ヴォトレメイヤーなど《平林雅芳 2歳観戦記》

トピックス

土曜阪神6R
2歳新馬
芝内1400m
勝ちタイム1.22.4

勝ち馬:
アフロディシアス(牝2・栗東・宮厩舎)

逃げたエーシンハーバーが完全に逃げ切った、後続はどうなっているのかと目線を切った直後に前がいれ代わっていた。エーシンハーバーの藤岡祐Jも、かなりショックな様子。パトロールビデオを見ている後ろで、かなり口数多く報道陣に語ってもいた。
3着に4馬身。逃げたエーシンハーバーを2、3番手追走のアフロディシアスが直線でかわしたレースではあったが、最後の1ハロンが11.6。そこを勝ち抜いたアフロディシアスは、もしかしての馬なのかも知れないと、そんな思いが残る一戦だった。

ゲートが開いて、直ぐに一番前に出たのがアフロディシアス。そのまま行くのかと思えたが、外からエーシンハーバーが出て行くのを内で見ていたルメールJが抑えて3番手、すぐに2番手へと上がった2ハロンめあたりだが、外から上がってくる馬を先にやっての4番手でカーヴを曲がる。しかし前へ行くエーシンハーバーの藤岡祐Jの逃げたペースは完璧だったと思えるもの。前半3ハロンが35.0と、1400芝ではこれ以上ないゆったりな流れとしている。
1000メートル通過でさえもも59.0。余力を残して直線に入って来ている。そして、完全に勝ったと思った瞬間にアフロディシアスがゴール前で猛追してかわしさったもの。直線ラスト1ハロンでルメールJのステッキが飛んでいたあたりでは、まだ伸びもそんなでなかったが、ゴールが近づくにつれて伸びが鋭くなっていた。これが特筆ものでもあった。

ただ、見逃せないのが、3着に入ったフラアンジェリコが直線半ばで左右にふらついてしまい他馬に多大な迷惑をかけた事であろう。4着のサンライズドバイが《3着はあった》と小牧Jが言っていたし、5着のロッセもジグザグ運転となった直線は、その馬が起因となった動きでもあった。それと1番人気のスオウタカモリは、直線で内へと進路を取ったものだが、ゴール前は前が壁となって全く追えずの状態で流れ込んでいた。勝ち馬から2秒も離されての10着だが、この結果だけを信じない様に覚えておきたい。

勝ち馬と2着馬には何の不利もなく、すんなりしたもの。だから3着に4馬身と差が開いたのだが、少なくとも4着以降の馬に不利があってもう少しやれていただろうから、この差はもう少しは縮まったと思えるもの。
ただ勝ちペースで進んでいたエイシンハーバーをクビ差交わしたアフロディシアスの切れは、実に頼もしいもの。この馬もケイコでは地味な坂路時計。しかし実戦味がいい馬の様だ。年を開けて紅梅Sあたりで注目か。
もちろん、2着のエイシンハーバーもすぐに勝利を意識できるものであろう。


土曜阪神7R
2歳新馬
芝外1800m
勝ちタイム1.49.4

勝ち馬:
アドマイヤクーガー(牡2・栗東・松田博厩舎)

前評判の高いエイシンモンジューが抜け出したところを差し切ったのが、アドマイヤクーガー。また松田博厩舎の2歳馬だ。先行する4頭の直後の絶好位でレースを進めたのは事実だが、やはりそこからきっちりと伸びるのが偉い。最後の3ハロン11.6~11.5~11.8の切れ味勝負を制してのデビュー勝ち。またもや東を意識する馬が出現したのかも知れない。

