いけど。
マネ:15~20年前を考えると、みんなユタカさんのマネをした訳じゃないですか?だけど、あれもどっちかと言うとユタカさんならでは。あの長手綱で、普通じゃ、向正面で引っ掛かっちゃいますよね?
圭太:ずっと長手綱でね。
勝己:一つ言えるのは、そんなに出していかねえから。
圭太:そうなんですよね。みんな後ろからというか……。
勝己:スッーと馬任せで行く形で、ユタカはその頃、今よりももっと強い馬に乗ってたからね。そういう馬に乗せたら、本当にスゴく上手いよ。スムーズに本当に知らん間に良いとこに出て、グーンと脚を使わせないけど、ジワジワと来て、最後にサッーと伸ばすような。馬も(脚が)溜まるし。正直、最近の他のジョッキーみたいにグアッーとやったら、馬は傷むと思う。本当に最初からあんな競馬をさせたら、馬には良くねえと思う。
-:最近はファンの間でも、「尻もちを付くような騎乗スタイルはどうなの?」と耳にします。
勝己:地方ならあれで良かったのかもしれない、確かに。中央ではやっぱり、本来のレースの流れが違うから、追ってどうのこうのという馬は関係ないね。それまでいかに良い流れで来てるか、というのが大事だと思うから。要は良い位置を取るのが、勝ちに一番近いパターン。レースを勝つためには位置取りが一番。地方競馬なんて、位置取りより、いかに良いリズムで走らせるかというのが大事だから、やっぱりああいう乗り方になったんだと思う。だけど、岩田がある程度、成績を残しちゃってるから。でも、アイツは最初からそうなんだわ。何か自分で感じたもんがあるんだろうな。そう思うけどな。
-:あの人はあの人で良いとして、それを二番煎じで追ってしまうというのは良いことではないんですね?
勝己:だから、マネをするのは良いよ。ただ、見た目だけマネをしたってしょうがないというか、基本的に何でアイツは馬が動くか、というのを考えないと。人それぞれ、関節の硬さも全然、違うんだから、自分のモノにしなきゃ。岩田は最初から自分のモノにしてるから良いんだ。
-:岩田騎手はその部分が長けていたんですね。
勝己:うん、そうだろうね。俺はアイツよりデビューはだいぶ早いから。その分、地方競馬に交流なんてなかったから。それで岩田が出てきて、長手綱プラップラッで追うというのを見てて、俺は正直、見てなかったけど、長手綱は絶対にダメ。さっき言ったけど、馬はハミに頼ってて、ハミで操作するものだと思ってたから。ただ、それが正しいとも言えねえのよ、確かに。本当にそれが正しいとも言えない。
-:正解がない世界じゃないですけど。
勝己:そうそう。
圭太:岩田さんの地方時代って、メチャメチャ長いですよね。今でも本当にスゴいですよ。だから、「あの感覚を理解しろ」と言われても、多分、わからない部分があると思うんですよね。あれで馬もよく動くし、よく勝つな、というのはありましたよね。本当にプランプランなんですよね。今でも長いですけど、今以上で。
勝己:前はスゴかったね。だから、色んな感覚があるからね。だから正直、何が良いかわかんないよ、本当に。ただ、自分のモノを持ってるから。
-:函館の最終週は相当に馬場が悪かったですけど、あの中で結構、(岩田騎手は)成績が良かったですけど、そこら辺は馬を動かす技術があると思いますか?
勝己:俺からしたら、馬場が悪い時ほどガチッと決めて、馬を伸ばしてやらん方が良いような気がするけどな、スベってしまうから。それでいつも考えとったのは、それは俺らの感覚だし、やっぱり馬場が悪い時はちょっとハミを頼らした方がビューンとした脚を使わないんだし、(馬場が)刳れ(えぐれ)ちゃうと本当にスベるから、馬って1回バランスを崩すとなかなか立ち直れねえし、そういう部分では絶対にバランスを崩さないように硬めに当たった方が良いんじゃないかと思ってたんだ。それが俺はハミだと思ってたから。岩田は違う感覚を持ってるんだろうな。岩田に聞いてもわからないと思うよ、アイツ、フフフ。独特な感覚を持ってるから、多分。
圭太:いや~、それは思いますね。
-:芝の道悪での走らせ方の違いというのはあるのですか?
圭太:やっぱり、ノメりますよね、えぐれると。そこは(手綱を)持ってなきゃいけないし、持ってないと怖いというか。
-:ダートでの馬場の違いでの(乗り方の)変化はないんですか?
圭太:そうですね。ダートでは僕はあんまりないですかね。何か感じるモノでやってるかもしれないですけど、あんまり変えているという意識はないですね。
(対談はPart.4に続く)
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成し、NARとのダブル1000勝は史上4人目の快挙を挙げた。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。