高橋摩衣のインタビュートピックス「マイが聞く!寺本秀雄厩務員」

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高橋摩衣のインタビュートピックス「マイが聞く!」。今回はジャパンカップに出走予定のスクリーンヒーローを担当する寺本秀雄厩務員にお聞きしました。

高:寺本さん、お忙しいところすみません。今日もよろしくお願いします。

寺:いえいえ。また摩衣ちゃんにお会い出来て嬉しいです(笑)。

高:ありがとうございます(笑)。(厩舎の調教予定ボードを見て)あ、木曜日は鹿戸先生がスクリーンヒーローに乗るんですか?

寺:そうそう。角馬場でね。先週の木曜日、初めて先生が跨ったんだよ。

高:先週も、鹿戸先生が角馬場で乗ったんですか?

寺:そうです。

高:へー。(厩舎の調教予定ボードを見て)明日の木曜日は、角馬場のあとはプールに行くんですね。

寺:厩舎に帰って来る前にちょっと寄ってね。

高:そういえば、天皇賞の後、初めてプールを使ったんですよね?

寺:そうそうそう、まあ少し作戦を変えてっていう事で。

高:寺本さんがご覧になって、プールに入っている時のスクリーンヒーローはどんな感じでしたか?

寺:一生懸命泳いでいましたよ。やっぱりオールマイティにならなきゃね。陸上だけじゃなくてプールで水泳も、ね(笑)。

高:10種競技みたいですね(笑)。プールに入った後、何か目立った変化はありましたか?

寺:いや、特別大きな変化はありませんけど、プールに入ると、どの馬も気持ち的に落ち着くところもありますからね。

高:リフレッシュされた感じになるんですか?

寺:そうですね。でも、そうは言ってもヤンチャなところは変わらないですけどね。

高:そういう性格みたいなものって、急にガラッとは変わらないですよね。

寺:そうですよね。僕に向かって「上品な事を言え」って言っても、言えないのと一緒で(笑)。真面目な事を言おうとしても、どうしてもスベってしまうから(笑)。

高:アハハ(笑)。寺本さん本当、冗談お好きですよね。えー、プール以外にも坂路に行ったり、天皇賞後は調整が変わりましたね。

寺:先生の作戦でね。今までと同じような方法じゃ、連覇は狙えないかなあ?なんていうのもあるのかもしれないし。いろいろと考えるところがあって、今回のような調整にしたんじゃないかと思います。

高:そうなんですか。それにしても、前走の天皇賞は頑張りましたね。

寺:とにかくホッとしましたね。安堵感が…。前回はブリンカーを着けてレースをして。まあ、勝つに越したことは無いけど、何とか面目の立ったレースをさせてもらえましたからね。北村ジョッキーも上手く乗ってくれて。

高:そうですね。

寺:内枠を上手く活かして、前に行って積極的な競馬をしてくれたからね。実戦から間も空いていたし。

高:しかも休み明けはそんなに歓迎材料でもなく。体調が良くなって来ていたと言っても「まだまだかなあ」とおっしゃっていましたよね。

寺:期待と不安が入り混じった、複雑な心境でしたね。去年札幌で、休み明けで出走した時には、まだクラスも下だったので勝てましたけどね。その時に乗った横山典弘騎手が「もっとラクに勝てるかな、と思っていたら、焦ったよ」なんていう言葉もあったくらいだから。

高:そうなんですか。その時はクラスが下だったという事もあって勝ちましたけど…。

寺:もう今はオープンの最高峰で、豪華メンバーになってきて、そう簡単には行かないですから。天皇賞ではウオッカを抑える事は出来ましたけど、もう一頭上にベテラン(カンパニー&横山典弘騎手)がいたからねえ。それにG1連勝ですから、馬も屋根も凄いベテランですよね。あちらの厩舎のスタッフも頑張って。あれは敵ながらアッパレですよね。

高:凄い切れでしたよね。

寺:ああいう先輩を見習わなくちゃね。僕たちは馬も人もまだまだ若輩者だから(笑)。

高:アハハ(笑)。それにしてももう今週がジャパンカップだなんて、早いですよね。

寺:早いですね。年を重ねるごとに一年が早くて(笑)。本当に一日24時間あるのかな?と思うほど早く感じますよ。

高:スクリーンヒーローの調子は現在どうですか?

寺:ヤンチャさも戻って来ていますし、何とか恥じないような仕上がりになっていると思います。

高:天皇賞の時は490キロで出走していましたが、現在の体重はどのくらいですか?

寺:ちょっと締まっているだろうから、488くらいかな。8の末広がりで(笑)。

高:おめでたいですね(笑)。

寺:これ以上、急激に増える事も無いし、急激に減るという事も無いと思います。体重うんぬんは、それほど気にしなくても良いかなって思うけど。

高:体重よりは、馬のやる気であったり、気配の方が大事ですか。

寺:そうそうそう。

高:走る気になって来たな、というのはどこか見ていて分かるところがあるんですか?

