-エリザベス女王杯-平林雅芳の目

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日曜京都11R
エリザベス女王杯(GⅠ)
芝2200m
勝ちタイム2.12.5
勝ち馬
スノーフェアリー(牝3 英・E・ダンロップ厩舎)

※※稲妻が走る、そんな切れ味のスノーフェアリー圧勝!!

今年は外国の凄い馬が来ると聞いていた数週間前。近づくに連れてそんな情報もどこかへ行ってしまってたのか。でも彼らは本気、ボーナスが9000万と勝ちにこだわる。そんな強い気持ちで直線を一気に抜けてきたスノーフェアリー。目の前を遮る様に通って行かれた武豊Jは、馬上から『何かが通って行ったよ』と笑いながら言っていた。それほど強烈なインパクトで勝ったスノーフェアリー。前日から、ムーアJの手腕もかなり噂になっていた程。本場ものを見た思いだった。

パドックで見る乙女たちはみな礼儀がいい。格別、入れ込む馬も見当たらず、ドッシリと周回している馬ばかり。外国からの来客も悪くない馬体をしている。ともに若い女性厩務員さんとおじさまと二人引きである。
馬場入りでいつもアパパネは関西で見るかぎりは一旦、反対方向へ出てから一番最後に返し馬を行うのだが、今日はすぐに右の方へと進んでいった。『あれっ?いつもとルーティンが違うな』と思う。
スタンド前のゲート入りでもまずまずスムーズ。アパパネはゲートの入りで少しヤンチャをする馬だが、出は速い馬で、今日も悪くないスタートを切った。

すぐ隣りのテイエムプリキュアの出方があまり良くない。これでは先手は無理だろうと思えた。内からセラフィックロンプが先手となった。しかし最初のカーヴまでけっこうある。その間に、ラチ沿いからテイエムプリキュアが出てきて先頭を奪っていった。
2コーナー過ぎあたりから少し加速するテイエムプリキュア。2番手セラフィックロンプ、ブライティアパルスと続く。そして今日はリトルアマポーラがやけに前に位置している。アパパネはその直後。それをマークする様にスノーフェアリーがいる。
向こう正面で少し後続が接近したのか、テイエムプリキュアのリードがそうなくなる。しかし3コーナーの手前あたりからは、また後ろと離れ出したテイエムプリキュア。3コーナーのカーヴを回って行くあたりで、最内を武豊Jコロンバスサークルが順位を上げていくのが目につく。
3コーナーと4コーナーの中間地点あたりでは、中団のメイショウベルーガが手綱をかなりしごいているのが見えた。4コーナー手前あたりで、前のグループと後続馬のかなりあった差がなくなってきた。

直線入り口で、左右にかなり大きく開いた馬群、テイエムプリキュアは外へ出した。
内がガラリと開く。そのいちばん内を突いたコロンバスサークル。と思う間もなく。直ぐ傍をスノーフェアリーが通過して行った。鞍上のムーアJがゴーサインを出した様で、トップスピードで駆け抜けていく。みるみる後続との差を広げていく。もう勝利は確定の脚色となっている。
注目は2着馬、白い馬体が外からアパパネを抜いて2番手に上がっている。メイショウベルーガだ。下りではシンドイほどの手応えだったのが、直線では加速している。しかし、いかにも前との差があり過ぎる。
アパパネが外、内リトルアマポーラが鼻面を合わせた叩き合いが、ゴール過ぎまで続いていたが、やや内が優勢に見えた。
いちばん内で粘っていたコロンバスサークルを、中から抜けてきたヒカルアマランサスが交わした。アニメイトバイオは、向こう正面まではコロンバスサークルあたりの位置にいたのだが、その後は前に出てこなかった。レースの上がりが36.3を2秒以上も上回る切れ味で駆け抜けたスノーフェアリーである。最後は流し気味のゴールだっただけに凄い。

内がだいぶ悪くなって外の方が伸びている様に感じていた芝コースだったが、そんな思惑も関係なし。直線入り口からの勢いが、ただ1頭だけ違っていたスノーフェアリー。馬体もフックラと丸みのあるもので、日本に来てそんなに速い時計を出さない仕上げであるが、これで十分にいいのだろう。最近の外国から来る馬の仕上げ方法は、大体この傾向にある。
日本の馬がキチキチと毎回追い切って使ってくるのとは大違いで、《日本の馬は疲れている》とまた言われそうな気がする。
英愛のオークスを制覇してきたスノーフェアリー。本場の切れを見させて頂きました。そしてムーアJの強烈なインパクトであった。そんな印象の今年のエリザベス女王杯でした。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。