モアグレイスなど《平林雅芳 3歳観戦記》(1/15・16)

トピックス

土曜京都3R
3歳新馬
ダ1800m
勝ちタイム1.55.6

勝ち馬
タガノリベラノ(牝3、栗東・五十嵐厩舎)

関東から2頭の参加をみた新馬戦。混戦模様の戦前だったが、ゴ-ル前で勝ち名乗りをあげたのがリスポリJ騎乗のタガノリベラノで、何とステッキが数えただけで計22発も入れられた程。初戦からブリンカー着用と、気性面でズルさがある馬なのだろうが、そのステッキさばきも見応え十分の一戦であった。

逃げたアウリーストームが1.05.8のマイペースに持ち込み、直線で馬体を並べてきた圧倒的人気のウィキマジックの寄せにもう一度抵抗して振り切って勝利かと思えた瞬間に、その外からタガノリベラノが先にゴールに入っていた。
アウリーストームは、終始1馬身ぐらいと引き付けた逃げ。その2番手にはウィキマジックがピタッと付いてきており、直線入口で並びかけてきた時には、そのままゴールへ駆け込むのかと思われたが、直線中ばからは、むしろ内でアウリーストームが息を吹き返して盛り返した。

上がり3ハロンが36.9と、まんまの逃げペースだったはず。ところが、勝ち馬のタガノリベラノだけが、鞍上に追われて伸びてきた感。4コーナーまでは内の5番手ぐらいでレースをしていたが、4コーナーを回る時から、もう鞍上のリスポリJはステッキでうながしていた。
ここで10発入れて、直線半ばまで来た。そしてそこらあたりで前との差がグーンと近づき、再びステッキを入れだす、それもゴールが近づくにつれて入れる速さがドンドンと速くなり、最後は連打であった。

パトロールビデオで数えると、1ハロンでは12発。ヨーロッパでは騎乗停止処分となる回数だ。そうやって叱咤激励し、タガノリベラノの闘志に火をつけてゴールに入ったもの。

レースそのもので言えば、勝ちパターンはウィキマジック。馬体も好仕上がりで直線入口の感じからは完勝と思えたものだ。それが追い出してからが案外だった。これだけは仕方ないものだろう。
むしろ2着のアウリーストームの粘りが立派。道中で若い仕草をタップリと見せながらの先行策。勝ったリスポリJのステッキさばきといい、新馬戦ながら見どころ一杯の一戦であったと報告しておく。


土曜京都4R
3歳500万下
ダ1200m
勝ちタイム1.13.8

勝ち馬
クィーンオブライフ(牝3、栗東・音無厩舎)

勝ち時計の遅さが物語っているだろう。この日の2レースでの未勝利戦の勝ち時計が1.14.2であった。このクラスで1.13.8である。この遅さは、流れを造った北村友Jの手腕によるものだろう。何せ、前半の3ハロンが36.8の遅い入りで、上がり3ハロンも37.0と理想的な流れ。後ろの馬が、その流れにまんまと嵌った感があるからだ。2着も、2番手を進んだタイセイマグナム。それこそ、行った行ったの先行馬ペースでの決着であった。

スタートが良かったのは、むしろタイセイマグナムの方だった。その後にクィーンオブライフ。内からホーマンルッツも顔を出したが、行き切る気持ちはなかった様子。で、結局はクィーンオブライフが先手を取って行く。タイセイマグナムも離れず付いて行った。
3コーナー過ぎから、その2頭の外にマルコフジが順位を上げて並べてきた。4コーナーをその3頭が並びかけて回るが、コーナーワークでやはり内が有利。追い出して一旦は2馬身ぐらい後続に差をつけて決定的な差かと思えたクィーンオブライフ。ところがゴール少し前あたりになると、後続馬との差がグッと縮まる。4、5番手の最内のラチ沿いを、ショウナンアリビオの脚色がかなり目立ってグングンと順位を上げて行く。しかし、やはりセーフティリードとなっていたのだろう、クィーンオブライフの勝利は確定。
2、3、4着が際どかったが、何とかタイセイマグナムが粘り通していた。

やや小粒となったこの一戦だが、未勝利を勝った時以上の遅い時計での決着に持ち込めたクィーンオブライフの積極策が功を奏した。そんな感じの一戦であった。


土曜京都6R
3歳新馬・牝
芝内1600m
勝ちタイム1.36.6

勝ち馬
ナムラカメーリア(牝3、栗東・福島信厩舎)

3コーナーでは後続を3、4馬身も離して逃げたナムラカメーリアが、結局はそのまま逃げ切った。道中もフワフワしていたに違いないが、パトロールビデオで見る直線でのシーンは、とても褒められたフォームの走りではない。頭を内馬場の方へ向けて体は真反対な外へと、縦位置で見ると凄い格好。前半1000メートルを1.00.3で行けた貯金が大きくものを言った様だ。

