馬場の内目をラフィングインメイが伸びる!!《平林雅芳 2歳観戦記》

トピックス

日曜阪神5R
2歳新馬
芝1600m
勝ちタイム1.37.0

ラフィングインメイ(牡2、父ロージズインメイ・栗東・武宏厩舎)

1000メートルが1.01.9と、ユッタリの流れで進む新馬戦の流れ。決め手勝負となったのだが、4コーナーのコーナーリングがあまり上手くない感じと見えたオリービン。直線に入ってもやや外へと逃げ気味なのか、伸びが鋭くない。そんなモタモタしている感じの動きの中を、直線入り口では真ん中より内目を選んだラフィングインメイ。それこそ、ただ1頭だけが鋭い伸びを見せている様な直線1ハロンの勢いであった。
内で粘るサクセスセレーネをやっと交わしたオリービンが2着。今週の新馬戦では3鞍あったが、どれも4コーナーで外へ逃げ気味とか手前を替えにくい馬、それも人気馬が多く見られた。
後刻に小牧Jが《ケイコでもあんな風になった事ない馬なのに…競馬は難しいですわ~》と言っていたのが耳に残った…。

パドックでいな鳴いている馬が多かった。1頭が鳴きだすと、他もそれにつれて鳴く。ドーム型のパドックに響き渡っていた。それだけ幼い気持ちの若駒が多かったようだ。ディープインパクト産駒のヴァンヘルシングとサクセスセレーネは、ともにそう大きくない馬体だ。逆にベクトルは大型馬で、526キロの数字に驚く。これほど大きい馬だったのかと、改めて馬体を見たほど。返し馬を見てもオリービンがやや優勢かと思える仕上がり具合にキャンターの様子。

ゲートが開いた。中のヴァンヘルシングが出てから少し躓いたか。やや後ろへと下がってしまった。内からセフティオリビエトが出ていくが、すぐにジョーマダスカルも来て、2頭が前へと出ていく。3番手がメイショウマサシゲで、サクセスセレーネが4番手へ続く。その少し後にベクトル、そしてオリービンと続く。
ジワっとした流れで進み、3ハロンを通過するあたりで前は3頭。セフティオリビエトとジョーマダスカルの間にメイショウマサシゲが入る形で、3頭がそれこそ抑えきれない勢いだ。そこから4、5馬身離れてサクセスセレーネが絶好のポジション。ベクトルが1馬身後ろに続いて、オリービンが半馬身後ろ。その後ろにヴァンヘルシング。ラフィングインメイが直後の内目だ。まだペースも上がらないまま4コーナーのカーヴへと入ってくる。

一番前はメイショウマサシゲに替わったが、後ろもそう差なく続く。外にベクトル、さらにオリービンが外。サクセスセレーネは3番手の最内へ潜り込む。その後ろの集団もすぐに続き、最後方のヒシマイケル以外の10頭がほとんど差がない感じでカーヴを廻っていく。
直線入り口では横一列になる様な感じだ。ベクトルの外へ並んだオリービンが前をうかがう。4コーナーの生垣の切れ目を過ぎるあたりでは、一番内へ潜り込んだサクセスセレーネが先頭となる。セフティオリビエトとメイショウマサシゲの間がパカっと開いて、そこへラフィングインメイがスッと入って出てくる。外ではオリービンが脚を伸ばすが、その外のヴァンヘルシングも最後のフィニッシュに賭ける。しかし内の馬の方がやや前で残っている感じである。

内ラチいっぱいで粘るサクセスセレーネを追いかけるラフィングインメイ。やや外のオリービンの伸びがもどかしい。ゴールが近づいてラフィングインメイがサクセスセレーネを抜いてトップへと出た模様だ。
オリービンもやっとエンジンがかかり出したのか、ゴールへ向けて加速しだした。ゴールへ入る寸前で、オリービンがサクセスセレーネを交して2番手で通過した模様だ。
最後の2ハロンが11.3~11.8のフィニッシュ。ラフィングインメイは、4コーナーで外へ出さずに内を選択したのが正解な様子。逆にオリービンは、4コーナーで外へ逃げ気味になるとは鞍上も思わなかっただろう。逆にラフィングインメイは4コーナーで外へ出していたら、余計に外を廻るハメにもなっていただろうから、内を突いたのが好判断だった。
そしてゴール間際の伸び。なかなかに渋い馬でもある。ケイコは栗東に入ってからはそんなに回数をやってないが、タイムもまずまずで、何よりも実戦に行って良かった馬だろう。逆にオリービンはケイコ程の良さが出てなかったもの。ここらが新馬戦の難しさでもある。


土曜阪神4R
2歳新馬
ダ1400m
勝ちタイム1.26.6

ヴィンテージイヤー(牡2、メイショウボーラー・栗東・白井厩舎)

終わってみれば5馬身差の勝利だったヴィンテージイヤーだが、これは直線だけでついた着差である。それも残り1ハロンあたりから追い出しての差だから、ただ能力の違いだけでついたもの。3コーナーのカーヴでは手前を替えきれずに外へ膨れ気味のコーナーリング。あれだけビシっと追っていても、まだ余裕ある馬体の造り。それでこれだけの勝ち方をするのだから、引出しにはかなり沢山詰まっていそうだ。ダートだけでなく、この先には芝でもいい結果を出せば、将来はかなり広がりそうな馬だと思えるものだ。

