研究員ヤマノの重賞回顧

トピックス

12月15日(土)、中京競馬場で行われた愛知杯(3歳上牝、G3・芝2000m)は、中団からレースを進めた4番人気のディアデラノビア(牝5、栗東・角居勝彦厩舎)が、最後の直線で馬場の中央から力強く伸びて見事優勝を飾った。

今回ディアデラノビアの人気は4番人気で単勝6.8倍。
これは馬券を的中された方にとってはかなり割の良いオッズだっただろう。
G1で3着3回の実績は今回のメンバーでは最上位、そして前走エリザベス女王杯では、1番人気に推されたアドマイヤキッスに先着している。それなのにこの人気だとは、“狙って然るべき馬”だったのかもしれない。
それにしても、何故人気の盲点となってしまったのか?
それは恐らくこの馬の直線強襲のイメージと、今回初コースだった小回りの中京が合わなかったことが、最大の要因のように思える。
今回の快走を読み解く鍵は、前述の『実績』、『前走』など幾つかあったわけだが、最大の鍵は『調教』であったと考える。
それだけ今回のディアデラノビアの調教は抜群だった。
2週にわたり、ポップロックと互角以上の走りで、昨年春に記録した自己ベストに迫る好時計をマーク。いや、3F以降はむしろ以前を遥かに上回る鋭さだったのだ。
調教を検討するということは、厩舎や各馬の特性など複雑な要素も絡み合い、なかなか難しいものなのかもしれない。
しかし、馬の過去の調教ベスト時計と今回の調教時計とを単純に比較するだけでも、かなりの参考になるはずだ。
“イメージと既成概念”に惑わされず、『調教時計の比較』で目立った馬は、人気の有無に関わらず買っておいた方が損はないだろう。


翌16日(日)、中山競馬場で行われたフェアリーS(2歳牝、Jpn3・芝1200m)は、道中後方からレースを進めた11番人気ルルパンブルー(牝2、美浦・坂本勝美厩舎)が、最後の直線で馬群を割って豪快に伸び、重賞初制覇を成し遂げた。
スタートで後手を踏み、道中も決してスムーズな競馬とは言えなかったが、鞍上吉田隼人騎手の思い切った騎乗が光る、見事な勝利だった。

前走の阪神JFで14着と大敗し人気を落としていた同馬だが、同じく阪神JFで11着ハートオブクイーンの5番人気、17着エフティマイヤの7番人気と比べると、14着の同馬の11番人気は明らかに評価が低すぎたと言えよう。
ここでも人気を落とすのに作用したのが、やはり“イメージと既成概念”。
ここで作用したのは、『内枠有利、外枠不利』というコース傾向だっただろう。
その傾向があるのは確かだったが、実際にレースで優勝したのは15番枠ルルパンブルーで2着は14番枠スワンキーポーチ。
何故こういう結果になったかを考えてみた。
ルルパンブルーは、前述のディアデラノビアのように調教が際立っていたわけではなかった。
様々な要因が挙げられるだろうが、ここでの最大の要因は、両馬とも『調教』以外の“特筆できる要素”を持っていたということではないだろうか。
ルルパンブルーには、コースで1分12秒9という持ちタイムがあった。これは今年の2歳中山芝1200m戦での最速タイム。スワンキーポーチも1戦だけのキャリアながら、デビュー戦の前走で2着をチギる強烈な脚を見せていた。
競馬予想には、過去のデータや傾向の検証は大切な要素だ。
ただ、それに当てはまらなくても、補って余りある“特筆できる要素”を持つ馬にはやはり警戒が必要ということか。


翌16日(日)、阪神競馬場で行われた阪神カップ(3歳上、Jpn2・芝1400m)は、中団からレースを進めた1番人気スズカフェニックス(牡5、栗東・橋田満厩舎)が、最後の直線で外めから自慢の末脚を炸裂させ、人気に応え優勝した。

良化中ながら前走のマイルG1でも僅差3着に好走、そして今回は休み明けを叩き3走目、距離短縮で鞍上は今回も武豊J。普通ならダントツ1番人気になるところだ。
単勝の2.5倍をどう捉えるかだが、やはり“イメージと既成概念”が作用して若干人気を落としたと考えられる。
この阪神芝1400mも外枠不利とされるコース。
スズカフェニックスが調子を上げているのは明らかだったから、このレースでの1番の注目は、恐らく武豊Jの騎乗ぶりだったのではないだろうか。
しかし、周囲の心配は全くの杞憂に終わった。
完璧なレースは運びで、着差以上に強い勝ち方で他馬をねじ伏せた。
さて、このレースでのデータや傾向を打破する“特筆できる要素”は何だったのだろうか?
もちろん、スズカフェニックスの能力や好調ぶりもあっただろうが、最大の要素は『騎手-武豊』だったように思う。
トップジョッキーによる文句の付け様のない完璧な騎乗は、かなりの不利をも克服できるものだと、今さらながら再認識させられた。

『データや傾向を打破できる、強力な特筆すべき要素の発見』
これが馬券的中への近道なのかもしれない。