トウショウクラウンなど《平林雅芳 2歳観戦記》(11/20・21)

トピックス

土曜京都5R
2歳新馬
ダ1400m
勝ちタイム1.26.2

勝ち馬
スナイプビッド(牡2、栗東・大久保龍厩舎)

圧倒的1番人気に支持されたスナイブビッド。結果だけを見ればそのとおりに勝ち上がったのであるが、辛勝であった。スタートは五分だったはずだがその後がいけてない。ダートに入った後は内へ潜り込み、4番手を追走。直線残り
1ハロンから外へ出して追い上げてきたものだが、そこでも内へもたれていたのか、なかなか前へ進まず。ゴール前でやっとエンジンがかかったかの様な伸びで、デビュー戦勝ちとなったもの。鞍上福永Jは、また新馬勝ちの勲章を手に入れた。確か、18勝目か。

芝からダートへと入ったあたりで先頭はサワヤカユウタだったが、内のオースミラバーが先手を主張したようだ。それを行かせての2番手となる。直後がオーバーヘッド、その後にタイキガラハッドだが、前の3頭からは少し離され気味だ。内めに進路を取ったスナイプビッドが、前を追いかけるように上がって行く。前半3ハロンの標識を通過した時には35.6とまずまずの流れ。ここらでは、完全に4番手にスナイプビッドが上がって、前からは5馬身ぐらいの位置だ。

4コーナー手前では、先頭オースミラバーに1馬身もないぐらいの位置にサワヤカユウタが詰めて、その後ろもオーバーヘッドが同じ様な間隔で続く。その内めにスナイブビッドがもう来ている。
カーヴに入るあたりでは、今度はサワヤカユウタが前に出た。外にオーバーヘッドも馬体を並ばせて来て回ってくる。スナイプビッドはカーヴを小さく回ってきた様子で、もうすぐ傍まで接近して来ている。

直線に入り、粘るオースミラバーだが外のサワヤカユウタの手応えがいい。外オーバーヘッドがゴシゴシと追って行く。その後ろでは、外へ出してきたスナイプビッドだが、なかなか思う様に外へ出し切ってない感じだ。
手綱を操作して外へと出す福永J。前ではオーバーヘッドがサワヤカユウタを振り切って先頭に立ちゴールを目指す。
やっと右ステッキを使え出した福永Jに応える様に伸び始めたスナイプビッド。一完歩ずつ詰めて行き、ゴールでは半馬身交わして先に入った。

前へ行った馬が4着まで残る流れ。1000通過が1.00.4とそんなに速いものでない。最後の1ハロンが13.2とかかった分でスナイプビッドが差せたものであろう。
直線で意外ともたついてしまった感じのスナイブビッドだったが、キッチリと答えを出すあたりがさすがであろうか。ダート戦が格別いいといった感じの印象ではなかったし、兄弟馬がかなり活躍している血筋。芝でどんなものかも見てみたい馬であろう。まずはデビュー戦を飾った。


土曜京都6R
2歳新馬・牝
芝内1600m
勝ちタイム1.36.1

勝ち馬
リトルダーリン(牝2、栗東・角居厩舎)

なんと、ディープインパクトの子供が4頭も出ている牝馬の新馬戦となった。そして、1番人気もそのディープに母エリモエクセルのリトルダーリン。そのリトルダーリンが、直線残り1ハロンからは、ギアが違うとばかりにグングンとスピードアップして行く。1馬身の差ではあったが、勢い的にはもう追いつかない感じのゴール前の伸びであった。

逃げたトラモンターヌの2番手を追走していたヤマニンポンプアンが、残り1ハロンで先頭に踊り出ようとした瞬間に、外の4番手から一気に前へ出てきたリトルダーリン。グングンと加速し始めて、一瞬の間に勝利を確定させてしまった。
おそらく岩田Jのステッキは手綱を握っている左手にそのまま収まっていたはず。手綱をしゃくってのフィニッシュで、最後の1ハロンが11.3のトップスピードとなっていた。

2着のダズリングワールドも、4コーナーでリトルダーリンの真後ろまで来ていたのだが、一瞬のうちに先に出られた感じで、追いつけないままゴールを迎えてしまってた。しかしこの馬の伸びも目を見張るものでもあった。
3着はハーツクライの子供、ネオザミスティック。4着は、一旦先頭まで出たヤマニンポンプアンだった。

