続・北北の話(11/27)

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 カンパニーの見事な引退花道Vで幕を閉じたマイルチャンピオンシップ、すすきの馬券連の一員、学生君はしっかり記念馬券を手にしてご満悦です。

 「ホント、8歳も秋になってGI連覇、凄いですよね。僕の単勝コレクションの中でも貴重なものになりました」学生君、いつも以上にテンションが高いのには、他にも理由があります。

 「札幌での4年間の生活で、2度も経験できましたからね」というのは、日本ハムファイターズのVパレードです。マイルチャンピオンシップのレース当日、11万人のファンが見守る中で、にぎにぎしく繰り広げられました。学生君、前回(2007年)のパレードに続いての紙ふぶき体験です。

 「すすきの場外のすぐ近くを通るんですからね。まあ、そんなことにはお構いなしに馬券にいそしんでいた人もいましたけど…」と学生君が皮肉を込めてほのめかすのは、どうやら某飲食チェーン店の店長氏のことのようです。

 日本ハムファイターズは、これで北海道移転から3度目のVパレードです。北海道という土地柄は、ひと昔前まではプロ野球と言えばやっぱり巨人でした。それが、今ではすっかり日本ハムが定着。今年の日本シリーズは、その巨人との決戦でしたから、大いに盛り上がったとのこと。惜しくも日本一にはなれませんでしたが、北海道を象徴する球団としての役割は存分に果たしてくれたということでしょう。

 「で、今度はホッカイドウ競馬の象徴に注目です」学生君のもうひとつの熱くなっている理由がこれです。今週のジャパンCに6年連続で挑戦するコスモバルクです。

 「このジャパンカップと出走が叶えば有馬記念、残り2戦でいよいよ引退とのことです。カンパニーと同期の8歳ですからね。H元調教師の情報では、最後はやっぱり五十嵐騎手で、ということになったとのことです」

 学生君が言うように、コスモバルクはホッカイドウ競馬の象徴でした。と、言っても実際に道内では前走までの42戦中、5回しか走っていません。ダートが苦手、というのも理由のひとつですが、マイネル、コスモ軍団の総帥・岡田オーナーの考えは「存続問題に揺れるホッカイドウ競馬の広告塔に」ということにあったのです。敢然とホッカイドウ競馬所属のままで中央競馬に挑戦し続け、日本の枠を飛び出して海外にも挑みました。中央競馬ではまだGIに手が届いていませんが、このジャパンカップ2着など、記憶に残る走りを見せています。

 「バルクだけのおかげではないんでしょうが、ホッカイドウ競馬も何とか存続の手応えが出てきたようですよ」と学生君。今年から生産者主体の競馬公社が中心となって運営するようになり、経費削減のために旭川競馬から撤退して赤字体質からの脱却をはかりましたが、その改革は実を結びつつあるようです。

 「これもH元調教師の情報ですが、来年は札幌開催も取りやめて、門別競馬場でだけということになるようです。コース使用料や、競走馬の輸送経費をカットできれば、完全に黒字体質に持って行けるということです」学生君は東京生まれの北大生ですが、縁あって4年間の学生生活を北海道で送ることになったこともあって、ホッカイドウ競馬の行く末はやっぱり気になる訳です。

 「いや、ホッカイドウ競馬はある意味では日本の競馬の根幹ですからね。絶対守らなきゃならないんです。こっちでの生活も残り少なくなりましたが、東京で就職しても応援し続けますよ」と学生君は言葉に力を込めました。

 学生君のそんなレポートをほんわかムードで聞いていると、いきなり現実に引き戻されました。

 「だからさ、ジャパンカップなんてものは鳴り物入りで乗り込んできた外国馬は黙って消しなんだよ」六本木のJRA本部、記者クラブ室でTC紙のベテラン馬券記者・N氏と、SN紙の若手、O記者がやりあっているのです。

 「コンデュイットは別格でしょ。キングジョージに勝ち、ブリーダーズC・ターフ連覇ですからね」とO記者。

 「これが引退レース、来春からビッグレッドファームで種牡馬入りと来れば、顔見せ興行以外の何ものでもないんだよ。JC史上最強の刺客なんて、歯の浮くような修飾語で持ち上げているけど、オレに言わせれば史上最大のカモだな」とN記者はいつにも増して辛口です。

 現実主義者たちの熱い馬券談義は延々と続きましたが、N記者が結論を出しました。

 「人気の外国馬はいらないが、日本馬に乗った外国人騎手は買い、それがジャパンカップなんだ。ルメールに手綱が変わったウオッカでイケる!」

 ちなみにこのN記者、ジャパンカップの馬券は目下28連敗中。初めての的中となるのでしょうか…。(第65話終了)