ブラストワンピース

18年12/23(日)5回中山8日目11R 第63回【有馬記念・解説】(G1)(芝2500m)

  • ブラストワンピース
  • (牡3、美浦・大竹厩舎)
  • 父:ハービンジャー
  • 母:ツルマルワンピース
  • 母父:キングカメハメハ
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昼過ぎぐらいから雨粒が落ちてきた中山。レース直前に稍重に発表となった芝だが、見た目以上に悪くなっていた様子だ。
スタート直後こそオジュウチョウサンに先手を奪われたキセキだが、一周目の4角を廻ったあたりで先頭へ。この馬場で11秒台を6度もマークする流れを強いられた。
外めの5,6番手を追走したブラストワンピースが、一歩先に仕掛けてレイデオロの急追をクビ差凌ぎ切っての勝利。池添謙一騎手は、これで有馬記念歴代最多の4勝目を挙げた。

見渡すかぎり人、人、人の黒い頭ばかり。傘をさしている者はそうは見当たらない。そして平成最後の有馬記念を、JRAはオーロラビジョンの映像で盛り上げる。その大画面の少し向こう奥でのゲート入りが映しだされる。

ゲートが開いた!スタートしてすぐオジュウチョウサンが先手を取った。場内で思わず歓声が上がる。モズカッチャン、 スタート直後は位置が後ろだったクリンチャーも前へ前へと出て行く。

外からミッキーロケットが、そしてダッシュをつけたキセキがガーンと前へと出てくる。最初の4角を廻る時には、勢いをつけたキセキがミッキーロケットを外から交わして内へと入って先手となっていく。オジュウチョウサンは3番手のインに収め、クリンチャーがその後ろ、モズカッチャンがすぐ後ろの外め。サウンズオブアースはクリンチャーの横、真後ろがブラストワンピース、さらに後ろがレイデオロ。
パフォーマプロミスを置いてシュヴァルグラン。そのシュヴァルグランはあまり外を廻らないように馬群の中だ。最後方はジワっと出したミッキースワローである。

1周目のゴールを過ぎる時は、まだキセキのリードは2馬身ぐらい。だが次のカーブに入ったあたりから、だんだんと後ろの馬との差を広げだしていく。4馬身、5馬身と。2番手ミッキーロケットとすぐ後ろのオジュウチョウサンは、1馬身もない間合いで淡々と進める。この向こう正面を走っている時は、まだそんなに動きはない瞬間。キセキの逃げがまた広がったようだ。

3角へ向かおうとしているあたりで、2番手がやや並び気味となっていく。オジュウチョウサンの武豊騎手の手が少し動きだしている。3番手グループの並びが、いつの間にかモズカッチャンが最内、その外がクリンチャー、さらに外がサウンズオブアースだが、サウンズの藤岡佑騎手の手がゴシゴシと動きだしている。レイデオロのルメール騎手も手綱をしごいている。シュヴァルグランが内ラチ沿いを走っているのにも驚く。

4角手前のあと400のハロン棒が見える。キセキの逃げはまだ4馬身ぐらいある。このまま逃げ切るのか!どの馬も追いだして、最後のカーブへと入ってくる。内の芝が黒ずんで見える。外は青々として見える。
あと200を過ぎてもまだキセキがリード、だが外からブラストワンピースが重戦車のようにたくましく伸びている。その後ろでレイデオロもジワジワと間合いを詰めだしてきている。
あと100、キセキをブラストワンピースが、ミッキーロケットが交わしそうだ。ルメール騎手が左ステッキをレイデオロのお尻に入れるが、前との差が思うように詰まらない。半馬身、クビまでブラストワンピースに詰めたが、池添騎手は勝利を確信していたのか、大きなアクションなしでゴールへと入っていく。シュヴァルグランがいい脚を使って3着へと突っ込んできた。

続々と戻ってきた検量室前、オジュウチョウサンの和田正師と握手をしていた私。ごくろう様のつもりだったのか?自然と手が出てた。
武豊騎手がこちらを向いて何か言っているのだが、場内のざわつき等で聞こえない。おそらく『ノメっていた』のはずだ。和田正師の『緩いですか?』の声は聞こえた。馬場のことだろう。そのまま室内へと入って行った二人。

PVを何度も見る。外の縦一列が来ている。馬場の内が悪いのだろうし、流れでもあろう。レイデオロの前に位置したブラストワンピース。ひと呼吸早く4角で動きだした。その直後にいたレイデオロは、その時に手応えがもうひとつ良くなかった。その差だけだろう。それでも最後はクビ差まで迫るレイデオロ。そこから1馬身と少しのシュヴァルグラン、最後は馬の中から脚を伸ばして来ていた。

いつもながらノーザンファームの生産馬が1,2、3位、いや4位までを占める。今年の流れである。関東馬、3歳馬、鞍上だけは今回、日本男児の池添騎手と外国人騎手の連勝を止めた。
ゴール過ぎてしばらく行ってから、雨雲が立ち込める空へ池添騎手の《よっしゃー!》の声と、左手が大きく上がった…。そのシーンが何度も頭のなかに残っている。オジュウチョウサンも頑張ったと、現場ではあちこちで聞こえた。
おけら街道を進まない背中を見ながらも、ギュウギュウ詰めの電車のなかでも大勢のファンはオジュウチョウサンの走りを労っていたのだが…。世のなかにはいろいろな人がいると思おう。

長い間現場の最先端で、馬の吐く息がまだ乱れているところで、ジョッキーが思わず漏らす最初のひと言が聞こえるリアルタイムでの仕事。これが最後となった。あとは遠くから眺めております。ありがとう……。