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並床恵二調教助手

4度目の挑戦だったJCダートは3年連続の2着。今度も4度目の挑戦で一昨年2着、昨年3着だった東京大賞典に挑むワンダーアキュート。ダート界ではお馴染みの善戦マンだが、もう4年もの間、一線級で堅実に走り続けているのだから恐れ入る。並床恵二調教助手への取材も回数を重ねているが、何やら今回はいつにも増して歯切れが良いトーン。悲願成就に向けての手応えをご確認いただきたい。

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次がピークかなという雰囲気

-:東京大賞典を予定しているワンダーアキュート(牡7、栗東・佐藤正厩舎)ですが、JCダートは惜しくも2着でした。4コーナーで通ったコースの差がそのまま着差に出たかなという気もしたのですが、どのような印象を受けましたか?

並床恵二調教助手:正直、“またやっぱり2着か”という。一番強いという評価を受けていたタルマエを負かしても、勝てなかったのはショックですね。

-:しかも、日本テレビ盃を勝って、順調に使ってきての上積みを見込んで臨まれたでしょうし。

並:勝っていても全然不思議じゃなかったんですけどね、何かちょっと足りないのか、恵まれてないというか。いつも、どのレースも、力で負けている、という感じがしないのでね。なんで1着じゃないのかな、という不思議さはあります。

-:競馬の神様がいたずらをしているとしか思えないという。

並:そんな感じですね。

-:前走、JCダート前の体を見させて頂いた時に絶好調だなという感じはして、ただ、次のレースに向けては若干疲れが出たりとか、コンディションを維持するのは難しくなったりするのかと思ったんですけれど、JCダートが終わってからのコンディションの変化はいかがですか?

並:あそこがピークだと思っていたので、正直、少しは落ちてくるのかなと思っていたんですけど、どうも、最近はその上がまだあるようなムードを感じさせてくれていて、“ひょっとしたら次がピークなのかな”といういい雰囲気を出してくれています。

-:ただならぬ動きを見せていると聞いて駆けつけたんですけど、その動きというのはどのような感じですか?

並:動きというか、パッと見た時に体重は変わってないんですけど、馬体がさらに膨れ上がってるような感じを受けるので、今までの経験上、そういう時って良かったりするんですよね。

-:体重じゃない、内からはち切れんばかりの、といいますか。しかも、冬場とは思えない毛ヅヤで。

並:ちょっと僕も驚いてるんです。意外と毛は長いんですけど、これだけ良く見せるんです。



輸送での大幅増減はお約束

-:ワンダーアキュートの体重の増減は馬券を買うファンとしても悩まされてるところで、大幅にアップダウンしたりするんですけれど、それは厩舎の調整がおかしくなってるわけではないですか?

並:いつも出発するときには同じなんですよ。ただ、遠くに行くか、近くに行くか、それだけで10キロなり、20キロも変わってしまうのが、この馬なんですよ。絞れてるというのではなく、真面目な馬なので、体内の水分とかを抜くんです。

-:脱水症状に陥っているわけですか?

並:たまに、おしっこを検査する時に、関東あたりだと出なかったりするんでね。それくらい(体内の水分を)飛ばすんです。

-:ある程度、中長距離を走る馬にとっては、筋肉疲労を起こす一つの要因になるので、心配なことではありませんか?

並:心配ですね。やっぱり近くで使うこの馬が強いとは思いますけど、大井でもなかなかの成績を収めてくれてるので、そこまでは心配してないですけどね。

-:あとはそれまでの段階である程度、体に水分なりを蓄えておいて。

並:今回は体に余裕ある感じもあるので。この馬も、もう百戦錬磨なので、カバーしてくれると思います。


「大賞典に行くのは4回目なんですけど、一番良い感じで行けるかもしれないですね。何か、勝利の予感がします」


-:3歳時からダート界の一線級でやっていますからね。

並:馬小屋とかでは変にイレ込まなくもなったので。その辺だけでも、かなり大きいと思います。

-:今もカイバを食べる仕草とか、非常に元気よく”よこせ”という感じで、食欲旺盛なところは、全く疲れがあるとか、精神状態がへこんでる馬の仕草じゃないですからね。その辺は安心できますね。

並:安心できます。大賞典に行くのは4回目なんですけど、一番良い感じで行けるかもしれないですね。何か、勝利の予感がします。

-:予告ホームランですか?

並:予告ホームランです。

-:この馬に向いた枠なり、展開なりというのがあったら教えて下さい。

並:この前のレースを観ても、ひょっとしたら差しの競馬のほうが強いのかな、というイメージも持ちますけど、自在なんでね。ゲートを出て、武豊騎手が何とかしてくれます。

-:その辺は天才にお任せで。

並:お任せです。



レース発走まで見なくていい!?

