コスモヘイガーなど《平林雅芳 3歳観戦記》

トピックス

土曜京都4R
3歳新馬
ダ1800m
勝ちタイム1.57.7

勝ち馬
サングップ(牡3・栗東・佐々木晶厩舎)

スタートでサウンドバスターが外へヨレて出た。
川田Jが心配そうに後ろを見ている。
ゲートの中立からスタートして行く瞬間に、いろいろな事が起きている。そこからドラマが始まる。
逃げたサングップが超スローな流れを演出。1000メートル通過が1.06.3とかなり遅い。
それをゴール前で急追したのがそのサウンドバスター。道中は内々の7番手ぐらいで脚を貯めて最後に詰め寄ってきたのだが、クビ差届かなかった。1番人気のディアカナメチャンが、少し遅れての3着であった。

道中、それも2コーナーを回ってから、すぐにペースを14.0と落とした浜中J
向こう正面を、そのまま3度同じラップを続けて逃げていく十分に息が入る流れを演出している。
むしろ2番手が、ディアカナメチャンとベリーJ騎乗のウォーターメジャーが並んで後続をカバーする様な流れだ。
その後もさしてペースは上がらず、最後の3ハロンになってやっと12.4。
直線入口からの最後2ハロンめも12.6として、追い上げてきたサウンドバスターとの叩き合いとなった、ゴール前、最後の1ハロンも13.1であった。
絶妙なペースを造り、勝利に導いた浜中Jの騎乗っぷりであろう。1、2、3着ともに、道中は内ラチ沿いを通ってきた馬の決着。スローなだけに、経済コースが当然に優位になる。
4着に追い上げてきたセントヴァリーが、ゴール前窮屈な感じだったのが目だっていた。

サングップは500キロを超える大型馬だが、坂路で暮れにも正月明けの4日にも好時計でまとめてきており、仕上がりはまずまず。遅い流れで4コーナーを回ってすぐに追い出す長めのスパートだが、前半の貯金を生かした。先手必勝を生かしたレースであろう。ただ、平凡戦であったのは否めない。


土曜京都9R
福寿草特別
芝内2000m
勝ちタイム2.00.8

勝ち馬
コスモヘイガー(牡3・栗東・中村厩舎)

直線入口ではトーセンラーの手応えも抜群に良く、抜け出して快勝するだろうと心の中で予期して身構えていた。
直線の最後の1ハロンを内で粘るコスモヘイガー、そしてトーセンラーの後ろから猛追してきているヴィクトリースターだったが、追い合いでも負けはしないと固唾を呑んで見守っていた。
しかし、ゴール前で3頭が並んで入ったものの、トーセンラーは一番劣勢に見えた。そして、やっぱり電光掲示板に点滅する数字。2着の写真でも負けていた・・・。

スタートで、トーセンラーが少しヨロッと出て、隣りのアドマイヤラクティの進路に出た様だ。その分遅れをとったアドマイヤラクティであった。
スタンド前はサンビームが先頭に出ていく。
2番手エクスビート、3番手ジェットストリーム
その体勢は1コーナー、2コーナーを回っても続いて行く。
トーセンラーはと見ると前から7頭めぐらいだが、内のヴィクトリースターと並んでそんなには後ろめでない。けっこう流れている様だ。
3コーナーを過ぎて、グッと後続馬が前へと接近してきた。
後ろの方では、アドマイヤラクティがあまり上がってくる気配がない。

そして4コーナーへと近づき、トーセンラーが手応えもよく前々と上がってきた。
すぐ内へ赤い帽子が並ぶ、コスモヘイガーである。でも武豊Jの手応えが優っている。
そのまま4コーナーのカーヴを回って直線に入ってきた。
トーセンラーはいい感じで外めから抜け出せそうだ。しかし、内のコスモヘイガーが執拗に粘っている。後ろではインから外へ出したヴィクトリースターが急接近してきた。
脚色の衰えた先行馬を抜いて、コスモヘイガーとトーセンラーが併せ馬で前へ出て、その外へヴィクトリースターも迫ってきた。
3頭が並んで最後の詰め合いだ。トーセンラーは前へ出ない。むしろゴールの瞬間にはいちばん体勢が悪そうだ。

