【札幌記念】機密データファイル・特別編

夏競馬唯一のG2競走。秋のG1戦線のスタートとしてエアグルーヴ、セイウンスカイ、アドマイヤムーンといったスターホースが勝ち馬に名を連ね、昨年はハープスターとゴールドシップが秋を前に直接対決。多くのファンが名勝負に酔いしれた札幌記念。絶対能力はもちろんのこと、洋芝適性も問われる北の決戦を制するのはいったいどの馬か?
2013年は札幌競馬場が改修工事のため、函館競馬場で施行。

クイーンS組に妙味も…

秋を見据えて早めに始動するG1ホースに力を付けた上がり馬、夏に強い牝馬が絡み合って馬券圏内に入った馬の前走は実に15レースにも及ぶ。驚くことに最も多い勝鞍を挙げているのは、前走が牝馬限定重賞のクイーンS組。このローテーションは人気の盲点になりやすく最も人気になったのが05年のダンスインザムード(12着)。『夏は牝馬』というイメージ通りの実績を残している。ただし、今年はクイーンS組が1頭もおらず、楽しみは来年に持ち越しとなる。
前走G1を戦った強豪馬が軒並み好成績を挙げているが、中でも比較的間隔が短く、距離も1Fしか違わない宝塚記念組は優秀な数字。ここでも数は少ないながら牝馬限定のオークス組がハイアベレージを叩き出している。
函館記念組は好走回数も多いが、出走馬も多くアベレージは今ひとつ。過去の傾向を見ると08年の勝ち馬タスカータソルテ以外は前走の函館記念で3着以内。函館記念で崩れた馬の巻き返しは少ない。

       
前走レース別成績
レース名 成績 勝率 連対率 複勝率
クイーンS (3-1-0-10) 21.4% 28.6% 28.6%
函館記念 (2-2-4-42) 4.0% 8.0% 16.0%
宝塚記念 (2-2-1-3) 25.0% 50.0% 62.5%
優駿牝馬 (1-1-0-1) 33.3% 66.7% 66.7%
東京優駿(1-0-0-4) 20.0% 20.0% 20.0%
中京記念 (1-0-0-0) 100% 100% 100%
みなみ北海道S (0-1-0-6) 14.3% 14.3%
漁火S (0-1-0-1) 50.0% 50.0%
ドバイDF (0-1-0-1) 50.0% 50.0%
香港・QE2世C (0-1-0-0) 100% 100%
エプソムC (0-0-1-3) 25.0%
天皇賞(春) (0-0-1-2) 33.3%
安田記念 (0-0-1-2) 33.3%
有馬記念 (0-0-1-1) 50.0%
ダイヤモンドS (0-0-1-0) 100%

年齢別成績 前走着順別成績 キャリア別成績
年齢 着別度数 前走着順 着別度数 キャリア 着別度数
3歳 2-1-0-8 1着 1-2-1-20 5~10戦 2-3-1-12
4歳 4-2-3-21 2着 3-0-2-8 11~15戦 2-1-3-17
5歳 3-4-3-28 3着 1-5-2-7 16~20戦 4-2-3-18
6歳 1-2-1-24 4着 0-0-0-10 21~30戦 2-2-1-24
7歳以上 0-1-3-34 5着 1-0-0-8 31戦~ 0-2-2-44
    6~9着 4-2-0-36    
    10着~ 0-1-5-26    

過去10年注目データ

★年齢別で最も勝鞍が多いのは4勝を挙げている4歳馬。勝率、連対率では3歳馬がリードし、5歳馬も出走馬が多い分、アベレージが低く出ているが、2着数はトップで、3着もトップタイ。軸はこの3世代から選択するのが妥当だろう。
7歳以上の複勝圏突入は4回あるが、いずれも当地での好成績があった馬で、10年3着のアクシオンを除けば札幌での重賞で3着以内の経験があり、同馬は翌年8歳で2着。重賞好走はなかったとはいえ、4戦2勝、2着2回のパーフェクト連対を記録していた。

★前走から連勝を果たした馬はわずか1頭。面白いのは過去10年で連続3着だった馬が5頭もいること。そして驚きは前走6着以下からの逆転勝利が実に4頭。ただし逆転は簡単なことではなく、4頭全て重賞2勝以上の確かな実力を持っていた。

★3歳馬が好成績を残していることもあって、10戦以内の浅いキャリアのアベレージが高め。勝利度数が最も多いのはある程度キャリアを積んだ16~20戦の馬で、11~15戦のアベレージに凹みがあるものの、勝ち馬がいなくなる31戦以上まではあまりキャリアを気にしなくて良さそう。
ちなみにキャリア31戦以上で複勝圏に入った馬はいずれも前走が北海道で3着以内に入っていた。洋芝巧者はとにかく要注意。