2番手を進んでいたのがエカルラート。前との間隔をけっこう取っていたし、内も明け気味だった3コーナーから4コーナーの間。そこをすくって順位を上げてきたのがテイクザサン安藤勝J。4コーナーに入る時は前との間隔はもうないにも等しいぐらいで、勢いからもカーヴを回ったら逆転さえ読めた流れだった。そして真っ直ぐに馬体が見える直線だが、あまりに伸びが見られない。逃げて内ラチ沿いを走るナムラカメーリアがまた脚を伸ばした感じで、差が詰まらない。結局は、そのままの態勢でゴールへと入ってきた。上がり3ハロンも36.3と、そんなに切れ味を要求される競馬にならなかったのが良かったようだ。

人気の一角を占めていたアドマイヤエレノアは、スタートをモッサリと出てしまい、最後方からのスタート。少しずつ順位を上げて行って、直線でも一旦は外めを伸びかけていたのだが、直線半ばからは内へもたれたか、馬の中へと寄って行ってしまった感じ。最後まで爆発力を出すところが見られなかった。
4着エーシンミモザが、前の2頭がやや外へ進路を取ってきたため、最内へと進路変更してからの伸びがやや目立っていたものだった。レース自体が最後の1ハロンが12.3とスローな流れの割りに時計がかかっているのが、全体のレベルを示しているかも知れない。そんな牝馬の新馬戦であった。


日曜京都5R
3歳新馬
芝外1800m
勝ちタイム1.50.9

勝ち馬
アドマイヤスキップ(牡3、栗東・松田博厩舎)

スタートからスッと出て行ったアドマイヤスキップが、道中もマイペースに落としての逃げ。1000メートル通過を1.03.4とこれ以上ない流れにした。完全に逃げ切ると思えたのだが、ゴール前でステラロッサだけが猛追して、写真判定まで持ち込んだ。しかし、やはり自分でレースを造ったアドマイヤスキップに勝利の女神が微笑んだ。

最後の3ハロンは11.8~11.9~11.4と決め手勝負。それをステッキ3発ぐらい入れただけで、アドマイヤスキップは決めた。それに対して、ステラロッサは道中で6番手ぐらいを進んでいたが、4コーナーで2番手グループまで接近して、直線も脚を伸ばしゴール前ではかなりの追い上げを見せた。
一方、1番人気の支持を受けたゲバラは、道中もフワフワした走りを見せていた。4コーナーでは前から下がってくる馬の影響もあったりしたか、少し位置的には苦しいところ。それでも直線で外へ出して伸びてきそうな脚色を見せたものだが、最後はドンドン外へ流れ気味な感じだった。
ゴール前で矯正はしていたが、前の2頭から2馬身も離されていただけに、勝負に参加せずの感じとなった。
4着には、最後内めから脚を伸ばしたエーシンバリントンが入った。ピエナオリオンはジリジリとした伸びで、直線でも最後までエンジンがかかった感じはしなかった。

次のレースを検量室の前で待っている武豊J四位Jと立ち話。《スローな流れであれ、自分からスッと行ける馬が勝ち負けになる》という事だった。今時の新馬戦で、まず後ろから来て勝つなんてシーンはほとんど見かけない。鞍上がうながすまでもなく、自ら行く気持ちの馬がデビュー勝ちをするというイメージを語っていた。まして、それでゆったりペースに落として決め手勝負に持ち込めるアドマイヤスキップ。自在性が十二分にある能力は、上でも即、結果を出しそうだ。


日曜京都6R
3歳500万下
芝内1600m
勝ちタイム1.35.9

勝ち馬
ニジブルーム(牡3、栗東・山内厩舎)

直線入口で、ほとんどの馬が横一線に近い状態になるぐらい急接近した大混戦レースとなった。それだけ平均に流れたペースだった訳だが、コティリオンはそんな流れでも行きたがってしまい、直線半ばで先頭に立ったものの、もう余力を残していなかった。4コーナーをほぼ最後方で回ってきたニジブルームが勝ち、その一瞬後を追いかけたギリギリヒーローが猛追したゴール前となった。単勝が万馬券、馬単が10万と大波乱の一戦となった。

ピルケンハンマーが内から逃げて、ウエストエンドが2番手。その後が内にラトルスネークで、外がエーティランボーの先行集団。前半の3ハロンが34.8だから、そうべら棒に速いわけでもない。その後ろで、コティリオンは外枠で前に壁がないせいか、掛かり気味な感じで進んでいる。1000メートル通過が59.3。平均ペースな流れとなる。だから、各馬手応えも十分で直線へと入って来る。