逃げたのが、内からキクノスフィーダ。長い直線となる向こう正面をユッタリと進めて行く。前半1000メートルを1.02.6の流れとなる。その流れを、4、5番手の内ラチ沿いを進んでいるのがエイシンモンジュー。それをマークする様にアドマイヤクーガーが続く。ペースが上がったのはラスト800メートルの3コーナーと4コーナーの中間地点あたりから。
エイシンモンジューが前でアドマイヤクーガーが後ろだった位置が、そこらあたりで替わる。並び外へと出てい行ったアドマイヤクーガー。
エイシンモンジューは、そのまま内で辛抱だ。直線での追い合いとなった勝負の行方だが、最内をついたエイシンモンジューに対して、馬場の中から外へと出してきたアドマイヤクーガー。真ん中に逃げたキクノスフィーダを挟んでの追い合いとなった。
外から猛追してきたのが、直線に向いた時に一番最後に入ってきたピエナセレブ。少し前を行くメイショウクロオビの外から、凄い伸び脚を見せて前へと迫って行った。大外を伸びて来た脚色は凄く、結果的には半馬身、前の2頭には及ばなかったが、見事な脚であった。

逃げたキクノフィーダが5着。結局は切れ味勝負に持ち込んでしまったが、自身よりも速い馬が4頭いたという事だろう。
1番人気の支持を得たメイショウクロオビは、自分より後ろのピエナセレブが際どい競馬を展開できているのだから間に合う位置だったはず。だが際立った脚は使えずじまいで、5着から2馬身差の6着であった。
エイシンモンジューは526キロの大型馬。勝ったアドマイヤクーガーは448キロでそうも大きくない馬体。道中の折り合いも直線での切れの点でもアドマイヤクーガーが上回ったものだが、エイシンモンジューも直ぐにでも勝ちが見える馬であろう。


日曜阪神5R
2歳新馬
ダ1200m
勝ちタイム1.13.5

勝ち馬:
マルブツサバンナ(牡2・栗東・北出厩舎)

1.9倍と、新馬戦では圧倒的な人気のマルブツサバンナ。520キロの大型馬だがスタートがやや遅れ気味だったがじっと脚を貯めての直線で抜け出すといった味な競馬でデビュー戦を飾った。

スタートで上に飛び上がる様に出たマルブツサバンナ。しかし、流れも新馬戦としてはソコソコに速いものとなってちょうどいい位置となった感じの7番手ぐらい。前半3ハロンが35.4。その流れを演出したのがコロカムイであり、ナムラプルート、その中にスズノオオタカ
3コーナーでは、前2頭が雁行していくシーンも。3番手にスズノオオタカで1000メートル通過が1.00.7とやはり速い。
向こう正面で中団まで取り付いたマルブツサバンナ、じっと脚を貯めている。4コーナーで少し外めに出してきて、直線1ハロンでは先行していた前3頭を抜いて伸びてきた。ただ、それでも動きとしては幾分速かったのか、メイショウカグヤが猛追して来ていたが、岩田Jは余裕で内の後ろめを確認してと、やや流し気味のゴール。最後2ハロンが12.7~12.8と、そんなにバテている数字ではない。迫ってきたメイショウカグヤの脚が立派だったという事であろうか。

マルブツサバンナは、坂路でのケイコでいくら先週は時計の出やすい状態だったとはいえ、2F24秒台をマーク。毎回上がり1Fを12秒台で来ている素質。冷静沈着な岩田Jの好騎乗もあった。サクラバクシンオーで短い距離はいいのは判っているが、この勝ち方は逆に得るものが大きかったはずでもある。


日曜阪神6R
2歳新馬・牝
芝外1600m
勝ちタイム1.38.4

勝ち馬
ヒシカルメン(牝2・栗東・佐山厩舎)

3コーナーあたりから先手となったヒシカルメン。流れが1.03.8の5ハロン通過で、ゆったりした流れでのもの。内から伸びてきたディープインパクトの子供ピエナメダリストが2着と、迫るまではいかない差でのもの。上がり2ハロンだけが速くなった数字のとおり、追い出したのが生垣を過ぎてからのラスト300あたり。そこからステッキを入れて抜け出したヒシカルメン。最後にもう一度ステッキを入れたら、内へと逃げる様な仕草をしていたのは愛嬌か。ヒシピナクルの子供、ヒシカルメンが新馬戦で舞った。

