研究員ヤマノの重賞回顧

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4/14日(土)、中山競馬場で行われた中山グランドジャンプ(障害4歳上、JG1・芝4250m)は、中団から徐々に進出したB.スコット騎手騎乗の1番人気カラジ(セン12、豪・E.マスグローヴ厩舎)が、最終コーナーで先頭にたつと、猛追してくる4番人気リワードプレザンの追撃を3/4馬身凌ぎ切って同レース3連覇の偉業を成し遂げた。

ハナを切ったのは7番人気ストームセイコー。
まず第1障害で3番人気アグネスハットが早くも落馬するアクシデントが発生したが、その後は特に脱落する馬もなくレースは進んだ。
スタート当初は中団後方で待機していたカラジは徐々に進出し、インコースをそつなく周り、3コーナーを迎える頃には先団2、3番手まで上がっていた。
そして勝負の最終コーナーでトップに踊り出ると残す障害はあと一つ。
最終障害を先頭でクリアしたカラジにスコット騎手の強烈な風車ムチが容赦なく飛んだが、カラジは懸命にそれに応えるように脚を伸ばし、堂々、栄冠を勝ち取った。
リワードプレザンの猛追を凌ぎ切ったカラジの勝負根性には本当に頭が下がる思いがした。
それにしても鞍上のスコット騎手の風車ムチには執念すら感じられた。
同レース3連覇の偉業達成は、平素は障害レースを使う事もなく、ここが目イチ勝負だという陣営の並々ならぬ執念がもぎ取った気迫の勝利ではなかろうか。


同4/14日(土)、阪神競馬場で行われたマイラーズC(4歳上、G2・芝1600m)は、単騎逃げを打った藤田伸二騎手騎乗の9番人気コンゴウリキシオー(牡5、栗東・山内研二厩舎)が、最後まで後続を寄せ付けず、レコードタイムで3つ目の重賞勝ちを飾った。

スタートダッシュはあまり良くなかったコンゴウリキシオーだが、二の脚を使ってハナを主張すると、そのまま後続を引き離し単騎逃げの形に持ち込んだ。
軽快に逃げるコンゴウリキシオーの脚色は最終コーナーを迎えても衰えず、後続との差はまだ3馬身以上あった。
後の焦点は、G1馬をはじめとした実績馬が軒並み顔を揃えたこのレースで、どの馬がコンゴウリキシオーを捕まえに行くかに絞られたが、女傑スイープトウショウが1.1/4馬身差まで迫るのがやっとだった。
1番人気エアシェイディは-18kgが堪えたのか、11着に敗れた。
豪腕藤田騎手とハマれば高い能力を発揮するコンゴウリキシオーのコンビに、他の馬たちはしてやられたという感じのレースではなかっただろうか。
成績にはムラがあっても、非凡な能力を持つ逃げ馬には常にマークが必要だということを改めて認識させられた一戦だった。


4/15日(土)、中山競馬場で行われた皐月賞(3歳牡牝、G1・芝2000m)は、道中で先頭にたった田中勝春騎手騎乗の7番人気ヴィクトリー(牡3、栗東・音無秀孝厩舎)が、ジリジリ伸びてきた15番人気サンツェッペリンとゴール前で強襲してきた2番人気フサイチホウオーとの壮絶な叩き合いを制し、栄冠に輝いた。

まずハナにたったのはサンツェッペリンだったが、掛かり気味に上がっていったヴィクトリーが結局逃げる形となった。
スタートで遅れた1番人気アドマイヤオーラ、2番人気フサイチホウオーはそれぞれ後方3番手、5番手で折り合いに専念。
勝負の最終コーナーでもヴィクトリーと人気両頭との差はまだ詰まらず、早くも波乱の匂いが立ち込めてきた。
直線半ばでも逃げるヴィクトリーと2番手サンツェッペリンの脚色は良く、場内は騒然となったが、2頭で完全に決まるかと思われたところに猛然と追い込んできたのが、4連勝中のフサイチホウオー。
ゴール前は3頭の激しい叩き合いとなったが、結局ハナ差でヴィクトリーに軍配があがった。
武豊騎手騎乗の1番人気アドマイヤオーラも最速の上がりでよく追い込んできたが届かず、4着に敗退した。
勝った田中勝春騎手は、これが実に15年ぶりのJRA G1勝ちだっただけに、今回の勝利は感慨ひとしおであったことだろう。
その間いろいろと揶揄されることも多かっただろうが、今回、ハナ差で勝利をモノにできたのは、彼の好騎乗なしではまず考えられない。
ただでさえ気性が難しいヴィクトリーを、もし前半かかった時点で無理に抑えてしまっていたら、この勝利はなかったかもしれない。
ヴィクトリーの能力の高さを存分に引き出した、15年間風雪に忍んできた男に心からエールを贈りたい。