上がってきた武豊Jが、枠場に馬を入れる。3番手のところだ。そして頭をかしげる。
『4コーナーの感じなら、完全に抜け出す手応だったのだけどね~』と言いながら検量室へと入っていった。
PV(パトロールビデオ)を何度も見る。
最初のコーナーで、コスモヘイガーが前の馬のアオリで外へ流れそうになって、あわてて鞍上が内へと入れる。その後は折り合いもついて内ラチ沿いを進めている。
その直後、ヴィクトリースターがインコースにへばりついて回ってきている。
前半の1000メートルが1.00.8だが、終始12秒台のラップで進んでいて、そんなに遅い流れではない。
最後の3ハロンが11.8-11.6-11.7は、今のパンパン馬場なら当然の数字だろう。
前走の小倉で2歳戦のレコードタイムで勝ち上がったコスモヘイガー。渋い手応えだが確実に伸びていた。
そしてヴィクトリースターは、前走はトーセンラーにコンマ2秒差の5着だったが今日は逆転した。道中は内々で脚を貯めて直線で弾かせてきた。リスポリJの手腕もおおきかった。
それにしても、トーセンラーの伸び具合の悪さである。次走はちょっと乗り方を工夫してみると武豊Jの言葉であった。
どうやら気性面で少し思い当たる節がある様だ。


日曜京都4R
3歳新馬
ダ1200m
勝ちタイム1.13.8

勝ち馬
メイショウマシュウ(牡3・栗東・高橋隆厩舎)

スタートから出て行った圧倒的人気のエーシンジャイヴ、2番手の外にホクトキングダムがやや並ぶ格好で行っていたが、『どうせペースは遅いのだろう、前々で決るな』と見ていたら、何となくエーシンジャイヴが変だ。
そして4コーナーを回る時には、やや脱落気味になる。
勝ったのがホクトキングダムでなく、その後ろに位置していたメイショウマシュウで、高配当となった。
そして引き上げてきた武豊Jから『ジャンプを3、4回ほどしていた~』と聞く。あわててパトロールビデオを見に行った。

長い間、競馬を見てくると、いろんな事が起きるのを知っている。
道中カラスにぶつかったとか、物見をして内ラチへと飛び込んだとか、本当に多種多様の事が起きるものだ。今回もまさしくそんな感じ。
向こう正面から4コーナーまでは、外から陽光を浴びて影が自分の前に出る。
その影にもおびえていたのかも知れないが、一番の原因は、車の轍が残っているところがあるものだが、それを必ず飛んでいることだろう。
それも上手に飛ぶのではなく、驚いてブレーキをかけているのか、遅れ気味になっている。そんなシーンを3度程、見る。
並んで行っていたホクトキングダムの太宰Jも驚いたのではなかろうか。
この2頭がやや並び気味に行っていたが、ペースは前半3ハロンが36.1で、4ハロンが48.9とかなりゆったりな流れ。普通は勝ちパターンの流れである。

勝ったメイショウマシュウはとパトロールビデオを見ると、あまりゲートの出は良くなかったが、その後が少し位置を上げて、そして内めへと入ってきている。
4コーナーを回る手前では、前のグループの後ろ、絶好の位置に入る。そこから外へ出しての追い上げ。ステッキ計3発ぐらいしか入っていない。2馬身半の楽勝であった。
2番人気のマッキンリーは、前の2頭に絡まないでの3番手、4コーナーで並んだが、そこから伸びあぐねて3着。
3番人気のダイヤモンドアローは、ゲートの出が今いちではあったが、それからの競馬内容が終いも来るでなし、何もなかった感じだった。
しかし、本当に競馬の中ではイロイロな事が起きるものであると、つくづく思った一戦でもあった。

メイショウマシュウは、ケイコはCWでは12月上旬に84秒台が最高と、コース追いではあまり動かない馬の様子。
暮れの坂路がまずまずのタイムだが、何よりも数をビッシリとやっているのに気が付く。
平均的な流れであったが、出脚がついてから内めの好位を追走して、終始楽な手応えであった。最後の1ハロンも12.3としっかり伸びていた。
高橋亮Jは、調べてみたら2009年8月8日のメイショウケンロク以来の勝ち星。
真面目で黙々と調教を乗っている好青年。もっともっと活躍出来るジョッキーであり、頑張って欲しいものだと思うものだ。
まずは『おめでとう』と祝福しておきたい。