しかし最内枠を引いたラトルスネークが内ラチで詰まってしまうシーン。この馬もかなり行きたがる馬で、貯めていたものを直線で出しかけた時に、そのシーンとなって万事休す。何とかなだめて直線まで持って来ていたコティリオンが外から馬群を抜いて、残り1ハロンぐらいで先頭に立ったが、内ラチの方へ寄り気味で勢いがなくなる。そこを後ろから一気に外をニジブルームが駆け抜けて行く。一歩遅れてギリギリヒーローが追いかけて行くが、僅かに先んじられて届かない。
パトロールビデオを見ると、ギリギリヒーローが4コーナーで外へ出して上がりかけた時に勝ち馬の上がる時と重なり、一瞬待つシーンがあった。そのタイミングのズレが勝敗を分けた感じだ。

勝ち馬ニジブルームの上がり3ハロンの脚が35.7。2着のギリギリヒーローが35.9と、この2頭がメンバー中で図抜けた脚色であった。それだけ皆が止まった末脚であり、乱戦となったものだ。
コティリオンもラトルスネークも乗り難しい面を持っている馬であり、その2頭がモロにそれを出してしまった一戦で、大波乱の結果となったものだ。


日曜京都9R
紅梅S
芝外1400m
勝ちタイム1.22.7

勝ち馬
モアグレイス(牝3、栗東・西園厩舎)

オープン馬が、ダートで2勝を挙げた関東馬ウッドシップのみ。あとはすべて1勝馬、距離も1400と何やら波乱含みの予感をさせる戦前どおりの結果となった。上位に来た馬が、おしなべて先行して前々でレースを進めた馬ばかり。先手を取ってマイペースに持ち込んだモアグレイスが、そのまま直線でも脚色衰えずにゴール。またまた西園厩舎の馬である。最近よく見かける勝利の方程式の様な感じだった。

ポーンと好発を決めたのは、武豊Jナムラドリーミー。内をチラッと見る。その内からモアグレイスが出て行く。同じくシナルも前に出てきたが、外のウッドシップもすぐに前に出てきて先行集団が決まる。先頭がモアグレイス、2番手にウッドシップ。それもやや行きたがるのを抑え気味での追走。3番手シナル、外ナムラドリーミーガ4番手で、その少し後ろにカノヤキャプテンケイティーズジェムが続く。
前半3ハロンが36.4と、かなりゆったりと推移していく。ほとんどの態勢が変わらない位置取りで、3コーナーを過ぎて坂を下りていく。2番手のウッドシップがだいぶ前のモアグレイスに接近して、1馬身ないぐらいの位置。その後ろでシナルとナラムドリーミーが馬体を並べて3番手を進み、ケイティーズジェムがそこから2馬身の内ラチ沿い。皆、手応えよろしく4コーナーを迎えた。

カーヴを回って直線に入るあたりでは、前の2頭にその後ろの2頭も急接近している。ケイティーズジェムも差を詰めて、外に出して真っ直ぐの直線へと入った。先頭のモアグレイスが内ラチ沿いを狙って行く。ウッドシップもそれに併せる様に内へと寄せて行く。
シナルがナラムドリーミーを抜いて前へと出た。そこからケイティーズジェムとの差は3馬身ぐらいと開く。もう鞍上の福永Jのステッキが飛んでいる。

残り1ハロンが近づき、モアグレイスにゴーサインが出された。ステッキを入れて最後の追い出しである。2番手にウッドシップを内から抜いてシナルが出てくる。しかし、前のモアグレイスとの差が思う様に縮まらない。ウッドシップが3番手をキープしてゴールへ流れ込む。やっとケイティーズジェムがナムラドリーミーをかわして4着に上がったところがゴールだった。

勝負は、マイペースに持ちこんだ酒井学Jの好判断であろう。3コーナー過ぎからの残り800メートルを軒並み11秒台のラップ。前半の貯めを生かす流れを造った。最後の2ハロンが11.6から11.8だけに、後続は辛い数字。
前走が夏の小倉2歳S以来の一戦で、あのレッドデイヴィスが降着になったレースで、4コーナーで不利を受けた口。しかし、好枠から先手を取っての積極策が功を奏したもの。6日に坂路で51秒台を出すなど調整も上手くいっていた様子。

人気で敗れたケイティーズジェムは、パトロールビデオを見ると4コーナー手前でいち早く手が動き出している。もっとも、ここらはいちばんペースアップしている時で11.2をマークしている場所。でも、そこらを楽に追走している他の馬と比べて反応が悪すぎる。ここらに課題が残っているのかも知れない。
まだまだ女の戦いも始まったばかり。混沌とした戦いが続くものだろうが、前へ行ける馬は、いつもで走れる用意はあると言う事であろう・・・か。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)

競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。