【フェブラリーS】モズアスコット「ダート転向」お願いした理由

モズアスコット

【モズアスコット陣営独占インタビュー・前編】

-:フェブラリーステークス(G1、ダ1600m)出走予定のモズアスコット(牡6、栗東・矢作厩舎)ですが、ダート初戦の根岸Sを見事に勝利で飾りました。ダートに挑戦しようと思われたポイントを教えてください。

矢作芳人調教師:ダート適性に関しては結構自信がありました。まず第1に調教の動き、脚捌き、パワーです。2番目は血統。血統的にダートは絶対に走るなと思っていました。

-:それは父フランケルにダート適性があるということですか。

矢:フランケル産駒は世界的にみてもダート特性は未知数ですよね。極めて少ないサンプル数しかいないのに、芝と決めつけています。一方、モズアスコットの母系はアメリカのダート重賞で2勝しており、母Indiaの父がヘネシーですから明らかにダートは走るだろうと。ただ、安田記念で芝のG1を勝ちましたのでダートを試す機会がなかったというのが本音です。そこに至るまでに何らかの壁に当たっていたら、早い時期にダートに行く青写真を考えていたのですが。やはり芝でG1を勝つと、なかなか使いづらいですよね。

もう一つは昨年一杯で引退という可能性もあったこと。でも、マイルCS後にオーナーから「もう1年現役を続けたい」と言われたので、「それならダートに使わせて下さい」とお願いしました。もし去年で引退していたら、どこか尻すぼみな印象が残るでしょう?種牡馬価値を高めたいという意味でも、ダートで走ってくれたら評価も上がると思いました。

-:モズアスコットの気性的な話ですが、フランケル産駒はレース当日だけではなく、トレセンでもテンションの高い馬が多い気がします。モズアスコットの強味は他のフランケル産駒に比べて穏やかな気性だと思えるのですが、いかがですか。

矢:そんなことはないですよ。年齢を重ねて気性の激しさは薄れてきたとは思います。特にトレセンでは以前より大人しくはなりました。それでもキツいところはあります。どちらかと言うと、牝馬の方が難しい血筋だと思います。

-:モズアスコットにも激しい面があるんですね。

矢:毎回、馬場入りは大変なんですよ。特に気を使っています。確かにそれ以外は、そこまで手を焼く馬ではないですね。ただ、そんなに大人しいタイプじゃありませんよ。

-:勢いよく馬場に入った後、レース中の折り合い面はいかがですか。

矢:そこに関しては成長しましたね。デビュー当初と比べたら競馬を理解してくれています。

モズアスコット

-:次はいよいよダートの頂上決戦フェブラリーSですが、ローテーション的に中2週と詰まっていますが。

矢:矢作厩舎で中2週は普通です(笑)。連闘でG1を勝っている馬ですよ。ただ、モズアスコットに関しては脚元の不安もあります。根岸S後のケアという意味では、もう1~2週あっても良いかなという所はありますね。脚元の不安さえなければ、詰まった方が良いのは間違いない馬です。休み明けを6~7分の状態で勝った反動さえ出なければ、確実に上積みはあると思いますね。

-:根岸S直前のルメール騎手が乗られた追い切りでは、良い時と比べると反応が物足りなく見えました。

矢:確かに、良くはなかったですよね。追い切った直後のルメールは弱気でした。ハッキリと「反応が良くない」と言っていましたからね。

-:叩き良化型だと思っていたモズアスコットが、初ダートの根岸Sであの競馬が出来た。しかも、スタートも決まらなかったのに。……ということは?

矢:まともに走ったら、ケタが違うなと思いましたね。ただ、去年の秋のマイルCSが非常に良い状態だったにもかかわらず全然走らなかったり。そういうわからない所があるのがちょっと怖い。他にはあまり不安はないですね。

-:能力の差を見せつけた根岸Sでしたが、芝のG1馬をダートに転向させても多くは走りません。いきなり結果が出たということは、1ハロン距離が延びて、舞台も同じであるフェブラリーSでも明るい材料と言えますよね。

矢:もちろん、そうですね。やはり根岸Sで惨敗していたら、フェブラリーSを使おうかと思えたかどうかわかりませんね。もしも内容が良くなければ、考え直さざるを得なかったでしょう。

-:先生にとっても、モズアスコットのダート適性は想像以上の走りだったのではないですか。

矢:その通りです。

-:本番は芝スタートですから、ダートスタートだった根岸Sよりは有利なポジションで進められそうですね。

矢:そう思っています。正攻法の競馬で普通に好位、もしくは中団でも良いと思うし、力の違いを見せつけるような競馬をして欲しいなと思います。

(後編に続く)