他のディープの子供たはと見ると、道中追いどおしだったヴェルデライトが、ブービーの16着。道中外々を回らざるを得なかったピクシープリンセスは、直線半ばでもう戦意喪失。左右にブレていた感じ。そして気の毒なのがアイドルバイオ。最後のカーヴを、おそらく一番最後に入ってきたのだが、内ラチ沿い。残り1ハロン手前あたりでは、持ったままの手応え。しかし前に馬もいたし、直線半ばでゴチャつく中団の馬たちで最後まで何も出来ないままで、ゴールしていた。

岩田Jが乗って、この2週間でいいケイコ内容のリトルダーリン。攻めも十分で、素質を発揮したデビュー戦であった。404キロの小柄な馬体であるが、大きな仕事をしそうな雰囲気のある馬であろう。


日曜京都5R
2歳新馬
芝1200m
勝ちタイム1.09.7

勝ち馬
ヒカリトリトン(牡2、栗東・谷厩舎)

1200芝のレースのわりには、ゆったりと流れた前半。35.0は完全に前残りの数字である。そこをステッキをかなり入れられたヒカリトリトンが、直線の最後でいい伸びを見せてハナ差交わしての勝利。坂路で51秒台やゲートから107秒と、ケイコでは及第点以上のヒカリトリトンが見せた底力であった。

ゲートの出の速かったのはソーニの方。しかし数完歩もいかないうちにウエスタンハピネスが外から交わして出て行った。2番手ソーニで、1ハロンを過ぎたあたりで今度は先頭のウエスタンハピネスがやや掛かり気味となったのか、頭を上げてしまう。外へ出したソーニが交わして行くのかと並んだが、また内からウエスタンハピネスが行く。
3番手のタイセイブーケがだいぶ前に接近して、4コーナーへと近づく。そこから少し後ろにマイネルメガロスが続き、直後にヒカリトリトンで、そんなにペースは上がっていない。
4コーナーのカーヴを、前の2頭は並んでほとんど回って行く。少し後続とは差が開いた感じに見えた。タイセイブーケの直後にマイネルメガロス、その後ろにヒカリトリトンが続いている。

直線に入って来た。内ラチ沿いを走るウエスタンハピネスが粘る。ソーニが押しているが、半馬身の差が詰められない。3番手の馬たちと差が開いた感じである。残り50メートルで完全に前の2頭の行った行ったの競馬かと思えたが、その瞬間にヒカリトリトンが一完歩ずつ差を縮めてくる。
ウエスタンハピネスが、何とか先頭でゴールと思えた瞬間に、やっとヒカリトリトンの差し脚が届いていた。

ヒカリトリトンが使った脚が、3F33.9。ウエスタンハピネスが前半35.0で逃げて34.7で逃げ込まんとするところをハナ差交わしての勝利であった。
最後の1ハロンが12.2とかかったのが幸いしたのだろう。でも、キッチリと詰め寄る脚色はたいしたもの。そして4着に来ていたエリモフロンティアも悪くない終い脚であった。


日曜京都6R
2歳新馬
芝外1800m
勝ちタイム1.48.7

勝ち馬
アドマイヤコリン(牡2、栗東・橋田厩舎)

仕切り直しの一番となったアドマイヤコリンのデビュー戦だ。ゲートをいちはやく出て、そのまま先手を取っての勝利。今週4頭めのディープインパクト産駒の勝ち星である。1000メートルを1.01.8と遅い流れにして、行った行ったの先行馬ペースにしての勝ちだが、追われてそのとおりに反応することが大事。最後の1ハロンは11.2の切れだった。

パドックで、ムーアJの乗るテーオーアポロンがかなりうるさい仕草であった。立ち上がったりと、かなり獰猛に思えた程。馬場入りの時には意外や意外、案外大人しかったが。
ゲートでダノンマックインがややダッシュがつかない感じだった。外からテイエムドンマイが行く構えだったが、内からアドマイヤコリンが先頭に出て行った。
前半の3ハロンの通過地点では、テイエムドンマイに1馬身のリードでアドマイヤコリン。3番手内からニシオドリーム。直後にヒラボクビクトリータマモダイナミックが続き、全体にゆったりと進んでいる。
坂の中程でも前の2頭は同じ間隔。3番手にタマモダイナミックが押し上げ気味に動いてきた。エアクロニクルも上がってきて、ヒラボクビクトリーの後ろに取り付く。内にはストライクホークもいる。
4コーナーのカーヴを回って行く時には、前の3頭が楽な手応え。後ろが手が動いている馬ばかりだ。

