予てから「乗り難しいタイプ」とエアソミュールを評する戸崎騎手だが、次戦の札幌記念には期せずして、ゴールドシップ、ハープスターのTOPホースが参戦。自らとの戦いだけでなく、ライバルも意識せざるをえない戦いとなる。しかし、「乗り難しさ」は裏を返せば、成長の余地、余力があるということも言えるはず。近親にG1馬を持つ良血エアソミュールならば、一線級と相対しても不思議ではないだろう。夏のBIGレースをどんな騎乗で攻略するのか、ジョッキーを直撃した。

エアソミュール自身の競馬を

－：札幌記念(G2)はエアソミュール(牡5、栗東･角居厩舎)に騎乗されます。前回の鳴尾記念でようやく重賞初勝利になりました。しかし、そこまでの実績やパフォーマンスを考えたら、重賞をいつ勝ってもおかしくない馬ですが、今回はゴールドシップ、ハープスターら著名馬もこぞって出て来ます。逆に言えば、あの馬たちにもコースを考えたら、決して簡単な条件でもないと思いますので、挑戦者であるエアソミュールにとっても、面白い一戦になるのかなと思います。

戸崎圭太騎手：そうですね。なかなかの好メンバーが揃いましたし、エアソミュールに関しても「試金石」じゃないですかね。そんな言葉があてはまるでしょう。

－：何か、今、“俺言ったぞ”みたいな感じが。

圭太：感じましたか、フフフ。

－：結構、普通のコメントだったと思います。

圭太：普通ですか(笑)。

－：ええ(笑)。コース条件としては、東京でも勝っていますし、小回りでも勝っているので、そんなに問題ないとは思いますが、あくまで課題もある馬なので、そこがどう出るのかな、という懸念があります。今回はいかがでしょうか？

圭太：当日の落ち着きに尽きますね。僕はエアソミュールで4戦していますよね。中山、東京、中山、阪神。通算4戦3勝で。その中でも中山記念の時はとにかく返し馬からテンションが高かったですね。それがなければ、精神的にも落ち着いてきたのですかね。

－：課題の一つとして挙げられるのは外枠だと思います。

圭太：それでも、鳴尾記念も外枠でしたからね、大丈夫でしょう。前回は前半は結構(ペースが)遅かったですが、我慢も利いていましたから、今は(折り合いを)付けられますよ。中山記念の時は当該週の追い切り時計も出ていたように、それでスイッチが入ってしまって、当日にテンションが高かったことに繋がったと思うんですよね。他の3戦は雰囲気が良かったので、そうなってくれればね。

－：多頭数で揉まれるような競馬は、もう問題なさそうですか？

圭太：大丈夫かな、と思ってはいますが、難しさはまだまだありますね。この間なども、手応えの割には追ってから遊んでしまうようなところはあるので。その辺は乗り方で色々と変えられる強みがあると思います。

戸崎圭太

－：前回の競馬を見ると、直線での理想とする形はあるのですか。やっぱり相手がいた方が良いのかどうか、いかがですか？

圭太：相手がいた方が良いですね。あんまり早く抜け出すと、ソラを使うところもあると思います。だから、最後まで持ってられるというか。反面、追い出しが難しいというか、追い出しを我慢出来る手応えもありますし、乗りやすいし、難しいタイプという気がします。

－：乗りがいがあるタイプですね。

圭太：そうですね。

－：次回の札幌記念は前にいそうな馬(ゴールドシップ)もいますし、後ろから来るような馬(ハープスター)もいると思うので、レース展開的にも読むのが難しいというか、反面、面白いいうか、エアソミュールとジョッキーにとっては悩ましい一戦になりそうです。

圭太：ただし、考えても他馬の動きは左右できませんし、エアソミュールのレースをすれば良いのではないでしょうか。

－：もちろん自分の馬のリズムというか、競馬に徹するということですね。どういった調整を組んでいるのかは未知数ですが、輸送がなくて、リラックスのできる北海道も良い方に向きそうですね。

圭太：そうですね。北海道でも勝っていますよね。洋芝も大丈夫でしょうし。

－：脚質もコース、芝の適性というところに関しては、割とオールマイティにこなせるタイプではあるのですか？

圭太：そう思いますね。

－：まともに走ったら、もっと上に行けそうな馬ですか？

圭太：前回も余力があったように、まだまだだと思いますよ。

－：精神面がもう少し良くなってくれば、というところですか？

圭太：ええ。それでも、良くなってきているんじゃないですか。昔は乗っていないので比較は分からないですが。

戸崎圭太

－：4回乗ってきた中で何か変化はあるのですか？

圭太：そこは特にはありませんね。

－：2カ月ぐらいの間隔が空いても、それなりにこなせるタイプですね。

圭太：そう思います。詰めて使うよりは良い感じはします。間隔的にもちょうど良いのじゃないですか。

－：今夏、最注目の一戦となりそうです。意気込みをよろしくお願い致します。

圭太：ようやく重賞も勝てて、軌道に乗っていますし、もともと力があった馬なので、今後の活躍も期待したい1頭なのでね。強い相手もいますし、楽しみなレースになると思うので、エアソミュールのパフォーマンスを引き出したいですね。

