毎週の注目重賞をテーマに競馬ラボ研究員がデータを精査。競馬ビギナーにも分かりやすく レースのポイントを教えます!あなたが選ぶ本命馬はこのデータをかいくぐれるか?
【マイルCS】サトノアラジン春秋制覇は大ピンチ!?
2017/11/12(日)
短距離路線の充実を図るべく、1984年のグレード制導入時に創設。のちにスプリンターズS、距離が短縮された高松宮杯(現高松宮記念)といったスプリント戦がG1に格上げされ、短距離路線の更なる細分化がなされるが、春の安田記念とともに短距離王決定戦として数多くの名馬を輩出している。今年はスプリンターズSを連覇したレッドファルクス、マイルG1春秋連覇を狙うサトノアラジンのほか、新時代を担う素質馬が多数参戦。馬券的にも興味深い一戦をデータで解析したい。
天皇賞組には一目も…
[前走レース]主要ローテは1着馬に優先出走権が与えられるスワンSと富士Sで、2着馬に関してはこの2レースから過去10年8頭出ているのだが、出走頭数も非常に多く、必勝ローテとは言い辛い。過去10年で最も多くの勝ち馬を輩出しているのは秋の天皇賞で、18頭が参戦して3勝。古馬最高峰の一戦を経験してきた馬は一目置いておいた方がいい。
過去10年注目データ
[前走着順]前走から連勝を果たした馬は4頭いる一方で、前走6~9着から巻き返して勝った馬も4頭。絞り出すのが難しいが、馬券の対象になった8頭は前3走以内に勝鞍があるか、前5走以内に重賞で3着以内がある点で共通していた。なお、前走2ケタ着順から馬券圏内に巻き返した馬は1頭もおらず、サトノアラジンにとっては非常に厳しいデータが残っている。
[枠順]過去10年で勝ち馬が出ていない枠番は5枠の1つ。この枠は2着も1度しかなく、複勝率が8つの枠で唯一10%に満たない。一方、その1つ内の4枠は2勝、2着5回というラッキー枠。ただし、入った馬の質が高めで、07年のダイワメジャーは勝ったものの、10年ダノンヨーヨー、12年グランプリボスが1番人気で敗れている。
馬番別では「5」と「16」が2勝。複勝率では「8」と「13」が40%をマークしている。馬券絡みがないのは「6」「9」「14」「18」の4つ。
[脚質]4角先頭で押し切った馬は過去10年では昨年のミッキーアイル1頭。4角先頭の馬には厳しいデータが出ているのだが、好位、中団、追い込みがほぼ均等に上位争いをしていて、4角10番手以下から追い込んで勝った馬も3頭いる。直線が平坦の外回りコースで、脚質面の有利不利はないと見ていい。
1番人気は過信禁物
人気は幅広いレンジから好走馬が出ていて、1番人気は(2-3-2-3)と心許ない数字。かつては1番人気が強いレースとして知られていたが、最後に1番人気が勝ったのは09年のカンパニーで、昨年はサトノアラジンが5着に敗れている。
過去10年で最も勝っているのは4番人気の馬で、上位拮抗ではあったが、意外なことにモーリスは4番人気での勝利だった。
2ケタ人気で馬券に絡んだのは4頭。いずれも重賞での好走経験がありながら、マイル以下のレースで結果を出せず、人気を落としていた。ちなみに唯一2ケタ人気の13番人気で勝ったエーシンフォワードは前走のスワンSで1番人気に支持されていたが8着と敗れ、人気を大きく下げていた。
人気順別成績 | ||||
人気 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
1番人気 | 2-3-2-3 | 20.0% | 50.0% | 70.0% |
2番人気 | 1-2-1-6 | 10.0% | 30.0% | 40.0% |
3番人気 | 1-2-0-7 | 10.0% | 30.0% | 30.0% |
4番人気 | 3-1-1-5 | 30.0% | 40.0% | 50.0% |
5番人気 | 1-0-2-7 | 10.0% | 10.0% | 30.0% |
6~9番人気 | 1-0-3-36 | 2.5% | 2.5% | 10.0% |
10番人気~ | 1-2-1-85 | 1.1% | 3.4% | 4.5% |
風向きは徐々に東向き!?