ゲートを出て最初は芝の部分を走るのだが、4頭ぐらいが雁行して行き、ダートに入っていった。内からマウンテンファストエーシングリズリー、そしてヴィンテージイヤー、さらに外ウォーターボルカノと4頭が横並びで行く。1ハロンを過ぎたあたりで隊列が出来上がり、内から順に外が控える形となっての先行だ。4番手にローマンエンブレムが上がってきて、ヴィンテージイヤーの内に入る。ヴェリタスウオリアも上がってきて、ウォーターボルカノの後ろを追走だ。
3コーナーのカーヴを廻る頃は、3番手にローマンエンブレムが上がり前を追う。3ハロンを通過したが、前半3ハロンを35.2とまずまずのペース。ここらではヴェエリタスウオリアがウォーターボルカノを抜いて5番手に取り付く。
4コーナーが近づく頃には、先頭のマウテンファストに半馬身差でエーシングリズリーが続き、その外へヴィンテージイヤーが上がって前を捕えようかの勢いである。4コーナーのカーヴへとさしかかる時には、2番手エーシングリズリーがやや廻りにくそうなコーナーリングで、その外のヴィンテージイヤーもつられ気味だ。その直後にはヴェリタスウォリアと、追い上げてきたウォーターボルカノが続く。

直線に入ってきたが、まだ先頭のマウンテンファストの手応えが悪くなく、追い出していない。むしろ、先にヴィンテージイヤーの方が追い出して、前との間隔を詰めていく。
残り1ハロンを通過するあたりで、マウンテンファストに追いついたヴィンテージイヤーがさらに前へと進めていく。エーシングリズリーが粘ろうかというところを、後ろから詰めてきていたヴェリタスウォリアが抜く。ヴェリタスウォリアの内からスズカルパンも上がってきて抜き去る。
先頭はもう流し気味となったヴィンテージイヤーで差を広げていく。最後は5馬身まで開いてのゴールであった。
2番手もマウンテンファストが粘って、ヴェリタスウオリアが3着だった。

ヴィンテージイヤーは、白井厩舎独特の仕上げで、ゲートから流してマイル106秒台をマーク。これは新馬戦を勝てるだけのデータになると以前から聞いている目安の時計である。現実に、先週新潟で新馬勝ちを飾ったキズマと併せても、こちらヴィンテージの方が上である。
コーナーリングで手前を替えていなかったりとまだまだ幼い面がいっぱいで、この結末である。まだ体も余裕がある様に見受けたし、良化の余地は十二分にありそう。楽しみな馬のデビュー勝ちとなった次第だ。


土曜阪神5R
2歳新馬・牝
芝1400m
勝ちタイム1.23.2

タガノミュルザンヌ(牝2、アグネスタキオン・栗東・松田博厩舎)

人気のディープインパクト産駒のアンチュラスは、肝心の4コーナーでのコーナーリングで外へ逃げ気味。結局は、直線でも伸びを欠いてしまっていた。その外をまっしぐらに伸びてきていったのが、タガノミュルザンヌ。岩田Jのステッキが5回ぐらい飛んだのも直線半ばまで。内で逃げ込まんとしているヨドノグレイスを、もう手綱だけの操作で置き去りにして、ゴールへまっしぐらと駆けこんだ。

いいスタートを切ったポラリス、しかしジワっとしていて行く気配がない。内の馬たちがダッシュがついてきて、ポラリスを抜いて前へと出て行く。その中でもヨドノグレイスが先頭に立つ。内でオグリカーラで、外はシゲルライム、そしてポラリスと、先行集団を形成していく。
2ハロンを通過するあたりでアンチュラスが外から上がってきて、5番手ぐらいとなる。
3コーナーのカーヴを廻って3ハロンを通過するが、前半たの3ハロンの入りが34.8とそう早くない。だから後続もユッタリと追走出来ている。タガノミュルザンヌが中団のやや後ろを追走している。
残り600メートルのハロン棒のあたりではさらに馬群は凝縮して、最後方のメッセージ以外がひと固まりとなっていく。ここらではシゲルアケビが後ろからタガノミュルザンヌを抜いて、その少し前へと出ていった。

4コーナーのカーヴへと入ってきた先行集団だが、その一番外へアンチュラスが上がってきて、馬体を並べてきていたのだが、どうも外へもたれ気味。それを矯正している川田Jの仕草が伺える感じだ。
コーナーワークでヨドノグレイスが再び前へと出て追い出しにかかる。内からオグリカーラ、外ではアンチュラスがやはり脚を伸ばしにかかるのだが、どうもフラつき気味である。むしろその外のシゲルアケビの伸びがいい。さらに外をタガノミュルザンヌが、岩田Jのステッキに呼応して鋭く伸びてきた。

先頭のヨドノグレイスが伸びて粘っているところへ、岩田Jのタガノミュルザンヌがジワジワと詰寄り、最後は抜き去り2馬身のリードを保ってのゴール。アンチュラスが、最後はもう一度伸びて巻き返し気味となって、3着に入ってきた。後ろから来ていたエーシンルクシオンがいい脚色を見せて4着となっていた。

勝ったタガノミュルザンヌのゴール前は、もう完全に流し気味となっていたもの。なかなかに渋い内容で勝ち上がった。
2着のヨドノグレイスは、マイペースが生きたものであった。ディープインパクト産駒で圧倒的人気のアンチュラスには、4コーナーで見せた幼さが実に惜しまれるところでもあった。でも、一度使えばそんな点も変わってこようし、次走はキッチリと勝ち上がってくれるものだろう。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。