プルスウルトラなど《平林雅芳 2歳観戦記》(11/13・14)

トピックス

土曜京都4R
2歳新馬
芝内1400m
勝ちタイム1.22.5


勝ち馬:ラトルスネーク(牡2、栗東・須貝尚厩舎)

新馬戦で、それも直線半ばからだけで5馬身もの差をつける決着は、まあ、あまり見た事がない。何せ、ラトルスネークを導いて勝ったムーアJの騎乗法というのか勝ちっぷりは、2Rのマイネガネーシャのしごきっぷりといい《馬を動かせる》といった印象。凄いと思わせるゴール前での勢いであった。

4コーナーまで先頭のコアレスシルバーの造ったペースは1000メートル59.0とまずまずの流れ。2番手グループが並び出していたが、まだ直線入り口では2馬身ぐらい開いていて余裕十分。3番手のミスターマスタードが後ろを見ながら、外へ出してくる。その開いたスペースを、直後にいたアスターヒューモアが狙って前に出てくる。その真後ろにラトルスネークがいた。
残り300メートルを過ぎたあたりで、まだ先頭のコアレスシルバーからは5、6馬身も離れていた。
内でルメールJのステッキが入ったアスターヒューモアが伸びだしている。そんな瞬間に外へ出したラトスルネークが、前を行くミスターマスタードをの外を、それこそ立ち木を交わしていく様な勢いでどんどんと前へと出ていく。アッという間に先頭のコアレスシルバーを抜いてトップに躍り出る。
ステッキは抜いただけで使わず、内へもたれ気味だったのもあろうが、手綱の操作だけでみるみる間に差をつけて、最後はやや抑え気味のゴール。
2着には、ゴール寸前で伸びたアスターヒューモアが上がり、3着にはミスターマスタードで、逃げたコアレスシルバーが4着と、ここらは接戦であった。

パトロールビデオで見ると、道中は馬を遊ばせているのか、頭を左右に振るぐらいの馬の行きっぷりだ。これは2Rでもそんな感じを受けていたのだが、直線に入って追い出された時には、もう馬はそんなフワフワした走りではなくなり、まっしぐらに走っている、そんな印象である。
何せ、勝った馬だけの印象が強いレースであり、他の馬が霞んでみえるほどのもの。

最後の2ハロンが11.9~11.6である。この11.6もコアレスシルバーが先に入り、ゴールではラトルスネークが刻んだラップであり、本来はもっと速いと思えるもの。それも最後は抑えているのだから恐れ入る数字である。
あまりにインパクトが強い勝ちっぷりであったラトルスネーク。まるで馬でなくジョッキーがそんな風に勝たせたと思えるぐらいのイメージ。ムーアJ、恐るべしと思えた。


土曜京都5R
2歳新馬
芝内1600m
勝ちタイム1.36.1

勝ち馬
グルーヴィクイーン(牝2、栗東・庄野厩舎)

前のレースの興奮冷めやらぬままに迎えたこの新馬戦。しかし、一転二転する感じのゴール前の攻防で、勝ち上がったのはイントゥザグルーヴの初仔のグルーヴィクイーンで、392キロの馬体だが、4コーナーで内から弾かれる不利がありながらもひるまぬいい根性の持ち主。接戦を制した様に、勝負強い面を受け継いでいるかも知れない。

3コーナーでも、前が5頭ぐらい固まって行っている。3コーナーを過ぎ、4コーナーまでの中間点あたりで、先頭ヤマニンアーマーを2番手で追走しているアストロロジーの行きっぷりも良く、セーフティーな感じだと思えたもの。
4コーナーのカーヴのあたりで、外からミヤジエムジェイにグルーヴィクイーンと4頭が並んできた時もまだ手応え十分。
直線に入り、残り1ハロンから追い出したアストロロジーが前へと出て行き、内のヤマニンアーマーとの差を広げだす。
ルメールJの右ステッキが唸る。後もう少しのところで、中からアイルトンバローズ、外からグルーヴィクイーンが急追してくる。ゴールわずか手前で勢いがなくなったアストロロジーを、外の2頭が交わして先にゴールに入った。一番外のグルーヴィクイーンが勝利であった。

