リベルタスなど《平林雅芳 2歳観戦記》(12/5・6)

トピックス

土曜阪神5R
2歳新馬・牝
ダ1200m
勝ちタイム1.14.0

勝ち馬
キクノレジーナ(牝2、栗東・佐藤正厩舎)

4コーナー入り口で、4頭が半馬身ずつ外へと並ぶ形となって、ビーチパレードがいちばんいい手応えだった。しかし、直線半ばで最外のキクノレジーナの伸びがいい。少しずつ前へと出て行き、最後はもう一度ビーチパレードが迫って来たが、半馬身差で新馬勝ちの勲章を手に入れた。勝ち時計が遅いのは、最後の1ハロン13.3が示す様に、少し脚が止まり気味だった様子だ。

二の脚で、圧倒的人気のエーシンパナギアが出て行く。2ハロンあたりでビーチパレードにスエヒロジュピター、さらにキクノレジーナと、2番手グループも接近して来た。3ハロンあたりでは、前の4頭がどんどんと接近する。その後ろがエリーゼメモリーフェスタが2馬身あるかないかの差で続いて、4コーナーへと入ってきた。前の4頭では、一番外のキクノレジーナが、コーナーリングがあまり上手くなさそうな格好で回る。

4頭がほとんど並んで直線に入ってきた。最内にエリーゼが直ぐ後ろに顔を覗かせている。逃げたエーシンパナキアにステッキが入り出す。
中のビーチパレードが3番手となる残り1ハロン。外のキクノレジーナの伸びがいい。2着はエーシンパナキアかと思ったが、ジワジワとビーチパレードが伸びだして、前を行くキクノレジーナとの差も詰め出す。しかし半馬身届かずの2着だった。
3着エーシンパナキアだが、その後ろが少し離れて、ニシノガラシャがゴール前で伸びて4着。エリーゼが5着。スエヒロコジュピターは馬群に呑まれてしまった。

逃げたエーシンパナキアは、36.4とそんなに速くないペースでの先行である。上がりが37.6と少しかかった。最後の1ハロンだけがかなり遅い。ちょっとそこらが微妙なところで、馬場なのか、勢いが止まったものなのか。
次走、ここで2、3着の馬たちがどんな競馬をしてどう変るのかを観てみたい。


土曜阪神6R
2歳新馬
芝内1400m
勝ちタイム1.21.3

勝ち馬
ノーブルジュエリー(牝2、栗東・池江寿厩舎)

世界の共通語は口笛だろう。それも簡単なやつ、《ヒューイ》と尻上がりに感嘆詞を感じさせるもの。それを、馬を下りて鞍を外して検量室へと入るルメールJに賞賛の意味で吹いたら、彼も大きな音色で応えてくれた。それ程に見た者も手綱を握った者も感じた大物感。そんな勝ちっぷりだったこの女の子、ノーブルジュエリー。
直線では、ステッキを一発だけ勝負の厳しさを教える為に入れただけで、後は流して気味でのゴール。楽しみな馬の初陣勝ちだった。

スタートしてから誰も行く気がないのを確認したのか、ルメールJ騎乗のノーブルジュエリーが少し前に出て行く。そして後は引きつけ逃げとなる。2番手に押してミラクルペガサスが取り付き、外にニホンピロザジリキサンマックスと続く先行集団となる。一番内に最内枠のファワンがいる。3ハロンを過ぎたあたりでは縦に長い展開となり、最後方にはシャイニンオーラがブービーから3、4馬身離れた位置だ。
4コーナーに入る少し前には、2番手グループのリキサンマックスがやや外へ流れ気味。後続グループがぐっと接近してきて、フジヤマムソウが顔を覗かせている。
カーヴを回って来たあたりでは、だいぶ整理がついて2番手ミラクルペガサスがついてくるだけ。しかし手応えはもう悪く押している。一方のノーブルジュエリーは持ったまま。3番手にフジヤマムソウが完全に上がってきた。
残り200メートル。押しているミラクルペガサスが少しずつ置かれ出す。完全に前と離れ出した。内ラチ沿いを独走となったノーブルジュエリー。2着争いとなった。