スタートして、最初は内枠のネオシルヴィアが先行。しかし3コーナーへ入る前に、ラチの影に驚いたのか、ひるんでしまい下がる。自然に先手となったヒシカルメンには絶好な流れ。ゆったりと進んでいた上に、カーヴを回るあたりでは楽な逃げ。そのまま後続を連れての逃げとなった。
そのヒシカルメンに並んできたのが、エリモベレーザマルサンアップル。直後にピエナメダリストが絶好の位置にいる。
そして4コーナーを回って直線に入って来て、ヒシカルメンの脚色は衰えない。むしろ2番手グループの末脚が停まりだす。そこをピエナメダリストが伸びて来たが、前を交わすだけの勢いまではなかった。
3着には、マルサンアップルが粘り、クビ差で1番人気のアンティークカラーが伸びて来ていた。ブロードピークは、ゲートの音に驚いた様子と武豊J。後方からの競馬となり、直線で大外を、最後だけ脚は見せていたが、届くまでの勢いではなかった。でも、実戦の方がケイコよりは良かっただけに、十分に変わり身を見せてくるものと思われる。

勝ち時計1.38.4はかなり遅いもの。火曜朝に猿橋助手が話していたが、勝ち時計は36秒台と踏んでいただけに、予想より遅かったもの。それだけレベルが少し落ちた一戦となっていたのも事実。そして、またゆったりした流れになった事も、ヒシピナクルには能力を十二分に発揮出来たものだろう。
何せ、坂路で必ず12秒台をマークしているケイコを見せていた。ただ、次走は厳しい戦いとなるかも知れない。そんな事を思わせる一戦でもあった。


日曜阪神7R
2歳500万下
ダ1200m
勝ちタイム1.12.4

勝ち馬:
ヴォトレメイヤー(牡2・栗東・中竹厩舎)

逃げたのがヴォトレマイヤー、2番手がワンダーフォルテ。結局は、この2頭がクビ差のしのぎ合いとなった一戦。このクラスで1000通過が59.7は、スンナリな流れだけに速くはないもの。十分に息を入れての直線の攻防だったが、最後まで抜かせなかったヴォトレマイヤーは、これでダート戦は2勝と完全に適性を示してもいる。

シゲルソウサイの2着だったカリスマサンスカイが外枠。このメンバーでは一番速いのがヴォトレメイヤー。ゲートをポーンと出て、すかさず押して出て行く。その後はすんなりと誰も絡まずに行けて、淡々とした逃げを展開出来た。ジワッとした流れを見て、ワンダーフォルテが2番手へと上がって行く。半馬身差の2番手で、3コーナーのカーヴを回って行く。
半馬身間隔で、外へアスカノバッハ、カリスマサンスカイと並んで、最後のかーヴへと入ってくる。一番外のカリスマサンスカイが回りきったあたりで、前の2頭に並んできた感じではあるが、前を行く2頭が十分に息を入れていただけに、追い出しにかかった直線1ハロンでは、前に出る事が出来ない。
完全に追い合いとなった1ハロン過ぎからの攻防。いちばん内で逃げ粘るヴォトレメイヤー、追うワンダーフォルテの争いになっていく。
ゴール少し前で、外のワンダーフォルテがグイと伸びだして急接近したが、クビ差届かず。3着カリスマサンスカイには、前の2頭が水を開けていた。

勝ったヴォトレメイヤーは、ダートでは2戦とも先手を取ってマイペースに持ち込んでの勝利。ワンダーフォルテは少し前に予定があったのだが、ソエ気味で先延ばしとなったもの。少し順調さを欠いた期間もあったのだろうから、この内容は大きいもの。もっともスンナリした流れも良かったはずだけに、次走どんな流れになるのかもあろう。ヴォトレメイヤーは、これでオープン入り。上のクラスではなかなかダート戦の番組がないだけに、芝で新馬戦2着以上に上積みが出来るかであろう。



平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。