迷いのない騎乗で真一文字に勝利への道を切り裂く/平林雅芳の目

トピックス

日曜東京11R
天皇賞・秋(GⅠ)
芝2000m
勝ちタイム1.57.2

勝ち馬:カンパニー(牡8、栗東・音無厩舎)

カンパニー、鞍上横山典J。迷いのない騎乗で
真一文字に勝利への道を切り裂く。お見事!


これ以上は入れないほどに、パドック内は馬主関係やら生産者で大賑わいで、向こう側を歩く馬の馬体がまったく見えない状況。
カメラメン席にお邪魔させて貰い、下から馬を見上げた。
どうにもいつもと勝手が違って、馬の観たてが判らない。
ウオッカは相変わらず落ち着いての周回であった。
そこを早めに切り上げて、馬場入場を待つことに。
一番最後に入ってきたのがウオッカ
ゆっくり二人引きで歩を進め、誰もいなくなったゴール板前からキャンターで流して行った。
同時に、スタンドから大勢のファンの『ウオッカ!』の声援がこだましていた。
国民的アイドルホースなのが良く判る瞬間でもあった。

ファンファーレが目の前で高らかに鳴り、手拍子がこだました。
そして140回天皇賞のゲートが開いた。
今日のウオッカは、そんなにロケットスタートではなかった。
内からスクリーンヒーローが一番のスタートを切って先手かと思われた時に、外からエイシンデピュティがさーっと上がって先頭に立った。
マツリダゴッホキャプテントゥーレが2番手グループとなった。
ウオッカはと観ると、今日はかなり後ろ目の位置だ。
すぐ目の前にカンパニーがいて、隣にオウケンブルースリがいる。
カンパニーの方が前に位置しているのに驚いた。

3コーナーを先頭のエイシンデピュティが廻って行く。
場内放送では前半1000メートル通過時計を『59・8』と告げた。
エイシンデピュティ先頭で、2番手の内がキャプテントゥーレ、外がマツリダゴッホだ。
そしてそこから少し離れて、スクリーンヒーローが内ラチぴったりの4番手、直ぐ後ろにアドマイヤフジ
その真後ろがカンパニーで、その後ろがウオッカといった縦位置となり、そこそこには流れているのだろうと思えた。
ウオッカの位置がかなり後ろなのが気になったが、『目の前にカンパニ-がいるのだから悪いはずがないと』自分に言い聞かせた。
そして馬群は4コーナーへと向かっていった。

4コーナーをエイシンデピュティーが先頭で廻り、直線に向いた時でも手応えは十分残っているように見えた。
少しして、キャプテントゥーレが横に並んだ。
そして後続がどっと被さってきた。

4コーナーのコーナーリングで後ろに位置していた馬たちが、かなり前の馬との差を縮めてきた。
先に内目から外へ出したのがスクリーンヒーローだ。
しかしその直後に、カンパニーも同じように外へ出した。
そのすぐ後ろで、ウオッカもかなり接近して前を伺っているのが見えた。

残り1ハロンの標識あたりでスルスルとスクリーンヒーローが前の馬を抜いて先に抜け出す。
しかしその直後にカンパニーが一気に伸びてスクリーンヒーローに並びさらに前へと出て先頭に踊り出た。
それを追うスクリーンヒーローだが、カンパニーとの勢いの差は歴然であった。
その後ろでウオッカが外へ出すスペースを確保して、瞬時に出てきてスクリーンヒーローの内へ切れ込むように進路を取って前を狙った。
しかし、カンパニーの勢いはますます増したかのように加速され、栄光のゴ-ルへと向かっていた。
一旦は、勢いからも2着はと思えたウオッカだが、スクリーンヒーローを交せなかった。
その2頭から少し離れて、右後ろでは4着争い。
オウケンブルースリが、前が開くのを待っているシーンがあった。
何とか最後に開いて、シンゲンを交わして4着であった。

相手うんぬんでなく、自分の馬の脚が一番とばかりに内で脚を貯めていた、横山典Jの乗り方だった。
カンパニーウオッカの前で位置したのは、そんな強い気持ちを持って臨んだからではなかろうか。
ウオッカがどうのではなく、カンパニーが持っている脚を最高に引き出してやりたいとの思いを感じた乗り方。
引き上げてきたウオッカ武豊Jが、ポツリと馬上から『勝った馬の脚は凄い。強いわ~』とひと言くれて、枠場の方へと進めていった。