★前走同じ騎手と乗り替わった場合の数字を比較すると1着が6対4で前走時と同じ騎手優勢、2着はイーブンで乗り替わりによる刺激はある程度の効果がある。ただし、3着は8対2で、これは乗り替わりがなかった方がかなり優勢な数字を残している。

★4角先頭で逃げ切った馬は2頭。好位の2~4番手が4勝、2着5回と一見先行有利とも思えるが、中団からレースを運んだ馬もアベレージは決して悪くなく、馬の実力に応じた柔軟な姿勢が必要。先行有利の小回りコースといえど、先頭・2番手の「行った行った」で決まった年はない。
また、4角11番手以下の位置から馬券に絡んだ馬は1頭もおらず、直線ゴボウ抜きは厳しい。

★過去10年、枠番別では真ん中の4枠が1勝、2着5回と高い連対率を残している。数字の面では1枠、8枠がやや不利になっているが、勝ち馬は全ての枠から誕生している。
馬番別では「12」が馬券圏内ゼロ。15頭以上の多頭数となると、「15」「16」どちらの馬番からも好走馬は出ていない。

★パワーを要する洋芝コースとあって、大型馬が多少優勢な数字が出ているが、勝ち馬が最も多く出ているレンジは460~479キロ。あまり神経質になる必要はなさそう。
馬体重の増減ではプラス10~19キロで出走した馬が12頭いて1度も馬券に絡んでいないが、10年にプラス22キロのロジユニヴァースが2着。マイナスにおいては09年にマイナス20キロのヤマニンキングリーが1着となっており、過度に気を配る必要はない。

★現役産駒がいる種牡馬で唯一2勝を挙げているのがジャングルポケット。タスカータソルテがクビ差、トーセンジョーダンがハナ差の激戦を制している。
出走頭数が多いためアベレージは目立たないが、掲示板を賑わせているのがマンハッタンカフェ産駒。自身は札幌記念の出走がなかったが、3歳夏に連勝して秋の飛躍へ繋げた。

昨年はディープインパクト産駒のハープスターがステイゴールド産駒のゴールドシップを抑えて優勝。軽い馬場を得意とするディープ産駒が今後どういう成績を残していくかにも注目。

★2010年以降に行われた札幌芝2000mで最も多くの勝鞍を挙げているジョッキーは四位騎手の6勝。続くのが藤田騎手、柴山騎手の5勝で、柴山騎手は単複どちらの回収率もプラスとなっている。
17回と騎乗回収は少ないが、連対率70.6%という驚異的な数字を残しているのが福永騎手。ただし、騎乗馬は人気サイドが多く、よく言えば堅実、悪く言えば取りこぼしが多いとも言える

★過去10年の勝ち馬はいずれも関西馬。2~3着はともに関西馬6回、関東馬4回と健闘しているが、東西中立の北海道でありながら、圧倒的に関西馬優勢のデータが出ている。
ジョッキーも栗東所属が優勢となっているが、美浦所属ジョッキーの複勝圏突入10回のうち4回が横山典騎手でこれは覚えておかなくてはいけないデータ。過去10年9回騎乗して(1-2-1-5)。ちなみに複勝圏を外した5回の最高着順は9着で、このジョッキー「らしい」成績を残している。

★1番人気は3勝、2着4回。1~5番人気までの組み合わせで決まった年は3回。G1戦線を沸かせた馬が多く出走し、それなりの結果を残しているにもかかわらず、3着までのどこかに伏兵陣が付け入っている。
なお、1番人気が複勝圏を外した3回はいずれも単勝2ケタ人気の馬が飛び込む波乱が起きている。

データの決断

ルージュバック、エアソミュールの回避は残念だが、ラキシス、トーホウジャッカルのG1ホースに、これからG1タイトルを狙うダービーフィズ、ラストインパクトら『北の決戦』にふさわしい楽しみなメンバーが揃った。データからの推奨は昨年のエリザベス女王杯を制し、この春は大阪杯でキズナを一蹴したラキシス。牝馬が強いレースでもあり、好スタートを決めて秋に備えたい。
相手には函館記念で悲願の重賞初Vを成し遂げたダービーフィズ。北海道に強い母系だが、それを初めての函館でキッチリと証明して見せた。もちろん菊花賞以降、順調さを欠きながら宝塚記念で4着に入ったトーホウジャッカルの底力も脅威。
穴は初の古馬相手、距離延長と厳しい条件だった函館記念で3着に食い込んだ3歳馬ヤマカツエース。ここも立ち回りひとつで浮上の可能性十分だ。