初めての個人所有馬ジャスタウェイがレーティング世界No.1の評価を獲得し、種牡馬に。
人並み外れた馬運の持ち主が脚本家という本業のキャリアを活かし、馬主ライフを書き下ろします。
『かめや』
2017/2/22(水)
皆さんこんにちはライター大和屋です。突然ですが皆さん「かめや」を知っていますでしょうか?かめやというのは東京競馬場の西門付近にある居酒屋のことで昨年の暮れに惜しまれながら閉店してしまったお店です。今回はかめやの思い出を書きたいと思います。
僕がかめやを知ったのは某知り合いからの紹介でした。初めて店に入ったその時はその安普請に大丈夫なのか?と思ったのを覚えています。それもそのはず西門を出た先にあるお店たちはどこもかしこも壁がベニヤ板でできていて暑いときは暑く、寒いときは寒い、常に日本の四季に準じた店内の雰囲気であり、そのたたずまいはお世辞にもきれいなお店とは言いづらい場所でした。
しかもトイレは近くの公衆便所を使用します。なんとも言いづらいその外観に、不安を感じた僕でしたが、こなれた感じで注文を取る僕の知り合い、並んだメニューを食べてみるとあら美味しい。お酒のラインナップもたくさん揃っているし気取らないその姿勢に僕はすぐに気に入ってしまいました。食べ物がおいしく良いレモンサワーがあれば見た目がどうだろうと関係ありませんからね。
かめやの店内にはテレビが常にグリーンチャンネルを放送しているのでレースを見損なう心配もありません。皆さんここで腹ごしらえをしてから競馬場へと乗り込むのでしょう。そういう僕らもそうでした。
その独特の雰囲気にも慣れてしまえばこちらのもので、いつしか東京競馬場に行くときは必ずそこに顔を出すのが習慣となっていました。緊張をほぐすためのレモンサワーに、ゲン担ぎのとんかつもかめやでいつも食べました。他にもいけば必ず頼む焼き鳥やモツ煮込み、どれもこれも美味しかったことは言うまでもありません。気が付けばこのお店にはたくさんの思い出ができていきました。
一番の思い出はSスポーツのNさんと知り合うことになったこと。ジャスタウェイの出走の時に、僕らがしっぽり飲んでいると、後ろの方からしきりにジャスタウェイのことを推す声が聞こえてきました。気をよくした僕らはその席についている皆さんにお酒の差し入れ、それがきっかけになって知り合い友人になりました。彼とは今でも仲良くさせてもらっております。
それだけでなく競馬ラボのPOGの対談をここでやったこともありました。馬主の丸山担さんとの対談が確かここだったと思います。馬の出走の時には毎回顔を出していたのでジャスタウェイのポスターを張らせてもらったりもしたりしました。とにかく府中での馬の出走の時には必ずここに顔を出していたので、皆どうせ大和屋はここにいるだろうと知り合いが先に飲んでいたり、顔を出しにきたりといろんなことがありました。
2015年春に丸山担オーナーとPOG対談を「かめや」で行わせていただきました
とにかくここではレモンサワーととんかつを必ず食べておりました。あまりに早く到着しすぎてべろべろになってしまったり、宴会が盛り上がりすぎて口どりに出損ねた知り合いもいたことはここだけの話です。常連さんに応援してもらったり、頑張れよと声をかけてもらったりと、本当に暖かいお店だったと記憶しております。
かめやは惜しまれながら去年の暮れに閉店しました。終わってしまうことはさみしいことですが、始まりがあれば終わりがあるのが物事の道理なのかもしれません。あの店でたくさんの人たちと杯を酌み交わし、楽しい時間を過ごさせていただきました。 今ではもう会わない人もそうでない人も、たくさんの人たちと一緒にお酒を飲みました。たとえかめやが無くなろうともその思い出がなくなることはありません。ただやっぱりあのとんかつがもう食べられないかと思うと僕は残念でなりません。皆さんにもそういうお店はありますか?ありますよね?
というわけで現在、府中競馬場付近のお店を物色中です。どこか良いお店、ありませんかねえ?
近況です。イストワールファムは忘れな草賞へと向かいます。次走もルメール騎手が乗ってくれるみたいです。楽しみにしております。
了
プロフィール
大和屋 暁 - Akatsuki Yamatoya
脚本家・作詞家・ライター。若くして一口馬主に出資を始め、クラブ馬主歴2年目にハーツクライと運命的な出会いを果たすと、有馬記念、ドバイシーマクラシックを制す大活躍。しかし、ノド鳴りによるアクシデントに見まわれ、突如として引退したことに一念発起、馬主になる決心を固めた。個人馬主としては、初めてデビューを果たした所有馬ジャスタウェイが大活躍の強運ぶりを発揮。遂には、目標であったドバイ遠征を実現させ、ドバイデューティーフリー(現在のドバイターフ)を圧勝。「自らの馬でドバイを勝つという」夢を実現させたばかりでなく、そのパフォーマンスが評価され、2014年度のワールドベストレースホースランキングでは、日本馬史上初の1位を獲得している。
現在の現役所有馬はカリボール、マジカルステージ、ジャスコ、キングロコマイカイ。一口馬主や共有馬ではアウィルアウェイ、ルーツドール、イストワールファムなどに出資している。
本業ではアニメ版「銀魂」、「スーパー戦隊シリーズ」などの脚本を手がけ、2020年公開の映画「デジモンアドベンチャー」も担当。愛馬との数年間に及ぶ足跡を綿密に綴った『ジャスタウェイな本』などの執筆も手がけた。