-:1週前追い切りは天候を見て、木曜日か金曜日にする、ということなんですけど、2週前はどんな動きでしたか?

並:15-15をやったくらいです。普段から抑えるのが大変なくらいの勢いになってるので。

-:使っている馬ですし、そんなにバリバリ調教が必要な状況でもないですか?

並:ええ、動かないので。

-:この馬の場合、調教はどこにポイントを置いて、見たらいいですか?前回のJCダートの追い切りでも、併走馬に秋山さん(元騎手で秋山真一郎騎手の父である秋山忠一調教助手)が乗っていて、そっちの手応えのほうがやたら良く見えたんです。

並:そうなんです。厩舎で負かせる馬があんまりいないんです。そのくらい動きません。だから、あんまり見ないほうがいいんじゃないですかね。僕も、たまに不安になりますから(笑)。この馬は並足で判断するのが一番。その時、走れるかどうかくらいは分かっちゃいます。


「大して追い切ってない状態で、今の感じなので、追い切ってピリッとしたら多分、最高です」


-:ここ最近の並足の動きはどうですか?

並:いいですよ。大して追い切ってない状態で、今の感じなので、追い切ってピリッとしたら多分、最高です。

-:今は体型的なものもあって、お腹周りなどはポテっと見えますけども、これは競馬に行ったら、もうちょっとキチッとしますよね。

並:今回は関東遠征なんで確実に減るんでね。こないだよりだいぶ体重は落ちるんじゃないですか。

-:ファンも体重は減るものと思ってね。それでも結果を出してきた馬ですから。

並:そうなんです。あんまり馬体重は見ないほうがいいです。

-:つまり、馬体重も見るな、パドックも見なくていい、最終追い切りも見なくていい。馬と武豊ジョッキーに任せといたらいい。

並:まあそういうことです(笑)。

-:そうしたら、今度は買わない方がいいんじゃないか、という気になってきますからね。

並:いやいやいやいや、この一年以上、この堅実ぶりですから。外したら外れますよ(笑)。



-:それは肝に銘じて、あまりネガティブな要素を受けるようなものは見ない方がよくて、数字で追うくらいでいい。順調に走ってると。最後に、善戦止まりの印象が強いワンダーアキュートですが、何とか、単勝を買って応援しているファンにメッセージをお願いします。

並:いつもこの馬が一番強いと思って競馬に行っているので、ファンの皆様と一緒にその思いを叶えられたらいいなと。

-:馬券を買えない立場だけど、単勝馬券を握りしめてる人と同じ気持ちで見ていると。

並:見てるし、やってきているので。次もその思いで頑張りたいと思います。

-:「デキが良さそうだ」っていうのは、社交辞令で言ってるんじゃなくてホンマですか?

並:ホンマです。僕はけっこう素直な方なんです(笑)。

-:裏表なしの並床さんですね(笑)。ありがとうございます。当日まであと10日ぐらいありますけれども、応援しています。

並:はい、頑張ります!




東京大賞典 当年JCダート最先着馬の成績(過去10年)
馬名 JCDの成績 東京大賞典の成績
12年 ワンダーアキュート 2着 3着
11年 ワンダーアキュート 2着 2着
10年 アドマイヤスバル 3着 4着
09年 ゴールデンチケット 3着 5着
08年 カネヒキリ 1着 1着
07年 ヴァーミリアン 1着 1着
06年 シーキングザダイヤ 2着 3着
05年 シーキングザダイヤ 2着 2着
04年 タイムパラドックス 1着 4着
03年 スターキングマン 4着 1着
当年のJCダート最先着馬は連対率50%、複勝率70%と高い信頼度を誇っているが、勝ち馬の3頭中2頭はJCダートで勝利して東京大賞典に臨んでいる。ここ2年の最先着馬はワンダーアキュートで、今年もJCダートの勝ち馬ベルシャザールの出走予定は無く、3年連続でワンダーアキュートが該当馬となることが濃厚。昨年は1番人気に支持されながら3着だったが、一昨年は当時のダート界の絶対王者スマートファルコンに肉薄する走り。4度目の挑戦にして、悲願の東京大賞典制覇なるか。


【並床 恵二】 Keiji Namitoko

トレセン歴17年目。競馬好きの父の影響と、「自分も体を動かすことが好きだった」こともあり、競馬の道へ。中学校を卒業して京都の京北牧場へ。トレセンで従事することになってからは吉永忍厩舎に勤務。当時は重賞4勝を挙げたタマモストロングを担当した。 吉永厩舎の解散に伴い、佐藤正雄厩舎に移籍し、現在に至る。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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