-朝日チャレンジC-平林雅芳の目

トピックス


土曜阪神11R
朝日チャレンジC(GⅢ)
芝1200m
勝ちタイム1.59.6

ミッキードリーム(牡4、キングカメハメハ・栗東・音無厩舎)

※※ミッキードリーム、接戦を制して重賞初勝利!!

スタートでホクトスルタンがヨロけて出る。そのアオリを喰ったのが隣りのサンライズマックス。その瞬間に一番後ろとなってしまう。出の良かったエーシンジーラインを交して行ったホクトスルタンだが、直線入口ではもう脚色がない。先頭に立ったエーシンジーラインを追ってヤマニンキングリー、ミッキードリームが叩き合う。外からレディアルバローザも加わったゴール前。和田Jの執念のステッキで、少しだけ先に出たミッキードリームの初重賞勝ちとなった。

小倉記念が脅威の逃げとなったホクトスルタン。ここも単騎の逃げが望めるだけに、実に有利にレースを進めると思っていたのだが、実際にはそうは問屋が卸さないようだ。自身の出が悪かったのと、エーシンジーラインが素早く前に出てレースを造っていく勢い。小倉記念でもホクトスルタンのあのペースに付いて行って粘っているのはこの馬だけだったから、実に粘っこい競馬をする様になっているとは思っていた。
エーシンジーラインにしては自分の競馬、自分のペースでの競馬。ホクトスルタンの逃げは13秒台があるスローな逃げではない。この馬場コンディションで1000メートル通過が1.01.1だから、やや遅いぐらいの流れか。ここにくっついて行っていたのがガンダーラとヤマニンキングリー。ガンダーラは先行馬だけに当然のポジションだが、ヤマニンキングリーは確かに今回の位置どりは最高の場所だ。パトロール・ビデオで見ると、向こう正面の前半で後ろに位置していたレディアルバローザの福永Jが、ややアブミを気にする様な仕草を見せた。それが何でなのかは本人に聞くまでは判らないものだが、珍しい動きではあったので書いておきたい。

前から最後方までもそんなに大きくは離れていなかった馬群。3コーナー過ぎからは当然に流れもそれなりに上がっている。まるっきり先行馬有利な流れでもない。ヤマニンキングリーが前から4番目。そこから1馬身から2馬身ぐらい後ろに、1番人気のミッキードリームが位置していた。いわゆる絶好の位置でもあろう。
そして先行集団は4コーナーへと入ってくる。あれほど楽に行っている様でも、ホクトスルタンはすぐに手応えがなくなる。代ってエーシンジーラインが自然と前へと出る。ガンダーラとヤマニンキングリーも脚を伸ばす。そこへミッキードリームが和田Jの仕掛けで寄せてくる。エーシンジーラインかヤマニンキングリーかミッキードリームかと固唾を飲む追い合いとなってきた残り1ハロン過ぎ。
ようやく外を廻ってレディアルバローザが接近してきた。サンライズマックスの伸びはレディアルバローザ程ではない。和田Jの右ステッキがかなり飛ぶ。やや真ん中のヤマニンキングリーの体勢が悪くなる。
ミッキードリームとエーシンジーラインの争いっぽくなってきたゴール前。ややミッキードリームが優勢でゴール板を駆け抜けた。その後がヤマニンキングリーとレディアルバローザの鼻づらの争いであった。

検量室の脇を通り抜け、馬が引き上げてくる場所へ行く。ヤマニンキングリーの帰りを待つのだが、馬上の武豊Jがしきりに足元を見ながらひきあげて来た。思わず担当の和田厩務員とそばへ寄る。
《どうも熱中症みたいだね・・》と武豊Jが告げる。歩様がそれで乱れた様で、最後は馬から降りて帰ってきた。同じ様なコメントが後刻、福永Jの口からも《暑さも応えていたのかも・・》と報道陣に語っているのを聞いた。
それほど暑かった阪神競馬場の午後。そんな中でミッキードリームは、和田Jの熱気とガッツで最後のさいごまでビッシリと追われて重賞勝ちまで到達した。いわゆる《もぎとった》と言った感じの勝利であった。
残暑に負けないものをミッキードリーム陣営には感じたものでもあった。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。