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-京都新聞杯-平林雅芳の目
2011/5/10(火)
土曜京都11R
京都新聞杯(GⅡ)
芝外2200m
勝ちタイム2.13.5
勝ち馬:クレスコグランド(牡3、栗東・石坂厩舎)
引き上げてきた武豊Jは《クビの上げ下げのタイミングが悪かったからどうかな?》と思っていた様だ。《大丈夫、出てますよ》の言葉に安堵の表情に変わった。それにしても、ゴール前のスロー・ビデオで見ると、本当に微妙なほどのユニバーサルバンクとクレスコグランドの鼻づらの一進一退であった。ダービーへの最終切符を手に入れたクレスコグランド。姉のアプリコットフィズやコロンバスサークルとの縁を感じるものであった…。
レッドデイヴィスが距離面でどうかだけで、過去の戦績から抜けているのは判っていた。ただ今回はカーヴを4回周る競馬。そこは未経験だけに何があるか判らないのも確かだった。
サンビームがやはり逃げた。しかし内からルイーザシアターもかなり行く気の構え。最初のカーヴに入るまでに、前のグループで少し左右のブレがあったのかクレスコグランドがやや頭を上げて鞍上が抑えるシーンがあった。でもその後は落ち着いて流れていった。
向こう正面でサンビームが少し後ろとの間隔を開けたところはあったが、ペース自体は1000通過が1.00.6とかなりユッタリ。ユニバーサルバンクが5番手ぐらい。その内目にクレスコグランドと外にレッドデイヴィスがいた。直後にパッションダンスが続く。
3コーナーから4コーナーの間もさして後続の動きがなくて、最終のカーヴへと入ろうとしたあたりでレッドデイヴィスが変な格好をした様に見えた。苦しくなったのか、真っ直ぐの動きと違う動きに見えた。
何せ、前の馬の手応えがいい。上がり勝負となっているのは間違いない。そして直線へと入って来た。クレスコグランドの手応えも行きっぷりも良かっただけに、どれだけ弾けるのかと身を乗り出す様に見ていた。
カーヴを曲がり切って真っ直ぐな直線になった時ぐらいに、前の2頭の真後ろに入ったように見えたクレスコグランド。その前とはユニバーサルバンクである。そのユニバーサルの外へ持ち出す武豊Jの動きが見えた。見ているこちらは《間に合うのか?》と思ってしまう瞬間だった。
ユニバーサルバンクとは一瞬で差が開けてしまった感じだった。そして武豊Jに追われたクレスコグランドがジワジワと伸び出す。その瞬間に内から上がってきたサウンドバスターが並んで前を追う。ユニバーサルバンクとの差がジリジリと縮まってきた。
思わず《それっ!ジョッキー、かわせるぞ!》と声を出してしまっていた。
3頭がほとんど差がないままに、ゴールへとなだれこんだ様に見えた。僅かに勢いではクレスコグランドが差している様に見えたのだが・・と内心不安になりながら、オーロラビジョンを見る。
スローでゴール前の頭の上げ下げを映している。微妙な線での戦いだったが、少しだけ外、クレスコグランドが前に出ている様に見えた。
検量室の前で表彰式を待って周回しているクレスコグランド。その傍にやって来た武豊Jに《姉たちに似ているの?》と聞く。想像どおりに《全然、違うね~》とひと言で馬上の人となり、ウイナーズサークルへと向かった。
長~い、表彰式が終わって引き上げてきた石坂厩舎の古川助手が握手を求めてきた。そして《やっとダービーへ出れます》と言う。今まですでに石坂厩舎の馬は出走かと思っていたら、何とダービーへの出走が初めてなそうだ。
クレスコグランドの1コーナーでのちょっとしたアクシデント。そして直線入り口でのあの待ち時間。でも、それが《貯め》になってゴール前での勢いとなって生きたのかも知れない。そして何よりも重賞勝ちはいいものであると思った瞬間でもあった。
火曜朝に、東京遠征中でレースに立ち会っていなかった石坂師に改めてお礼を言った。その時に《ダービーは初めてなんですって!》と聞いてみると《ヴァーミリアンの時に出れたのだが自重した。それが後で生きたのだから良かったよね》と言う事であった。
続けて《秋だと思っていた馬だけに、まだまだ良くなってくると思うよ》であった。楽しみになるこれからであろう。
平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。
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