直線に入って来て、馬場の真ん中をアドマイヤコリンが先頭のままで、まだ追ってない。2番手のテイエムドンマイの方が追い出している。その外へエアクロニクルが追い込んできた。いちばん内にはストライクホークが入ってきた。残り1ハロンを過ぎたが、先頭のアドマイヤコリンの脚色は衰えない。むしろまた差を広げだした感じだ。
外のエアクロニクルが2着かと思う勢いになった。しかし、もう一度テイエムドンマイが伸びだして2着を確保。最内のストライクホークも差のない4着であった。ダノンマックインは、直線でもそんなに凄い脚を使えてなくて、前から少し離れた7着であった。

最後の3ハロンが11.6~11.8~11.2と衰えてないスピードである。前半1000メートルをいかに1.01.8のゆったりで入ったにしろ、最後の切れ味勝負をそのまま発揮できたアドマイヤコリンの非凡さであろうか。
馬体は牡馬にしては小さく420キロであるが、そんな印象を与えない馬である。これで今週5頭めのディープインパクト産駒の勝利。いやはや凄いペースとなってきた。


日曜京都9R
もちの木賞
ダ1800m
勝ちタイム1.53.9

勝ち馬
トウショウクラウン(牡2、美浦・浅野厩舎)

ムーアJが勝つ時は、いや、ほとんどのレースで外を回らない。ここも大外枠ながら、道中は馬の中に入れてコースロスを防ぎ、直線半ばで外へ出してきてから追い出しての勝利となった。先に抜け出たグレープブランデーが逃げ込まんとするところをジワジワと追い詰めてのもの。8番人気のトウショウクラウンで、それも内容を一変させての勝ち。いやはや、このジョッキーはしばらく目が離せない。

ゲートでエーシンジェネシスが出遅れた。グレープブランデーはと見ると、スッと好位の4番手、外へではあるが、先頭のシゲルカンサヤクからは5、6馬身離れたあたりを追走だ。
2コーナーで内からダートムーアが並んで行く。向こう正面で先頭のシゲルカンサヤクが少しペースを落とした様だ。2番手スクウェルチャーとの差を、後続馬がぐっと差を詰めて行く。グレープブランデーもスッと前に行く構えだ。直後にピンク帽の2頭がマークするようにいた。内がトウショウクラウンで外がエーシンジェネシス。その直後にタナトスエイブルブラットが並んで追走だ。

3コーナーでは、内からルシャベルタンが押して、順位を上げていく。4コーナー手前では中央馬の10頭がそう差のない一団となってきた。グレープブランデーが前の3頭の横に並びかげんとなる。タナトスも外から追い上げて、まったく差がなくなって直線勝負となりそうだ。
外めから、ジワジワとグレープブランデーが最後の仕上げにかかりだした。前の先行馬をジワっと抜き去り、いよいよ先頭の残り1ハロンだ。
しかし、その時に外からトウショウクラウンが視界に入って来た。グレープブランデーを追いかけて一完歩ずつ迫り、最後は並んで抜き去って行く。ムーアJの大きなアクションである。

3着にはエイブルブラッドが追い上げてきて入っていた。
いつもどおりにパトロールビデオを見る。トウショウクラウンは、道中は外々を回らない。むしろ最後のカーヴなどは、内の方が近いところである。ただ直線半ばで外へ出す時に、後ろから来ていたエーシンジェネシスの進路を横切る様に出してきた。そこらで審議となった。
グレープブランデーは、道中で右に舌を出しながらのレース。これがこの馬のリズムかは知らないが、そんなシーンがビデオから見られた。

それにしてもムーアJである。決して道中は外々を回らないようにしている。馬ゴミの中で遊ばせているぐらいの行きっぷりが多い。そして直線入り口を過ぎてから、一気に脚を使わせて追い込んでくる。オフとオンのスイッチが完全に切り離されているかの様な、馬の走りっぷりとなる。先週といい今週といい、何度か見させて貰ったが凄い腕だと感心してしまう。

トウショウクラウンの未勝利戦勝ちは逃げ切り。それが今回は少しずつ順位を上げていく乗り方で、終いいい脚を使っての勝利だった。2ヶ月近いブランクだったが、昇級して直ぐに勝利と中身も濃いものだった。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。