過去10年、関西馬が8勝、関東馬が2勝。2~3着も関西馬優勢で、10年トータルの数字で見ると西高東低なのだが、ここ2年で見ると、昨年は2、3着が関東馬、一昨年は1、3着が関東馬で、風向きが少し変化している。今年も上位を賑わせそうな強力な布陣で、関東馬がレースを面白くしてくれそう。
騎手別では栗東所属が7勝、美浦所属が2勝、外国人が1勝。連対率では東西ほぼ互角のアベレージで、勝率と複勝率は栗東所属が少し優勢。複勝率は騎乗機会が少ないながら外国人騎手が最も高く、短期免許で来日したR.ムーア騎手は2年連続で馬券絡みを果たしている。
[キャリア]31戦以上となるとさすがに苦戦しているが、30戦までであれば、キャリア豊富な馬がその経験を存分に生かして好走している。ただし、10戦以下となると3歳馬が苦戦しているように割引が必要。
[乗り替わり]過去10年、前走からジョッキーが乗り替わった馬は6勝。ただし、全くのテン乗りで勝ったのは14年ダノンシャークの岩田騎手のみで、他の5頭はいずれも以前に騎乗経験があった。日本人ジョッキーのテン乗りは少し割り引いて考えた方が良い。
[牝馬]牝馬はのべ31頭がチャレンジして(1-0-3-27)。勝った08年のブルーメンブラット、12年3着のドナウブルーはともに石坂正厩舎。あと2回の3着は09年と11年にサプレザがマークしたもの。牝馬は割引が必要かもしれない。
[当該コースの騎手成績]2012年以降、京都の芝1600m外回りコースで最も多く勝鞍を挙げているのは、昨年の勝利ジョッキーである浜中騎手の13勝。川田騎手が12勝、池添騎手が10勝、福永、岩田騎手が9勝、武豊騎手が8勝、和田竜騎手が7勝と続く。和田竜騎手は単勝回収率226%、複勝回収率113%のハイアベレージ。リーディングを席巻するC.ルメール、M.デムーロ騎手はそれぞれ6勝、5勝だが、ともに連対率30%、複勝率40%を超えていて馬券的な信頼度は高い。
[馬体重]好走馬の馬体重は幅広いレンジで連対馬こそ出ていないが、440キロ未満の馬も3着が2回ある。馬格はあまり気にしなくていいだろう。増減はマイナス4キロを超えると大幅な割引が必要で、34頭が該当して馬券絡みは2度の2着しかない。
[種牡馬]2011年の産駒初出走こそリアルインパクト5着、マルセリーナ6着と馬券絡みはならなかったが、以後は5年連続で複勝圏突入を果たしているのがディープインパクト。瞬発力が生きる舞台で、その適性の高さを遺憾なく発揮している。ただし、出走頭数も多く、アベレージが抜けて高い訳ではない。リピーターが多いレースで、複数の馬券絡みを果たしている種牡馬も多いのだが、3頭で4回の馬券絡みがあるフジキセキ、2頭がともに3着だったネオユニヴァースは注目種牡馬といえるかもしれない。
絶対王者・モーリス引退後はG1の勝ち馬がコロコロ変わる戦国時代に突入しているマイル路線。春の王者サトノアラジンにスプリンターズS連覇のレッドファルクス、更に桜花賞馬レーヌミノルの参戦もあってメンバー的にも興味津々の一戦なのだが、データ面からプッシュしたいのはスプリンターズS連覇のレッドファルクス。ローテーション的には決して悪くはなく、勝って勢いがあるのも心強いところ。気になるのは乗り替わりだが、外国人ジョッキーで、かつ兄から弟へのスイッチなら問題ないだろう。ここで短距離王の称号を不動のものにする。