関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

平井裕介調教助手

2走前、京都マイルの未勝利戦では1分32秒3という古馬G1級のレコードを記録。登録していた朝日杯FSは賞金除外の憂き目に合ったものの、同コースのひいらぎ賞でG1を0秒5凌ぐ時計で快勝し、改めて高い潜在能力を見せ付けた。シンザン記念は断然の支持を受けての出走が濃厚となるが、かのコースであればそれも必然。若くして、JDD勝ちのクリソライトも担当するという、類稀なる馬運を持つ平井裕介調教助手に、担当馬の今後を占ってもらった。

朝日杯を凌いだひいらぎ賞

-:ミッキーアイル(牡3、栗東・音無厩舎)についてお話を伺います。デビューから今回のシンザン記念まで、ここまで全て1600mの距離を使っていますが、お母さんの現役時代というのは1000mのダートで勝ったりしていることもあって、お父さんがディープインパクトということで、マイルも保って不思議はないのですが、乗っている感触として、距離適性はどうですか?

平井裕介調教助手:乗っている感触からすると、もっと距離は保ちそうな感じもしますね。お母さんも調教師が管理していた馬で、ダート1000mで勝っていたから、あんまり距離が伸びてどうなのかな、というのがあるみたいなので。僕としてはもう少し保つんじゃないかとは思っています。それでもマイルがベストではありそうですけどね。

-:お母さんのスターアイルも音無厩舎の馬で、デビュー戦は1800mでデビューしていて、そこからだんだん距離を縮めていって、勝ったのは1000mのダートという感じだったと思いますが、ミッキーアイルの走り方というのは、レースを見ていると、結構がむしゃらにスピードを出す感じですね。

平:現段階では、他の馬よりスピードが違うので行っているだけなので、他に速い馬がいれば、控える競馬もできると思います。あの馬より速い馬がいれば、控えてもいいんじゃないかなと。もともと寂しがりの馬なので、馬の後ろでも全然大丈夫じゃないかなと僕は思っています。

-:そう考えると、前回のひいらぎ賞というのは、ちょうど朝日杯の前日に行われたレースで、どれくらいの時計が出るのかというのをファンは期待していたのですが、結果的には朝日杯より0秒5も速かったというレースぶりでした。平井さんとしては、どういう感触でしたか?

平:抽選に漏れたということはしょうがないと思いますし、ちゃんと500万下は勝てたので、僕はそれでいいと思っています。年内2勝で、使いたいレースも使えるようになったので。使えていたら、勝ち負けになっていたかなと思いますけど、それはそれまでに賞金を重ねていなかった戦績が響いているわけですからね。

-:正直、朝日杯を見た時に“やれるな”という雰囲気は感じられたんじゃないですか?

平:もともと戦う前から、抽選に入ったら、いい勝負をするなと思っていたので。でも、入らなかったから、それはそれで仕方がないですことですからね。


「現段階では、スピードが他の馬と違うから前に行っているだけで、それが上手いこと溜められたら、終いもそれだけの脚を使ってくれると思います」


-:ファンは抽選が発表された時点で、かなりがっくりしたと思いますよ。平井さん自身もG1で抽選に通って出たかったという気持ちも勿論ありますよね。ひいらぎ賞の内容なんですけれども、スタートして少し行きたがる素振りがあって、それで手綱をコントロールして、なだめる感じで。

平:もともと二の脚はあるんですけど、一歩目はあまり速くない馬なので、ちょっと気合をつけたらスピードに乗って、少し抑えた感じだと思うので、別にがむしゃらに引っかかっているわけではないと思います。

-:がむしゃらに引っかかっていたとしていたら、最後の直線の2ハロン目で11.1秒という時計は出ないですから、見た目よりはおさまっているということですね。この馬の長所というのは、ゴールから2ハロン目が速い辺りを見ても、どちらかと言うと、差しよりも先行抜け出しというイメージがあります。

平:現段階では、スピードが他の馬と違うから前に行っているだけで、それが上手いこと溜められたら、終いもそれだけの脚を使ってくれると思います。

-:今年の最大目標として、NHKマイルカップというのがイメージとしてはありますが、そうではない可能性もありそうですね。

平:これからの成績次第ですけど、3歳馬ですから。みんな目指しているところは一緒だと思いますのでね。

-:しかも、前回のひいらぎ賞で中山適性というのは出たわけですからね。

平:その前に皐月賞に行ってもいいですよね。上手いこと賞金を加算できれば。ローテーション制に関しては、オーナーと先生が決めることなので。僕はどこでもいいですけどね。


血統ほど気性面の不安なし

-:お母さんの戦績を調べてみると、使いつつだんだんテンションが上がっていって、ダート1000mに出走しないといけない馬なのに出遅れたりとか、ゲートの裏で暴れたり……。

平:ゲートの悪い馬だったというのは聞いたことがあります。最初はそんな話を聞いていたから気を付けていたんですけど、今はそんなところは見せないですし、他の馬と一緒にいれば大人しいですね。

-:厩舎での雰囲気というのも、そんなに思っていたよりもキャンキャンしていませんか?

平:していないですね。ただ寂しがりなだけで。

-:近くに馬がいれば問題ないと。

平:全然大丈夫ですね。このあいだ中山に行った時も馬場が離れていたんですけど、馬房が空いているから隣の馬がいるところに入れてもらったら落ち着いて。輸送も全然問題なかったですし。


「まだ本気で走っていない部分もあるのかもしれないですけどね。だからまだテンションも上がらないし、カイ食いも落ちないし」


-:これからのレースでも、遠征した時は近くに馬がいる馬房に入れてもらった方がいい。そこだけがポイントでしょうか。この馬はあれだけスピードがあって、気が勝っているというのは分かるんですけれど、それでいて体重の変動が少ないですね。

平:普段はそこまでイレ込んだりしないですからね。

-:パターンとしては、使う毎にテンションが上っていって、カイ食いも落ちて、体重がどんどん減っていくというパターンも有ると思うんです。

平:カイ食いはいいので。追い切り後でも“すぐにメシをくれ!”っていうぐらいですから。こちらはすごく楽ですよね。

-:では、回復力とか食欲という、走る以前に必要な基本的な能力をミッキーアイルは持っていると。

平:まだ本気で走っていない部分もあるのかもしれないですけどね。だからまだテンションも上がらないし、カイ食いも落ちないし。

-:その本気はどこで見ればいいですか?

平:分かりません!彼に聞いて下さい(笑)。

ミッキーアイルの平井裕介調教助手インタビュー(後半)
「やればやるだけ時計は出る」はコチラ→

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【平井 裕介】 Yusuke Hirai

野球が好きだったことにより目を通していたスポーツ紙がきっかけで競馬に興味を持つ。高校時代は馬術部と迷った末に野球部に所属。卒業後は北海道の高村牧場に就職する。牧場の活躍馬は古くはスターマンやマイケルバローズ、現在ではガルボなど。その後はグリーンウッドで働くかたわら、水口の乗馬クラブで馬術を学びJRA厩務員過程へ進学。一昨年は最も厩舎所属が困難な時期であり、1年間はヘルプのピンク帽で8つの厩舎を転々とする。昨年5月、様々な偶然が重なって音無厩舎へと正式に所属。初めて任された担当馬がクリソライトという幸運の持ち主。好きな競走馬は「ザ・ロック」の愛称で名を馳せた、アイルランドのG1・7連勝馬のロックオブジブラルタル。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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