昨年の天皇賞時より断然体調がいいと、中間で音無師が人目をはばからずに言っていた。
その昨年でも凄い脚を使っていたのを目の前で見ていた。
今年の方がもっとやれるカンパニーなのだから、敵う訳がないと後で気が付いた。
2着ではあるが、スクリーンヒーローもGⅠ馬である。
一番いいスタートから内で脚を貯めていて自分の力を出し切ったのだから、これだけ走られても不思議でない実力馬だ。

キャプテントゥーレには時計が速かったのだろうか。
ドリームジャーニーも、左廻りよりも右の方が動けるのか。
シンゲンも、オウケンンブルースリとの追い合いで負けていた。
むしろオウケンは、JCではかなりうるさい存在になるだろうと思えるレース内容だった。
恐るるべき音無勢である。

今日は何よりも、カンパニーの一番の末脚を遺憾なく発揮させた横山典Jの完璧な騎乗ぶりに脱帽。
敵ながらアッパレでありました・・。


土曜京都11R
スワンS(GⅡ)
芝1400m
勝ちタイム1.20.3

勝ち馬:キンシャサノキセキ(牡6、美浦・堀厩舎)

レース前から大混戦と思われたスワンS
予想どおりにマイネルレーニアの逃げから始まったが、混戦に終止符を打ったのは、スミヨン騎乗のキンシャサノキセキ
先に抜け出たアーリーロブストとの追い合いを制して、久々の重賞勝利を成し遂げた。
鞍上スミヨンJは来日初日から重賞制覇と、今年も外国人騎手の活躍は日本市場を脅かす事となりそうだ・・・・。

ゲートオープンから先頭ではなかったが、マイネルレーニアがやはり先手を主張。
すぐにアーリーロブストが2番手の外目につけた。
内からショウナンカザンもいいポジションを確保。
この位置にはキンシャサノキセキもいた。
前半3Fを34.7であるから、そう速いペースではなかった。
トレノジュビリークラウンプリンセスも好位につけていた。
1番人気となったスズカコーズウェイも、ソコソコの位置をキープ。
外枠を引いたマルカフェニックスでさえも、この馬としてはけっこう前に位置しているのが確認できた。

3コーナーから4コーナーへと向かうも、そんなに動きはなかった。
馬群もそう縦長にはならずに凝縮していて中団がひしめきあっている感じで、比較的に前が有利な流れとなっていた。
1000メートルの通過が57.2、1200メートル通過が1.08.6だから、今の京都芝ではそんなに速い流れとはいえない。
坂の下りあたりで、グラスキングが弾かれたようにちょっと下がるシーンがあった。
馬群が密集して、少しの動きにでも反応がみられた。
そんな中団を尻目に、先頭グループは楽な感じで4コーナーへと向かった。

直線入り口で先頭に立ったのがアーリーロブスト
スルスルといい感じで出てきた。
内では、ショウナンカザンが内ラチ沿いを進んでいた。
その一瞬後に、キンシャサノキセキがいい伸び脚を見せ出して、先に抜け出たアーリーロブストの内から、スミヨンJの左ステッキに呼応して伸び並び、そしてクビ差出たのがゴールであった。
内ラチ沿いのショウナンカザンが3着をキープと思えた瞬間に、大外からマルカフェニックスがやっと伸びてきて交わした。
そこから少し遅れて、1番人気スズカコーズウェイが顔を出していた。

右側だけ白いブリンカーをして登場のキンシャサノキセキが、近走の不振をふり払う仕事ぶり。
先行馬ペースで流れたものだが、それもまた勝負の流れ。
この勝利で復活は間違いなし。
ウイナーズサークルへ向かうスミヨンJが、通訳に『ホ・ン・コ・ン・ス・プ・リ・ン・ト』と言うのが聞こえたから、次はそのレースになるのかも。
短距離路線にまた強い馬が戻ってきた印象だった。
2着アーリーロブストは、3歳馬でイロイロと適性を求めていた感じだが、どうやら今後の路線が多少見えてきたような気もする。
今の京都の芝コースの状況から来る決着を良く出したレースでもあった・・・・。