早めの仕掛けが勝負どころ、マリアライトが女王に!

マリアライト

15年11月15日(日)5回京都4日目11R 第40回エリザベス女王杯(G1)(芝外2200m)

マリアライト
(牝4、美浦・久保田厩舎)
父:ディープインパクト
母:クリソプレーズ
母父:エルコンドルパサー

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土曜の夜もしっかり雨音がしていた。日曜は重からのスタート、だが風がけっこう吹きつける。9R前から、芝は稍重まで回復。だが内を突くには勇気がいる馬場。有力馬が中団の外目に集中する位置だったが、その中でも先に仕掛けたのがマリアライト。直線入り口ではもう仕掛けて前へ出て行く。ひと呼吸遅れてヌーヴォレコルトも追い出して行くが、クビ差まで詰めるのが精一杯。タッチングスピーチがゴール前で猛追して、ハナ差の3着。久々のルージュバックもその後と実力を見せる。ラキシスは馬群の中でクイーンズリングと進路の取り合いで接触。大きな不利となって踏み遅れて、11着敗退だった…。


またまた関東馬である。それもタッチングスピーチが割って入らなかったら1、2、3着まで関東馬となる処だった。以前にも増す江戸の勢である。

今日はレディース・デーで場内が華やかである。いつもより全体の年齢層が若い。通年で女性は無料でいい。鉄火場の雰囲気はもうないんだから。
パドックでジックリと馬を見る。まずは第一印象だ。ラキシスとマリアライトは、細いと感じる。ラキシスは前走のまま。マリアライトは実際に観るのが初めて。どうしても上の兄達と比べてしまう。これが間違いだった。ルージュバックは久しぶりに見るが、相変わらずいい馬だ。思わず◎を書き込む。だがG1はいきなり勝てるほど甘くはないと、心の中で思う。タッチングスピーチも悪くない。ノボリディアーナも落ち着いていて、《これなら五分にやれるな》と贔屓目でみる。そして、馬場入場はウイナーズサークルの直ぐ傍で見守る。

スタンドを見渡すとけっこうな人である。そして何よりも風が強く吹いている。直線はアゲインスト、向こう正面は追い風である。思った以上に乾いているなと思える。
スタンド前からのスタート。メイショウマンボが少しだけ遅かったが、後はほぼ一斉。内からリラヴァティが出て行く。真ん中からフェリーチェレガロ、その外をウインリバティ。最初のカーブを廻った処でウインリバティが先頭に立ち、リラヴァティと続く。スマートレイアーがメイショウマンボと並んで最後方だ。
2コーナーを過ぎて向こう正面に入ると、先頭のウインリバティがだいぶ前となっている。2番手のリラヴァティで5馬身ぐらい。そこから次の集団の先頭のフーラブライトまでは、10馬身以上開く。だからと言ってハイペースではない。
1000m通過が1.00.7と場内のオーロラビジョンに出る。わが武豊Jのノボリディアーナは、その集団のちょうど真ん中あたり。眼の前にマリアブライト、後ろにタッチングスピーチ、その内のちょい前にラキシスとクイーンズリングが、真後ろにヌーヴォレコルトと人気馬がこぞっている位置だ。ラキシスのR.ムーアJが、ラチ沿いを前へ前と上がって行くのが見える。

長い、なが~い向こう正面を過ぎて、3コーナーを廻り下り坂へと入っている。まだ先頭はウインリバティ。2番手リラヴァティだが、どんどんとそのリラヴァティと後続との差がなくなって4コーナーが近づく。カーブに入る時は、外の集団が一気に前へと進出してきている。その一番前がマリアライト。それに続くノボリディアーナ。
そして全馬が姿を現す。まだコーナーリングで内の先行馬が前にいるが、外の馬の勢いが目立つ。特にキャロットの勝負服。マリアライトがいち早い仕掛けで来るのが判る。マリアライト、蛯名Jだ!左ステッキから右に持ちかえて、あの独特の追い方で前にどんどんとシャクってくる。
ラスト1ハロンで先頭に踊り出る。内から来ていたフーラブライドと瞬間に並ぶ。すぐ後ろにヌーヴォレコルトが迫ってくる。その後ろではタッチングスピーチとルージュバックが併せる様に伸びてきている。蛯名Jはどれだけステッキを入れただろうか。怒涛の寄せに、何とか半馬身近くリードを取ったままゴールへ流れ込んだ。最後に真っ白な馬体が大外から飛んで来ていた。スマートレイアーだ。最後方からの突っ込み、浜中Jらしい選択だ。

検量室入口の処が、私のいつものポジション。ここは譲れない。邪魔にならない様にしながら、チョロっと訊きたい事を聞く。蛯名Jに握手を求める。言葉が返ってくる。『大事に使ってきた馬だからね。前走は少し重めに造ってあった。だから今回は絞ってきたんだ。馬場も悪くない馬だしね・・』と自信たっぷりの雰囲気である。
クリソライト、リファールの下。父のディープインパクトだけがこの馬場コンディションに問題があったのが、だいぶ乾いてきたのも追い風となったのだろうか。
すぐそばの武豊Jが、《俺がアシストしたみたいなもの》と蛯名Jに向ける。それには『ありがとう』と笑顔で返す。同期ならではの会話だ。終始、同じポジションにノボリディアーナがいたのを見ている。もしかしたらと観ていたのだが、前後の馬が全て直線で伸びているのに、ノボリディアーナだけが伸びない。これが《距離が長いんだろう・・》との武豊Jのコメントに通じる。

母の父、エルコンドルパサー。的場均Jからバトンを受け継いだ蛯名Jでジャパン・カップ、そしてヨーロッパで戦った同胞である。その血を受け継ぐ子供でG1勝利。だからこそ、競馬の素晴らしいドラマが生まれるのである。いや~、お見事でした!


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。