-平安S-平林雅芳の目

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日曜京都11R
平安S(GⅢ)
ダ1800m
勝ちタイム1.51.5
勝ち馬
ダイシンオレンジ(牡6・栗東・庄野厩舎)

※※ゴール前では猛追されるも、ハナ差残してダイシンオレンジが好発進!

最後の1ハロンの13.0がこのレースを物語る。3番手の絶好位から直線の残り1ハロンあたりから抜け出したダイシンオレンジ。一時は3馬身近いセーフティリードとなった。そこをサクラロミオインバルコの2頭がゴール前で急接近。特にインパルコは、リスボリJが左ステッキに持ち替えて追ったら、内へもたれてサクラロミオと2度程接触するアクシデント。馬体が斜めに歪んだほどだった。ゴールに入った体勢ではどちらとも言えない際どいものだっただけに、ゴール前のアクシデントが悔やまれるインバルコであり、ダイシンオレンジにしてみればヒヤヒヤながら大きな意味を持つハナ差勝利でもあった…。

1番人気はマチカネニホンバレ。しかし、ダイシンオレンジも全く差のない支持を受けていた。パドックでの雰囲気も、両者共に悪くないもの。風が出てきた京都競馬場だが、熱いデットヒートの戦いとなりそうな戦前の予感であった。

スタート良く前に出て行くダイシンオレンジ。マチカネニホンバレも悪くないスタートで、ダイシンオレンジの少し後ろだが内ラチ沿い。先手はトーホウオルビスが取って、2番手にダイナミックグロウが続く。その後ろにダイシンオレンジが3番手、内にマチカネニホンバレで最初のカーヴを回って行く。
2コーナーを過ぎて、向こう正面では前の2頭から3馬身ぐらい離れる位置がダイシンオレンジで、まるで自分で先頭に行っている様なポジションだ。
3コーナーへ入る前に場内アナウンスが『1000メートル通過が1分8秒ぐらい』と告げる。そんなに速くもないが、淡々と流れている。後方にいたインパルコとその直後のサクラロミオが上がりつつある。
4コーナー手前では、前の2頭にダイシンオレンジとピイラニハイウェイも並んで急接近。むしろ2番手ダイナミックグロウが下がり気味。その後ろにいたマチカネニホンバレも、少し手応えが良くない。その後方の外めをインバルコとサクラロミオがグーンと加速して上がってきているのが判る。

直線に入って来た。先頭はダイシンオレンジとなる。もう鞍上の川田Jは追い出しにかかった。ピイラニハイウェイが2番手と上がっているが、2馬身ぐらいは差が開いた。マチカネニホンバレは、まだガツンと加速しては来ていない。むしろ外の2頭、内がサクラロミオに外インバルコの2頭が、凄い伸びを見せている。しかしダイシンオレンジのリードはセーフティリードと思える程であった。
と、思う間もなく、ダイシンオレンジと外の2頭との間隔がなくなり出す。サクラロミオとの競り合いに勝ったインバルコが前に出てさらに前を目指して、ついにはダイシンオレンジに内外が離れながらも際どく迫ってのゴール。どちらが勝ったか判らないほどに、全くの互角に映った。

すぐにパトロールビデオを見る。すると直線での縦の映像で、外の2頭が接触しているのが判る。外のインバルコが、最初は右ステッキで追っていたのを、左ステッキに持ち替えて追い出した途端に内へもたれてサクラロミオに一度ぶつかり、離れてまた追って再度ぶつかっている。
その審議が行われたがセーフ。そしてハナ差ダイシンオレンジが残っており。今年の初陣を重賞制覇で飾った。

マチカネニホンバレはゴール少し前からやっと伸びだしての5着。しかし、ピイラニハイウェイにも遅れて入った。ダイシンオレンジは積極策で逃げ込んだもの。逆に、インバルコは惜しい負けであった。
藤岡祐Jが報道陣から離れて近づいて来たので聞いてみる。《いや~、僕のはもう脚がなかったですからね~。でもリスボリはあのまま右ステッキで追っていたら勝てていたんじゃないですか、体勢が崩れる事もなかっただろうし》とサクラロミオでの自分の負けよりも、インバルコのもったいなさを語っていた。そんなちょっとした事が勝敗を分ける。また川田Jの速めの積極策が功を奏した結果でもある。そしてダイシンオレンジには、今後いろんな選択肢が出きうる勝利でもあったはず。大きい重賞制覇であろう。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。