4コーナーで、ミヤジエムジェイの外にグルーヴィクイーンが並んできた時に外へ飛ばされてしまう。グリーンチャンネルの映像では判らないのだが、パトロールビデオではハッキリと見えた。そこで外へ流れ気味となり、一瞬遅れをとってしまう。
直線入り口からは、すぐ内に4着のフローガも入って来て、5頭が並びかげんとなる直線1ハロン過ぎの追い合い。ほとんどステッキを使わないで前へと出て行くグルーヴィクイーンが、ジワジワ伸びての勝利であった。
なかなかの根性娘であり、母同様に初陣を飾る血統なのであろう。ここらがサラブレットは血で走ると言われる所以か。新馬勝ちとひとつめの勲章を手にしたグルーヴィクイーンのデビュー戦でした・・。


日曜京都4R
2歳新馬
ダ1200m
勝ちタイム1.13.5

勝ち馬
ワンダーフォルテ(牡2、栗東・藤岡範厩舎)

前半3ハロンが36.8の流れ。新馬戦ながら、まるで古馬のレースの様に淡々と流れた新馬戦。2番手追走のワンダーフォルテが、その遅い流れから抜け出して迫るサトノパイレーツの追撃を交わして先にゴールした。ワンダーフォルテの上がり3ハロンが36.5。3着には逃げたトルベジーノが残ったが、前からは7馬身もの差をつけられていた。

スタートでデムーロJ騎乗のブライが遅れる。いちばん外のワンダーフォルテが速かった。出て内へもたれ気味だったがすぐに矯正できて、先に行きたそうなトルベジーノの2番手を追走。内ではサトノパイレーツが、そしてアドマイヤクイーナがいちばん内から続く。ほとんど隊列に変わりがないまま3コーナーを過ぎ、最後のカーヴを回る。
トルペジーノが先頭で直線に入って来たが、ワンダーフォルテがもう並びかける。さらにその外へサトノパイレーツも上がってくる。先にそのサトノパイレーツが追い出し、2頭の叩き合いがゴールまで続く。
抜け出したワンダーフォルテとの差が詰められない。そのまま1ハロンも過ぎ、先頭のワンダーフォルテとの差が1馬身近いままでゴールとなってしまった。トルベジーノが前の2頭から離された3着であった。

パトロールビデオを見ると、ワンダーフォルテは道中フワフワしている走り。コーナーリングも上手くない。そんな走りであるだけに、少し気が抜けて走っているのだろうか。
サトノパイレーツとの差をキープしたまま抜かせなかった。追ってからの伸びがあるのが悪くない。武豊Jも《追われてからがいいね》と馬上からのコメントだった。勝負強そうな印象を持たせたデビュー戦でした。


日曜京都5R
2歳新馬
芝2000m
勝ちタイム2.04.5

勝ち馬
プルスウルトラ(牡2、栗東・池江寿厩舎)

ペルーサの下で父がディープインパクトのソルデマーヨと、トゥザグローリーの子供プルスウルトラの対決模様となったこの新馬戦。共に500キロは楽に越える大型馬であるが、初戦を制したのはプルスウルトラの方で、ソルデマーヨは小差3着のデビュー戦となった。

スタートでアドマイヤラクティが少し遅れた。しかし流れが遅いこともあり、すぐに取り付きハンデはそう無し。9頭立てで距離もたっぷりとあるだけに、最初からユッタリ流れる。先頭はスコーピオ、2番手にサウンドオブダイコ、そしてヒカルマイデビューと続く。
向こう正面に入り、プルスウルトラをソルデマーヨが抜いて前に出た。遅い流れを嫌って、武豊Jがペースを握った様子。スコーピオは下がり気味だ。
3コーナーでは、ソルデマーヨの外にプルスウルトラも並びつつ動いてきた。後方のギュスターヴクライが8番手だが、ほとんどが一団となり差はない。
4コーナー手前では、ソルデマーヨに外にプルスウルトラ。その外にアドマイヤラクティと3頭が並び出す。アドマイヤラクティの直ぐ後ろにギュスターヴクライが続きカーヴを回る。スコーピオ以外の8頭が固まって、直線へと入ってきた。