ゴール少し前で、手綱だけでしゃくりながら追っていたルメールJだが、左ステッキを一度だけ入れて後ろをチラ見する。そして流したままのゴール。何と9馬身差であった。
その2着には、4コーナーで前に取り付いて中へと出してきたシャイニンオーラが、フジヤマムソウと外から追い上げて来ていたボサノヴァの間を良く伸びていた。
ノーブルジュエリーは、最初の1ハロンが12.6、最後の1ハロンが12.0だけで、後は10秒台と11秒台の連続。ジワッと出て行ったゲートからのラップと、ゴール前で後ろを確認してそんなに追ってない時だけが遅い数字であるから、もっと速く走れた可能性は高い。すると勝ち時計も1分20秒台でとなる。
そもそも、2歳レコードが1.21.1であるから速いタイムだ。このまま順調に行けばと思える逸材。今年も牝馬がえらく目立つ年である。


日曜阪神5R
2歳新馬
ダ1800m
勝ちタイム1.54.1

勝ち馬
ムスカテール(牡2、栗東・友道厩舎)

終始前々でレースを進めたムスカデールが、人気のトレンドハンターを抑えてのデビュー勝ちを果たした。勝ち時計も、新馬戦としてはかなり秀逸な54秒台をマークしてのもの。レベルの高い一戦だったと思えるダート戦であった。

スタートでトレンドハンターの出脚がやや鈍い。最初のカーヴを先頭で回ったのはフリーアズバード、2番手ナムラダイキチで外からジャニアリシックスと続き、ムスカテールがその後ろにつけて行く。
1コーナーと2コーナーの間で、エルヴィスバローズが不利を受けた。2コーナーを回って、2番手にジャニアリシックスが上がる。
向こう正面で前の馬のペースが遅いとみるや、後続馬がドッと間隔を詰めた。3番手にムスカテールが上がる。

3コーナーを過ぎて、前から絶好の位置にムスカテールだ。トレンドハンターもジワッと外から追い上げてきている。その直後にエルヴィスバローズも続く。そして4コーナーのカーヴを回る時には、ジャニアリシックスが手応え良く先頭気味。その外へムスカテールが並ぶ様にして直線へと入って来た。ワンテンポ置いてトレンドハンターである。
残り1ハロンとなる前に、ムスカテールが脚を伸ばして先頭に立つ。内で粘るジャニアリシックスだが、外のトレンドハンターが押して押して上がってきて交わして、前を行くムスカテールを追うが差が縮まらない。その3頭から後ろは離れていく。

最後の1ハロンを12.5でまとめたムスカテール。これでは後ろの馬ではなかなか届けない。トレンドハンターが2馬身差で2着、3着のジャニアリシックスはさらに4馬身の水が開いてしまった。
前半の入りはゆったりだったが、後半はビシッと締まったいいレースとなった。勝ったムスカテールは、好位からの抜け出しと完璧な勝ち内容。


日曜阪神6R
2歳新馬
芝内2000m
勝ちタイム2.03.7

勝ち馬
ヌーベルバーグ(牝2、栗東・音無厩舎)

牝馬とは思えない雰囲気を持つこのヌーベルバーグ。パドックから落ち着き払っていた。道中は中団より後ろめでレースを進め、4コーナー手前から一気に出て行った。直線では、デムーロJが手綱がまとまらないのか、何度も手綱をまとめる仕草で、まともに追えていたのだろうかと思える程だったが、それは素人の見方。火曜朝に須貝尚師に聞くと、あれはギアを入れ直している感じでもう少しあるだろうという意識だと言う。
なる程、判った様な、判るはずもないがそんなアクションで勝った直線。
2着サイモンロードには1馬身以上の差をつけてのゴール。これは長距離牝馬路線向きかと思える内容であった。

スタートから出て行ったアウグーリオ、2番手がマイネルトルテ。よく見れば同じ厩舎である。1000メートル通過が1.02.7だから、もう少しユックリと行ければ残れそうなものだが、それは乗ってない者の見方。そこそこ流れた展開となった。
4コーナー入り口では、もう後続がドッと押し寄せていた。3番手の内がサイモンロード。外がメイショウヤマカゼで、直後がスマートリバティー。その外へミッキーオーラ。その後ろにヌーベルバーグが顔を覗かせている。そして、最内の絶好位にジェントルマンと、各馬が虎視眈々と狙っている感じだ。