日曜京都6R
3歳新馬
芝内1600m
勝ちタイム1.35.6

勝ち馬
ウアジェト(牝3・栗東・清水出厩舎)

レースを終えてウイナーズサークルへ向かう前の検量室で、池添Jがかなり嬉しがっていた。
『メッチャ、嬉しい~』と、仲のいい幸Jと抱き合うばかりのシーンを見た。
《今年の初勝利だからか?》とこの行動が大げさだなと思いたち、翌日、10日の朝イチバンに彼に出会ったので聞いてみた。
すると《いや~、去年12月が未勝利だったんですよ、重賞2着とかはあったが勝てなかった。そして今年もここまで勝てず、いや~、もうずーっと勝てないかと思ったぐらいなんで~》の答えにビックリした。
《そうだったのか、心の葛藤みたいなものがあったのか~》と勝負事の恐ろしさに驚いたものだった。

行ったいったの先行馬ペース。
前半3Fが35.5の入りであり、その後の1000メートルも59.9と理想的なペース。
返し馬ではメイショウヤタロウのキャンターが凄く良くて《ああ、メイショウボーラーの下でスピード感タップリだな》と思うものだった。
そのメイショウヤタロウがスッと前へ出て行くかと思ったが、ウアジェトの2番手で行く。結局はそのままで終わってしまった。
パトロールビデオで見ると、どうやらメイショウヤタロウはフワフワしている。だから2番手に収めた様子だ。
結局は、そこで流れを蓋をした感じで、行った行ったの流れとなったものだろう。
速くなったのは、ゴール前最後の2ハロンだけで、11.8~11.9。内が伸びる馬場というか先行有利な馬場コンディションの中で、完全なるマイペース。池添Jの好騎乗だろう。
先程も触れたが、池添Jは昨年の11月27日の京阪杯スプリングソングの優勝以来の勝ち星。それから75戦ぶりの勝利。
《こんなに勝てなかったら悩むよな~》と調べていて思った。
勝負事は、いろんな罪作りをするものですな~。

ウアジェトとは、JRAの馬名意味で調べてみると《古代エジプト神話の女神》。
ヤフーで調べてみると、エジプトの守護女神であり、聖蛇コブラを意味する様だ。そんな奥の深いネーミング。池添Jがその使者となったのであろうか。
ケイコは専門誌に出ているだけだったら、数は少ないものだが一杯に2度ほど追っての出走。
470キロとしっかりと馬体もある牝馬。今後も注目の馬でありましょう。
しかし、新馬勝ちながらイロイロといろんなものが見えてきたレースであり、しっかりと記憶に残る一戦となるものでしょう。


月曜京都3R
3歳新馬・牝
ダ1400m
勝ちタイム1.27.7

勝ち馬
マックスシャルビー(牝3・栗東・梅田智厩舎)

この1400という距離は1200よりもユッタリと進むのが常で、けっこう逃げ切りや先行押し切りが多い傾向にある。
ところが今回の新馬戦は、前半が35.5とけっこうなペースで進む。
終始5頭程が横並びで先行争いをする中で、その流れに巻き込まれずに脚を貯めていたマックスシャルビーの藤岡康J。
直後で、先に後ろから前へと出た兄、祐介J騎乗のプレシャスラインをゴール前で差しての勝利。味な競馬内容で新馬勝ちを収めた。
時計でなく、内容的に目をひくものだった。

1400ダートは、最初に芝の部分を行く。100メートルぐらい続くそこをドンドンと前へと出て行く。
チョウイケイケラブリースカイニシノテキーラ。さらにスリーキティと4頭が並びかげんで前へと出て行く。
そこへ、最内のチェックファイヤーもダッシュついて追い上げてきて並び、ダートに入った時には前5頭、後ろ5頭となって前へと進める。
その10頭ほどの先行集団から馬を下げたのがプレシャスライン。1頭だけ馬群から水を開けた。まだ3ハロンを通過してないところだ。

3コーナーのカーヴを回って行く時でも、前が5頭ほどが並んでいる。
4コーナー手前ではチョウイケイケ、ラブリースカイにニシノテキーラ、さらに外スリーキティと4頭が並び、直後がマックスシャルビーが内、外にラポール。マックスシャルビーの半馬身後ろの内めにレッドシルフィア、さらに半馬身内にチェックファイヤーと続く。
そこから1、2馬身後ろの内めにプレシャスラインが控える布陣だ。
前は内から3頭が勢いそのままでカーヴに入る。
いちばん内に、赤い勝負服のレッドシルフィアが顔を覗かせる。その隣りのマックスシャルビーが持ったままだ。