内めからイイデジャパンがソロリと前へと接近してきた。その前にはソルデマーヨがいるが、そんなに強烈には伸びない。プルスウルトラにアドマイヤラクティが外へ並んできた。まだ勝敗のゆくえが判らない感じだ。
ソルデマーヨの伸びが今ひとつ足りない。むしろその外のプルスウルトラの勢いが優り、先頭に立つ。アドマイヤラクティがその外へ襲いかかる。
結局、差は縮まらずにプルスウルトラが先頭でゴールに到達、アドマイヤラクティが半馬身差2着。ソルデマーヨもまた半馬身差で続く。
1000メートル通過が1.03.9とゆったりな流れで、速くなったのが4コーナーを回ってからの最後2ハロンで、11.4~11.6であった。
6着ギュスターヴクライまでが、コンマ5秒にひしめく差のない接戦。
重厚戦を制したのが、いちばん重かったプルスウルトラであった。新馬戦のわりに、何か重苦しい印象を受けたレースでもあった。


日曜京都9R
黄菊賞
芝1800m
勝ちタイム1.47.7

勝ち馬
ミッキーマスカット(牡2、栗東・橋口厩舎)

ディープインパクトの産駒が2頭、そしてハーツクライの子供が1頭出走の、このレース。しかし勝ったのは、やはり新種牡馬スニッツエルのミッキーマスカット。前の2頭が離して行く流れの3番手追走から、直線では迫ってきたリベルタスを抑えての勝利。デイリー杯6着から、1勝クラスでは違うとばかりに勝ち上がった。

内から出て行ったのがデンコウジュピター。それをマイネマオが追う流れ。3コーナーに入る時は、離れた3番手をミッキーマスカットがキープ。けっこう縦長の展開で、3コーナーを下って行った。リベルタスは5番手で、外めに位置している。けっこう速い流れと思える。1000通過が59.3と、やはりこの距離では飛ばしている。4コーナーへと来た時には、リベルタスも外から脚を使ってミッキーマスカットの外へと並び加減だ。
一番内へ進路を取ったデンコウジュピターが直線に入っても粘っている。3番手を進んでいたミッキーマスカットが、馬場の真ん中へと出してくる。その外へ迫るリベルタス。残り1ハロンぐらいで、少し外へ流れたミッキーマスカット。馬体を合わせにかかったリベルタスが少し影響したか。でも、勢いで優るミッキーマスカットがそのまま押し切った。リベルタスはもうひと伸びが感じられず。着差は1馬身もなかったが、届きそうにもない決定的な差となってしまった。
3着には、大外をかなりいい脚でヴィクトリースターが伸びて来ていたが、前の2頭からは、完全に視野に入っていないものだった。シゲルシャチョウがその後に続いて4着。トップシャインは、スタートが今ひとつで位置が後ろの内めとなり、最後もそんなに際立った勢いを見せられず。

ミッキーマスカットは、デビュー戦が558キロの馬体。2戦目で勝ち上がった時が544キロ。そして前走が10キロ減って6着。今日はさらに絞れて528キロ。1戦ずつ距離を延ばしているが、それもクリアしている。次走はどの距離を選んで使ってくるのだろうか。ディンヒルの血が流れるだけに、どんな距離も大丈夫そうだ。
そして安藤勝J、この日の騎乗は2Rシャイニーホーク橋口厩舎の2頭だけ。共に勝ち星となったが、無駄のない騎乗ぶり。橋口厩舎も、これで今週4勝目と勢いがある。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。