寺:うん、今日(11/25)みたいな最終追い切りで、坂路でも最後の1ハロンくらいを併せ馬で、キッチリ馬体を併せるでしょう?そうすると、気持ちが乗ってくるんですよ。

高:へー。

寺:レースの当日なんかは、朝、美浦でカイバを食べたら、競馬場では戦闘モードに入るのか、食べないですね。

高:自分で調節するんですね。頭が良いですね。

寺:そういう意味では頭が良いですね。大体、最終追い切りが終わったら、気持ちが入って来るからね。「レースが近いんだよ」という事を教える為に、今日の追い切りでもブリンカーを着けたりしてね。

高:そうなんですか。レースでブリンカーは…。

寺:着けない予定です。そうやって違いを作って「いつもの調教とは違うんだよ」という事を教えてあげよう、と。

高:それで木曜日は角馬場でゆっくりと調整をして。レース当日の日曜朝に、寺本さんも馬運車に乗って東京競馬場に向かうんですね。ちなみにレース当日の朝は何時くらいに出発するんですか?

寺:日曜日は朝の5時。土曜日は朝の4時30分です。今は高速料金が1000円という事もあって、土曜の方が渋滞の可能性が高いので、30分早いんです。出発前に寝ワラ上げなどの厩舎作業もあるから、起きるのはもっと早いですよ。

高:何時頃なんですか?

寺:2時くらいには起きて、2時半には厩舎に入って作業を始める感じだね。

高:えー!2時ですか。大変ですね。厩舎作業が終わったら寺本さんも一緒に馬運車に乗って出発されて。

寺:はい。

高:競馬場に着いたら馬房に入って。自分で調節しているからほとんどカイバも食べずにレースを待つわけですね。

寺:そうですね。

高:あとは装鞍所に行って鞍を置いて、しばらくしたらパドックに向かうんですね。

寺:はい。でもヒーローは厩舎装鞍をするんですよ。装鞍所に行く前に、厩舎で鞍を着けてから向かうんです。

高:なぜですか?

寺:ヒーローは装鞍所に行くとね、なぜか燃えちゃうんですよ(笑)。昔、大変だったの。大騒ぎだったよ(笑)。

高:そうなんですか(笑)。いつ頃から厩舎装鞍にしているんですか?

寺:4戦目くらいからかな。厩舎では大人しくて、普段と同じように置けましたからね。
無駄なエネルギーを使う必要が無いですし。なぜかヒーローは装鞍所に行くと喜ぶんですよ(笑)。もう、プールに行ってもみんなに挨拶するんですよ。他の馬が目の前を通ると、鼻を鳴らして(笑)。

高:アハハ(笑)。

寺:「おはよう」って言ってんだか「ご苦労さん」って言ってんだか、よく分からないけども(笑)。別に馬っ気があるわけではないんですけどね。

高:ヤンチャな行動の一環で。

寺:そうですね。ヒーローは3枚目なところがあるから。やっている厩務員とよく似て(笑)。

高:アハハ(笑)。じゃあ、適度なヤンチャさが出るくらいに元気が良くて、いい感じで仕上がって来ているんですね。

寺:そう理解しています(笑)。もう一つ勲章を、喉から手が出るくらいに欲しいですけど、担当者がそれを出してしまうと、ヒーローにもプレッシャーがかかってしまいますから。普段通りにやらないと(笑)。

高:それがまた難しいんでしょうけどね。本当に当日が楽しみですね。

寺:楽しみですね。またこういう大きな晴れ舞台に出られるというだけで、光栄の至りで…。

高:寺本さんには、パドックで応援幕がかかるほど熱心に応援していただいているファンの方がいらっしゃいますもんね。

寺:おかげ様でね。応援してくれているたくさんのファンや仲間に対して恥ずかしくないレースを見ていただけるようにしたいですね。エキストラで終わらないように(笑)。

高:脇役ではなくてヒーローですもんね(笑)。

寺:そうですね(笑)。ヒーローがヒーローらしい走りをするには、己に勝つしかないですね。相手も究極の仕上げをして来るだろうし、去年の勝ち馬という事で、今年はマークもされるだろうし。もちろん、去年のヒーローと同じような立場の上がり馬もいるだろうし。…本当に、あとは自分との戦いだね。去年はあくまでも挑戦者の立場でしたから、今年は無事に勝って、真のヒーローになれるように頑張って欲しいです。

高:応援しています。今日はありがとうございました。

寺:いいえ、こちらこそありがとうございました。


スクリーンヒーロー
(牡5、美浦・鹿戸雄厩舎)
父:グラスワンダー
母:ランニングヒロイン
母父:サンデーサイレンス
祖母:ダイナアクトレス
通算成績:22戦5勝
重賞勝利:
08年ジャパンカップ(G1)
08年アルゼンチン共和国杯(G2)