カーヴを回って、前の5頭と後ろの馬との間隔が一瞬に開く。
そこへ内ラチから出してプレシャスラインが前へと出てきて、ニシノテキーラの外へ接近して並ぶ。
マックスシャルビーは、ちょうどその2頭の間になってスペースがなく、そこでじっとして待っている。
残り1ハロンが近づいて、追い出したプレシャスラインがニシノテキーラを離す。
やっと前の視界が広がったマックスシャルビーが、馬首を外へ向けて前を追う。
右ステッキでうながされたマックスシャルビーが伸びて行き、プレシャスラインの外へ並んで前へと出た時がゴールであった。
すぐ後ろにクーファセミラミスがもの凄い脚を使って迫ってきてはいたが、届かずの脚色であった。

なかなかこれ程に激しい流れがずーっと続くレースも、そうはお目にかかれない。
先行集団にいながら、前も左右も馬に囲まれて脚が貯まったマックスシャルビー。直線入口でもまだ脚を使う場所がなかった。それが最後のひと押しとなって差し切れた。
上がりの最後3ハロンすべてが13秒台という数字が物語っている。
420キロの小柄な馬だけに、そんなに数は要らなかったケイコの量の様だ。
流れに巻き込まれずに、自分の競馬に徹した藤岡康Jの手腕も光った新馬戦であった。


月曜京都6R
3歳500万下
ダ1800m
勝ちタイム1.55.8

勝ち馬
トレンドハンター(牝3・栗東・松田博厩舎)

未勝利を圧勝したスマートルシファーの昇級緒戦。
ダートで真価を発揮したものであったが、今回は自分の競馬が出来るかもポイント。
同じく逃げて勝ったナムラダイキチが行くだろうとは想像できた。後は流れの問題と見ていたが、想像以上にユッタリと進めた前半。しかしそこにポイントがあった。
トレンドハンターが3番手をピッタリとマークしており、上がりの勝負なら自分の方が上とばかりに、直線で内外を離しての追い合いも直ぐに決着がつき、1馬身半の差をつけて連勝を飾ったもの。
層の厚さを感じる松田博厩舎から、またオープン馬がランクインされた。

ナムラダイキチが、おそらく先手を主張してくるだろうとは予測がついた展開。
2番手におさめた武豊Jのスマートルシファー、実にユッタリと流れを造る。
前半1000メートルが1.05.7と、このクラスでは超がつくほどのスローペースだ。
事実、3コーナー過ぎから、チラっと左後ろを何度か確認する武豊Jの動きがパトロールビデオで見られた。
それほどに流れも完璧だったし、末脚も思う存分に発揮できる流れだったはず。

4コーナー手前からペースアップした時に、トレンドハンターがしっかりと付いてきていた。4コーナーを回る時も、後ろをチラ見した武豊J。おそらく追い合いでも負けないと思っていたはずだ。
前のナムラダイキチに馬体を並べ追い出しにかかる。しかし、その瞬間にトレンドハンターも外へ並んできた。

残り1ハロン手前から3頭の追い比べとなった。
中のスマートルシファーと、外のトレンドハンターの一騎打ちとなった。追い合いになって、直ぐにトレンドハンターがクビだけ前へと出る。
スマートルシファーの勢いとはまた違う伸びで、ゴールへと進んで行く。最後は、その差は1馬身半もあった。
むしろナムラダイキチとの差の方が、スマートルシファーには近かったかも知れない。

直線に入っての最後2ハロンが、11.9~12.1である。
2ハロン前の11.9のところを、トレンドハンターはむしろ前に並びかけてスピードアップしていく切れ味。
武豊Jがレース後に《切れ負けしちゃったな~、負ける気がしなかったんだが・・》と述懐していたが、相手が上だっただけ。
新馬初戦、そして未勝利を勝ち上がった時といい、37秒台で駆け抜ける脚を持つトレンドハンターの切れが優ったという事だろう。
母のブライアンズタイムが実に良く出ているトレンドハンターであろう。
恐るべし松田博厩舎の3歳馬である。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。