－：札幌は楽しみですか？

圭太：そうですね、楽しみですね。乗ったことはないのでね。函館や地方の門別はありますが、そういった意味でも期待感を持って挑みたいですね。

今年は暑さ対策をして挑む夏競馬

－：秋まで続く新潟開催の見通しもお願いします。今年は中山競馬場の改修により、スプリンターズステークスも行われますね。

圭太：新潟は暑いのでね、暑さ対策は気を付けないといけないな、という気はしています。

－：そういった対策は準備されているのですか？

圭太：いやいや、この間の中京のプロキオンSの時に、軽い熱中症になってしまって。

－：それは珍しいですね。

圭太：初めてですね。地方時代はあれだけ夏場の平日に乗ってたりしていたのに。その日の中京もそれほど暑くはなかったのですが、余裕過ぎましたかね。

－：浦和競馬場などはすごく暑そうですよね。

圭太：何が凄かったかと言ったら、その日の中京は湿度が凄くて。検量室もエアコンがそんなに効いていなかったので、油断していたんですよね。だから、キツくてキツくて。

マネージャー：一雨降った後ですしね。

－：その割には勝っていましたよね。

圭太：後半はメイン、最終と勝ちましたが、それくらいが良いのかもしれないですね、フフフ。そういう話ではないんですよ、熱中症の話で(笑)。だから、キツかったですよ。ビックリしました。もう頭が痛いし、フラフラするし、胃も気持ち悪い。悪いものが全部一緒くたに来てしまった感じで。

戸崎圭太

－：ヘルメットを被っていてもなるものですか？

圭太：でも、日差しはそんなになかったんですよ。だから、油断しちゃったんですよね。あれからは気を付けてますし、新潟でも気を付けなきゃな、と思っています。

－：その日は乗り鞍が多かったですね。体重の調整過程で水分の摂り方などに問題があったのですか？

圭太： 10頭ですかね。でも、体重は関係なかったですね。水しか飲んでいませんでしたから。少し塩分や糖分などを摂らなさ過ぎたかな、という感じでしたね。あとは体を冷やさなかったので。

－：これは前に伺ったかもしれませんが、1日の騎乗数に制限のある地方時代と違って、中央に来てからは1日の乗り鞍が多いと思うのですが、食事はどうしているのですか？

圭太：夏は摂らないですね。食べる気分にもならないし。冬だとちょっと食べようかなという気になりますが、それもお腹が空いているから、とかじゃなくて、食べておいた方が良い、という意識で食べているだけで、気も張っていますからね。あんまりお腹も空かないですね。

－：あれだけ乗っていたら、食べる暇はありませんよね。

圭太：ないですね。レースの合間に一口、二口というぐらいですね。本当は摂るべきらしいですが。

－：そして、今年は新潟開催が続きます。

圭太：長いので、新潟だから、ということではないのですが、一つ一つ大事に乗っていきたいという感じですね。

－：ああいう軽い馬場で開催が続くと、芝の傷みも激しくなりそうな感じがします。

圭太：ああ～、そうですね。そこはちゃんと読みながらいきたいですね。

戸崎圭太

－：最後にスプリンターズSも控えていますので、新潟の見所、コースの醍醐味などを改めて教えてください。

圭太：なにせ暑いのでね。馬も調子が狂ったりすることも出てくると思いますので、馬の状態などもよく見ていただけたら、と思います。競馬も外回りコースですと、本当に広大ですからね。力がある馬が来る競馬場でしょうし、ダイナミックな光景を観てほしいです。

－：夏競馬を毎年経験してきて、馬の状態のどういった部分を見極めれば良いですか？

圭太：覇気がある馬じゃないとダメですね。常歩でもデレデレ歩いている馬などは、バテているだろうし、そういう元気はこの時季だからこそ必要かなと。

－：もちろん、それはたくさん見て行けば、ファンでも分かるということですね。

圭太：そうです。自分が乗る前にみてもわかる時はありますからね。

－：そして、自身は得意の広いコースということで、勝ち星を重ねたいですね。

圭太：ハイ(笑)。

－：分かりました。夏競馬も引き続き良い騎乗を。ありがとうございました。

圭太：ありがとうございました。