ヌーベルバーグが、カーヴをあまり巧くないコーナーリングで、後脚を流し気味な感じで回ってくる。残り300の棒では、もう内からサイモンロードが前へと出る勢い。外ではメイショウヤマカゼが先頭へと出る勢いだ。そしてその後ろからヌーベルバーグの勢いがいい。
1ハロンのところではサイモンロードが出て、外メイショウヤマカゼとなりそうだったが、さらに外からヌーベルバーグが。デムーロJがこの時はステッキを入れて抜いている。そして先頭に立ったヌーベルバーグに、またデムーロJが手綱を回す。最後はもう勢いづいたヌーベルバーグに任せてのゴール、そんな感じであった。

勝ったヌーベルバーグは、ラジオNIKKEI2歳Sはパスして来年の1月8日の福寿草特別へと行く感じのニュアンスで、火曜朝に音無師が語っていた。なかなか渋い馬であり、持続力のある脚を使う馬である。
とにかく、デビュー戦から古馬みたいな雰囲気で勝ち上がったディープインパクトの女の子、ヌーベルバーグの登場であった。


日曜阪神9R
千両賞
芝外1600m
勝ちタイム1.34.1

勝ち馬
リベルタス(牡2、栗東・角居厩舎)

心配が現実となった。ラトルスネークのレースぶりだ。ジンクアッシュが逃げたが、2番手に上がったラトルスネークが、鞍上の藤田Jが両脚で踏ん張って抑えても頭を上げて行きたがる。4コーナーで前に並んでしまい、結局は5着。初戦とはまったく違う内容となってしまった。
リベルタスはそれを見る形での4番手。直線入り口から前にスッと取り付いての仕上げと、完璧に能力を出しての2勝目。どうやら、福永Jの都合がつき次第、朝日杯に向かう予定のようだ。

外からジンクアッシュが出て行く。内でエーシンチャージレッドデイヴィスも前でいい位置となる。しかし先頭のジンクアッシュは勢いづいて、少し後ろと離れる。1ハロンを過ぎたあたりで、ラトルスネークが口を割りかげんで頭を上げながら、前へと行きたがっている。藤田Jの両脚が突っ張って抑えているが、かなり行きたがっている。結局、2ハロンを過ぎたあたりでは2番手となる。しかし先頭のジンクアッシュは、さらに前4馬身ぐらい先を行く。
リベルタスは5番手にいたが、ここらでさらに順位を上げて行く。3コーナーと4コーナーの中間では、もうラトルスネークが前に取り付いてしまった。むしろ前へと出たがっている様子。
カーヴのところでは、逃げるジンクアッシュに少し馬体を離し気味ながら、ラトルスネークが先頭気味となって回ってくる。

直線では完全にリベルタスが3番手に上がって来た。リベルタスの後ろにはデンコウジュピターが追い上げて来ており、さらに外へシゲルシャチョウと続く。4コーナーを過ぎたあたりで、先頭はまだジンクアッシュが粘っているが、直ぐ傍へラトルスネークが迫ってきており、さらにリベルタス、そしてデンコウジュピターが追い上げる。内へ入ってきてトップシャインも伸びて来た。
ゴールが近づくにつれて、リベルタスの脚色が優勢となっていく。内へ切れ込んだトップシャインが2番手と猛追して来た。外ではデンコウジュピターが伸びるところを、さらに外からシゲルチャチョウがジワジワと脚を伸ばして来た。一旦は詰めより気味だったトップシャインだが、ゴールではまたリベルタスとの差が広がった感じに見えた。
3着は、シゲルチャチョウが外からデンコウジュピターを交わして上がり、5着にラトルスネークが最後にジンクアッシュを抜いていた。

リベルタスは、派手さがない代わりに、渋太さがある様だ。ジワジワとした脚でしか見えない。でも数字的には34.1と切れもある。2着のトップシャインが最速の上がりで33.4。前半はほとんど顔を出していなく、最後の直線で追い上げてきたもの。
そして眼についたのが、内で詰まってしまったレッドデイヴィス。最内を狙ったものだが、進路がなく最後まで追えてないシーンが続いた。
ラトルスネークは、折り合い面での成長が望まれる。距離が短いのに越したことはないだろうが、マイルぐらいまではこなしたいもの。
前半に脚を貯められれば、デビュー戦のあの脚を使えるに違いない。開幕週で馬場も良く、タイム1.34.1が格別速いものでもなかろう。
まずはリベルタスの2勝目の一戦であった。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。